Semua Bab 【完結】幼馴染の贈り物: Bab 41 - Bab 50

74 Bab

第10章 インフルエンザ 1/6

  沙耶〈さや〉の引っ越しから二週間が過ぎ、暦も3月から4月へと変わっていた。 新生活の季節。 悠人〈ゆうと〉は小鳥〈ことり〉の入学式に、保護者として同伴した。 小鳥の大学は、悠人の家から電車とバスで一時間ほどのところにある。 キャンパスで楽しそうに話している学生たちを見て、ここなら小鳥も楽しくやっていけるだろう、悠人はそう思った。 小百合〈さゆり〉は入学式にやってこなかった。 一人娘の入学式。顔を出すと思っていたのだが、小百合はなぜか一年前に携帯を解約していて、連絡が取れずにいた。 学生時代、悠人に携帯を持つよう言っていた彼女の心境の変化に、相変わらずマイペースなやつだなと悠人は思った。 小鳥の話だと、先日公衆電話から連絡があり、陸奥〈みちのく〉女一人旅を延長する、楽しくやってますと言っていたとのことだった。 初恋の相手である自分が悠人と会えば、きっと悠人の心は乱れてしまう。娘の恋を応援する親として、今悠人と会う訳にはいかない。ラスボスは最後に登場するものだから、との意味深なメッセージに、小百合らしいと苦笑した。  * * * 小鳥は沙耶と共に、バイトに勤しんでいた。沙耶と一緒に働くようになってから、小鳥は今まで以上に楽しい様子だった。 沙耶はと言えば、接客の方は相変わらずだが、バイトを始めて三日ほど経った頃には、商品の名前と値段、場所全てを記憶していた。 そして一日の店の売り上げ、売れ筋の商品や売れ残りなどをチェックし、店長山本に店の大幅なディスプレイ変更を申し出た。 最初は首をかしげていた山本だったが、理路整然とした客の流れや購買心理・商品の見せ方の説明に聞き入るようになり、その申し出に乗った。 翌日から、商品の売れ具合が激変した。これまで売れていた商品は勿論、売れなかった商品も次々と売れ、売り上げが一気に上がっていった。 更に沙耶は、客一人あたりの単価を上げる次の策として、商品によって、セットで買うと翌日から使える商品券の発行を提案した。例えば弁当と一緒にお茶を買うと50円の商品券
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-09
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第10章 インフルエンザ 2/6

  小百合〈さゆり〉がサークルの先輩、柴田和樹〈しばた・かずき〉と交際を始めてから、5年の歳月が流れていた。 悠人〈ゆうと〉は大学卒業後、物作りに興味があったこと、必要以上に人と関わる必要がないこと、自分の時間を確保できること、そういった理由から、自宅から電車で一時間ほどのところにある金型工場に就職していた。 毎日が平凡。 しかし悠人にとって、それこそが望んでいたものだった。職場で鉄の塊と向き合い、僅かな寸法との妥協なき戦いを楽しみながら、プライベートで自分の世界を更に深く追求していった。 小百合とはあれ以来、ほとんど会うことがなかった。 そして風の噂で、大学を中退し結婚したことを知った。 悠人は今なお、あの日から前に進むことが出来ずにいた。 一番近くにいた、一番大切だった存在。それが一瞬にして、手の中からこぼれ落ちていった。あの時に出なかった勇気が、全てを変えてしまった。 自分にとって、小百合は大切な家族。家族なら離れ離れになることはない、そう思っていた。しかしそれは、余りに稚拙な考えだった。自分の愛した水瀬小百合は今、柴田小百合として自分の知らない人生を歩んでいる。 大切なものを失った悠人の傷は癒えず、これまで以上に人との関わりを避けるようになっていった。 人を大切に思えば思うほど、別れが来た時に心が壊れそうになる。その恐怖が彼を支配していた。 ならば初めから好きにならなければいい。そうすればもう二度と、あのような思いをすることはない。大丈夫、俺にはゲームもあれば、小説やアニメもある。空を見上げれば星もある。それらは決して、自分の前から消えたりしない。それだけで十分だ、そう思っていた。 時折感じる空虚感をごまかしながら、悠人は日々を生きていた。  * * * ある日。 帰宅ラッシュの満員電車から開放され、自宅へと足を運ぶ悠人の目に、鮮やかな夕焼けが映った。「きれいだな……」 自然と足が、近所の公園へと向いた。 ブランコに腰
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-10
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第10章 インフルエンザ 3/6

