Semua Bab 【完結】幼馴染の贈り物: Bab 61 - Bab 70

74 Bab

第13章 それぞれの想い 2/7

  車中でアニソンを流し、ヲタク話に花を咲かせながら着いた先は、郊外にあるヨットハーバーだった。「これはまた……大阪にこんなお洒落なところがあったんですね」「いいところだろ? 昔よく一人で来てた、お気に入りの場所なんだ」 夕焼けに染まる水面。そして海岸には、いくつものヨットがつながれていた。 波が来るたびにヨットが揺れ、傾きあい優しい音を奏でる。 夕陽に包まれながら二人は、言葉を交わすことなくその音に耳を傾け、海を見つめていた。 陽が落ちた後、二人はヨットハーバーが見渡せるレストランでディナーを楽しんだ。 ドレス姿の女性のピアノの生演奏、テーブルにキャンドルが灯され、窓の外にはヨットと広がる海の夜景。その雰囲気に弥生〈やよい〉は酔っていた。「悠人〈ゆうと〉さんって、やっぱりオトナなんですね」「いやいやいやいや、そんな大層なものじゃないから」「いえいえ私、こんなところで食事だなんて、思ってもみませんでしたから」「折角のデートなんだし、たまにはいい格好したかっただけだよ」「こんな映画のワンシーンみたいな場所で、悠人さんと二人でディナー……今日の私、幸せすぎて死んじゃいそうです」「弥生ちゃん。来年の春までは死ねないよ」「あ、そうでした」「そうそう」「あはははっ」  * * *「でも弥生ちゃんとの出会いは本当、アニメでも今更ないような鉄板だったよね。玄関先で鍵を探してる女子に、まさかリアルで会うとは思わなかったよ」「あはははっ、お恥ずかしい限りです。でも実は、私もあの時思ってました。『おおっ、私は正に今、アニメの王道を体現しているのではないか!』と」「で、オチが違うポケットに入ってたと」「自分でも笑ってしまいました」「あれからもう、二年になるんだよね」「はい。悠人さんとこうして出会って、二年です」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-29
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第13章 それぞれの想い 3/7

  翌日はあいにくの雨だった。 菜々美〈ななみ〉のマンションまで迎えにいくと、玄関先で菜々美がうなだれた様子で待っていた。「おはよう、菜々美ちゃん」「……おはようございます、悠人〈ゆうと〉さん」「どうしたの、元気ないね」「だって……久しぶりに二人きりで、しかも悠人さんがエスコートしてくれるデートなのに……雨が降っちゃって……」「はははっ、確かに残念だけど。でも、天気だけはどうしようもないからね」「私、くじ運が悪いんですよ。天気予報、今日だけが雨なんて……一週間前から、てるてる坊主作ってたのに」「まあとにかく乗って。今日は天気のことも考えて、案を練ってあるから」  車を走らせて話をしていくうちに、菜々美も徐々に元気になっていった。 仕事の相談、春の新作アニメの感想、魔法天使〈マジック・エンジェル〉イヴ映画化のことなど、特にいつもと変わらない話題だったが、悠人と同じ空間にいるだけで、菜々美にとっては新鮮で特別な時間となっていた。  * * * 着いた先は、市内の有名な水族館だった。「水族館ですか悠人さん!」「うん。雨だからどうしようって思ったんだけど、入社した頃に菜々美ちゃん、ここに来たいって言ってたのを思い出してね。まああれから随分経つし、もう来てると思うけど」「私、初めてなんです!」「そうなの?」「はい! ずっと行きたいって思ってたんですけど、一人で行くのも寂しいなと思って。 でもびっくりしました。悠人さん、あんな昔に私が言ったこと、覚えていてくれたんですね」「たまたまだけどね」「嬉しいです、悠人さん」「じゃあ念願のジンベエザメ、見にいこうか」「はいっ!」 まるで海の中を潜っているような錯覚を覚え
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-30
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第13章 それぞれの想い 4/7

  車が高速に乗る。 窓の外は徐々に暗くなっていき、街が夜のとばりに包まれていく。その景色を眺めながら交わす二人の会話は、つきることがなかった。「さあ降りて」 二時間近くのドライブは、菜々美〈ななみ〉にとってあっと言う間の時間だった。 もっと悠人〈ゆうと〉さんのことを知りたい。もっと私のことを知ってほしい……これまで悠人に対して育んできた想いが言葉となり、今まで願ってきた、悠人と二人だけの時間をかみ締めていた。「さあ、お手を」 そう言って差し出された悠人の手。目の前にある悠人の笑顔は、菜々美にとって間違いなく、王子様のそれだった。 車から出ると、風が少し冷たかった。悠人がそっと、自分の上着を菜々美の肩にかける。「悠人さん、ここって」 降りた場所は、山の頂上付近だった。少し歩くと道が開け、景色が視界に入った。「あ……」 そこは市内を一望出来る、知る人ぞ知る夜景スポットだった。「きれい……」 見ると周りには、恋人連れと思われる若者たちが、それぞれお互いのエリアを作って座っていた。「私、ここのこと知ってます。雑誌とかでよく載ってますから。いつか悠人さんと来たかったんです」「やっぱ知ってたか」「悠人さんは、ここに来たことあるんですか?」「いや、俺も初めてだよ。でもここならきっと、菜々美ちゃんも喜