「……」「気がついたかい、少年」「え……」 見知らぬ女が、そう言って自分を見つめていた。 * * * 悠人〈ゆうと〉がぼんやりとした頭で、状況を把握しようとする。 自分の部屋の天井が見える。と言うことは、ここは俺の家だ。  左手が動かしづらい。その上にあるものを見て納得する。どうやら点滴をされているようだった。  そうだ。俺、急に吐き気がして……トイレで吐いて……「小鳥〈ことり〉は!」「君の隣だよ」 女がそう言った。  頭を動かすと、自分の手を握って眠る小鳥が目に入った。悠人がほっとした様子で微笑む。  小鳥の頬には、涙の跡が幾筋も残っていた。 まだぼんやりしていた。目が回り、息が熱い。「タオルを変えよう」 女がそう言って額のタオルを取り、台所に歩いていった。「……すいません、その……お世話になったみたいで……」「気にすることはない。これも何かの縁だろう」 タオルを絞って戻ってきた女が、悠人の額にそっと乗せた。「あの、それで……」「私は深雪、木之本深雪〈きのもと・みゆき〉だ。ここの下の住人だ」 そう言われて悠人は、見覚えがあることを思い出した。何度かエレベーターで一緒になっていた。「しかし驚いたよ。エレベーターに乗ろうとしたら、中に少女がいた。見たら小鳥くんだ。ああ、小鳥くんとは以前、そこの堤防で会ってるんだ。  小鳥くん、様子が尋常じゃなかった。泣きながら私の顔を見て、しがみついてきた。混乱している小鳥くんに困っていたら、小鳥くんの後にいた金髪少女が説明をしてくれた。沙耶〈さや〉くん……だったね。彼女の話で、君が嘔吐したままトイレから出てこないと言うことが分かった。  申し訳なかったが部屋に入らせてもらい、トイレの扉をこじ開けさせてもらった」「こじ開けた……」「ああ。鍵がかかっていたからね、悪いが破壊した。恐らく君は、彼女たちに情けない姿を見せたくないと思い、無意識に鍵をかけたんだろう。しかしこんな時に鍵をかけるのは、無謀だぞ」「ははっ……」「とにかく開けると、君は便器を抱えたまま気を失っていた。その君を布団に運ぶのには往生したよ。小鳥くんは混乱して、泣きながら君から離れない。熱を測ったら39度越えだ。すぐに近所の医者に電話をして、来てもらった訳なんだが……おめでとう。季節外れのインフルエンザだそうだ」「
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-11
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第10章 インフルエンザ 4/6

  一時間後。 深雪〈みゆき〉が点滴を外しにやってきた。「本当、お世話になりました」「気にすることはないさ。病人はいらぬ気を使わず、しっかり休むことだ。それより……」 深雪が、悠人〈ゆうと〉の右手をつかんだまま眠っている小鳥〈ことり〉に目をやった。「なかなか起きないね。君が倒れたのが、余程ショックだったんだろう」「……」「しかし、いつまでもこのままと言う訳にはいくまい。彼女まで病気になってしまう」 そう言って深雪は、小鳥の肩を揺らした。「小鳥くん」 しばらく揺らすと、小鳥が静かに目を開けた。泣き過ぎたせいか、目が少し腫れていた。「……悠兄〈ゆうにい〉ちゃん!」 目覚めると同時に、悠人にしがみつく。「大丈夫? 苦しくない?」 小鳥の大きな瞳から、また涙があふれてきた。「大丈夫だよ」 悠人より先に深雪が答えた。「君も聞いただろ。彼の症状はインフルエンザだ。適切な処置も済ませたし、問題ないよ」「ほんとに」「ああ本当だ。季節外れだから驚くのも無理ないが、よくあることだよ。疲れや寝不足で、抵抗力がなくなってたんだろう。あと二日も休んでいれば治るさ」「心配かけたな」 そう言って、悠人が小鳥の頭を撫でた。「健康には気をつけてるつもりだったんだけどな。みっともないところを見せちまったよ」「ほんとに大丈夫なんだよね。休んだら元に戻るんだよね」「大丈夫だ。デートでも何でもまかせてくれ」「……」 小鳥が肩を震わせ、ひっくひっくと泣きながら悠人の腕にしがみつく。「モテモテだね、少年」 深雪が意地悪そうに微笑む。「気に入らないぞ、遊兎〈ゆうと〉よ」 小鳥の反対側で、黙って座っていた沙
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-12
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第10章 インフルエンザ 5/6

  ドアを開け、深雪〈みゆき〉と小鳥〈ことり〉が外に出た。 小鳥の目は真っ赤になっていた。「落ち着いたかね」「はい……すいませんでした。いっぱい泣いちゃって」「気にすることはない。辛い話だったからね」「いえ……ほんと、聞いてくれてありがとうございました。それに深雪さんのこと……話まで聞かせてもらって」「いや、聞き苦しい話ですまなかった。他人にここまで話したのは初めてだったのだが、私も少し心が軽くなったようだよ」「本当にありがとうございました」「大丈夫かね?」「はい。おかげで少し、楽になりました」「今日の話は二人の秘密だ。誰にも言わないから安心したまえ。じゃあ、少年のところに戻るとしよう」 そう言って二人が階段を上った時、エレベーターが開いた。「小鳥ちゃん?」「菜々美〈ななみ〉さん」 中から、大きな袋を持った菜々美が現れた。「小鳥ちゃん、悠人〈ゆうと〉さんは? 具合はどう?」「お見舞いに来てくれたんですね」「うん。迷惑だって分かってるんだけど、どうしても気になっちゃって。寝てるようなら、これだけでも置いていこうと思って」「わざわざすいません」「小鳥くん、こちらの女性は?」「悠兄〈ゆうにい〉ちゃんの会社の方で、白河菜々美さんです。菜々美さん、こちらは木之本深雪さん。下の階の方で、看病を手伝ってくれたんです」「はじめまして」「なるほど。君が会社の」「その声……今朝、電話で」「ふむふむ、君も少年病の患者の一人か。いやはや、少年は罪深いね」 そう言って、深雪が小さく笑った。  * * * 中は何やら騒がしいようだった。大きな物音と悠人の声が聞こえる。「悠人さん、起きてるみた
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-13
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第10章 インフルエンザ 6/6

  ひと騒動終わり、菜々美〈ななみ〉と弥生〈やよい〉は帰っていった。 沙耶〈さや〉にも帰るよう言ったが、どうしても首を縦に振ろうとしなかった。「さて……」 深雪〈みゆき〉が口を開いた。「私もそろそろ御暇〈おいとま〉するが、小鳥〈ことり〉くんに沙耶くん、君たちはここで寝るつもりかね」「はい」「無論だ。遊兎〈ゆうと〉をこのまま置いてはおけぬ」「微熱まで下がったとはいえ、彼の症状はインフルエンザだ。うつったら事だぞ」「大丈夫です。私、予防接種は受けてます」「同じくだ。それに例え受けていずとも、病ごときを理由に所有物を見捨てることなど出来ぬ」「全く……君たちは」 深雪が苦笑した。「いいだろう。だが、しっかりうがいをするように。あと寝る前に一度、部屋を換気しておきたまえ。少し寒いが、空気を入れ替えておいた方がいい」「色々ありがとうございました」 小鳥が頭を下げた。「ではまた明日、様子を見に来させてもらうよ。少年、ゆっくり休むことだ。油断したらまたぶり返すからね。あと、食欲がある時にしっかり食べておきたまえ。こういうのは体力勝負だ」「落ち着いたら、改めてお礼にうかがいます」「楽しみにしてるよ。じゃあ」 玄関先までついてきた小鳥の肩を叩いて微笑むと、深雪は部屋に戻っていった。  * * * その後、小鳥と沙耶は一緒に風呂に入った。 湯船につかると、疲れがどっと出てくるのが分かった。「小鳥よ。随分と疲れているようだな」「そういうサーヤこそ。自慢のお肌に荒れが見えるよ」「何をいうか。私の美貌は、これぐらいでどうこうなる物ではない」「ふふっ。でも悠兄〈ゆうにい〉ちゃん、元気になってよかったよ」「そうだな。やつのあんな姿、あまり見たくはないものだ」「私たちって
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-14
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第11章 桜を見に行こう 1/7

  日曜日。 同じマンションの住人として、親睦も兼ねて夕食に招待したいとの深雪〈みゆき〉の申し出で、悠人〈ゆうと〉は小鳥〈ことり〉、沙耶〈さや〉、弥生〈やよい〉と共に深雪の部屋を訪れた。 ほのかに灯る青い光。部屋の色調は基本黒。自分の好みにあったその雰囲気に、悠人は思わずため息を漏らした。  * * *「適当に座ってくれたまえ。ちょうど料理も出来たところだ」 悠人たちはふたつ並べられた丸テーブルの周りに、それぞれ腰を下ろした。小鳥は深雪のそばに行き、「手伝いますね」 そう言って笑った。 小鳥のあんな安心した顔、悠人は見たことがなかった。あの日から深雪は小鳥にとって、安心感を与えてくれる存在になったのだろう。そう感じ嬉しく思った。 弥生は部屋の薄暗さに慣れていないせいか、どことなく落ち着かない様子だった。対照的に沙耶は何か気になるのか、部屋を眺めては考え込んでいた。  そうこうしている内に、深雪と小鳥が料理を運んできた。黒いテーブルに並べられる真っ白な皿は、どことなく気品を感じる物だった。皿にはシチューが、そして悠人の体調を気遣ってか、雑炊が盛り付けられていた。「おいしそうですね」「で……私はこれをやるのだが、少年はどうする?」 赤ワインの入ったグラスを手に、深雪が悠人に尋ねる。「すいません、俺は」「まだ本調子じゃないかね?」「ではなくて……」「悠兄〈ゆうにい〉ちゃんは、お酒飲めないんです」「なんとまあ……少年、人生を損しているね」 深雪が小さく笑った。「乙女たちは、みな未成年だったかな」「でわでわ深雪さん、私めがお相手させていただきます」 眼鏡をキラリと光らせ、弥生が深雪の隣に座った。「私は無事、成人に昇格しておりますので」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-15
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第11章 桜を見に行こう 2/7

  土曜の朝。 悠人〈ゆうと〉が目覚めると、既に小鳥〈ことり〉は台所で料理を作っていた。(そう言えば昨日も、仕込みがあるからとか言って、遅くまで起きてたな……)「おはよう、小鳥」「あ、おはよう悠兄〈ゆうにい〉ちゃん」 いつもの元気な声だが、目の下にクマが出来ていた。「昨日寝たのか?」「うん、ちゃんと寝たよ」「そうか、ならいいんだけど。無理するなよ」「だいじょーぶ。小鳥、若いから」 そう言って胸をはった。「サーヤと弥生〈やよい〉さんももうすぐ来るから、悠兄ちゃんは顔洗ってきて」「ああ」  * * * 準備を済ませた頃に、弥生がやってきた。「悠人さん小鳥さん、おはようございますです、ビシッ!」「おはよう弥生ちゃん。って、またすごい荷物だな」「はい。今回は車での移動ということで弥生、全力でお弁当を作ってまいりましたです、ビシッ!」「シド覚醒バージョンのベルトとは、気合も十分だね」「さすが悠人さん、今日も冴えてますね」「そろそろ行こうか、悠兄ちゃん」「って小鳥、お前もすごい荷物だな」「この中には、小鳥の愛がたっぷり詰まってるからね。楽しみにしててね、悠兄ちゃん」「はははっ……」  * * * 悠人は昨日のうちにレンタルしておいた車を取りに、駐車場へと向かった。その間に小鳥と弥生は沙耶〈さや〉、深雪〈みゆき〉と合流し、一階へと降りていった。降りると既に、悠人がワンボックスカーから降りて待っていた。「おはよう沙耶」「おはようございます、遊兎〈ゆうと〉」 赤のダウンジャケットにリュックを背負った沙耶が、小さなあくびをしながら頭を下げた。膝下までのジーンズは小鳥のお古で、サイズ直しをしたものだった。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-16
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第11章 桜を見に行こう 3/7

  菜々美〈ななみ〉が乗り込む前に、助手席を巡るバトルが勃発。じゃんけんで小鳥〈ことり〉がその座を勝ち取った。残りは後ろに向かい合わせで乗り込む。「じゃあいくぞ」「しゅっぱーつ!」 小鳥の号令で車が動き出した。「いい天気になってよかったね、悠兄〈ゆうにい〉ちゃん」「小鳥のてるてる坊主のおかげだな」「えへへへっ」「てるてる坊主なら悠人〈ゆうと〉さん、私めも6人分吊るしておきました」 弥生〈やよい〉が割り込んでくる。「そ、そうなんだ。弥生ちゃんもありがとね」「私もです!」 その横から、菜々美も顔を出す。「な、菜々美ちゃんも? そうか、ありがとね」「いえそんな……私はただ、この旅行で悠人さんが楽しめれば、そう思っただけで……」「ふっ。全くもってダメだな」 沙耶〈さや〉が腕を組んで勝ち誇る。「お前たちは、てるてる坊主の本質をまるで理解していない。そもそもあれは、吊るしてある場所限定なのだぞ。出発地が天気でも、目的地が雨なら意味がないであろう。その点私のてるてる坊主は、今回の旅行の天気、全てを司っている。見るがよい!」 そう言って沙耶が、リュックに吊るしてあるてるてる坊主を見せつけた。「これぞ移動式てるてる坊主。これさえあれば今回の旅行、どこに行っても大丈夫だ」「ぷっ……」 深雪〈みゆき〉が吹き出した。「あはははははっ。君たちといると本当、退屈しないよ。まるで移動式娯楽施設だね」  その後、車は高速に乗った。深雪は既にビールをあけて飲んでいた。沙耶と弥生、菜々美はトランプに興じている。「旅行といえばババ抜き、これは外せません」 弥生の提案だった。小鳥は高いテンションで悠人にずっと話かけ、悠人はそれを聞きながら笑顔でうなずいていた。&
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-17
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第11章 桜を見に行こう 4/7

  道は比較的すいていて、ストレスを感じることなく運転出来た。 ふと助手席を見ると、いつの間にか弥生〈やよい〉は眠っていた。  サービスエリアから出る前、帽子効果もあって再び勃発した、第二次助手席争奪戦を勝ち取った弥生。興奮の余り立ちくらみを起こして薬を投入、その後突き抜けたテンションで悠人〈ゆうと〉に話しかけていたのだった。  しかし昨夜からの寝不足に車の揺れが睡魔を誘い、いつの間にか眠ってしまったのだった。  高速を降り、信号待ちで後ろを振り返ると、小鳥〈ことり〉も沙耶〈さや〉、菜々美〈ななみ〉も眠っていて、深雪〈みゆき〉が一人、景色を眺めながらビールを飲んでいた。「みんな、寝ちゃいましたね」「この様子だと、昨日は眠ってないようだね」「ははっ」「たかが花見でここまで楽しみにさせるとは。少年、君はやはり面白いね」「俺ですか」「ああ。みんな君のことが、本当に好きなんだよ。39歳にして巡ってきた春、世の中年たちの希望の光だね」「変な褒め方しないで下さい」「はははっ」「で、ここからどっちに向かえばいいんですか」「ああ、越前海岸に向かってくれたまえ。近付いてきたら、道を教えられるはずだ」「分かりました」   それから更に一時間ほど車を走らせると、視界に海が入ってきた。窓を開けると、潮風が気持ちよかった。「海、穏やかですね」「そうだね。こんなに穏やかな海を見ていると、冬の海が嘘のようだ」「そうなんですか」「ああ。冬の海は、本当に厳しいんだ。次から次へと打ち寄せてくる荒波は力強くて、まるでそう……父親のようだ。そんな歌もあったね。それに比べると、春の穏やかな海は母親のようだ」  * * * しばらくして深雪の指示で、車は海岸沿いから山道へと入っていった。そしてほどなくして、人の気配を感じさせないような場所に、車が一台止まっているのが見えた。  そ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-18
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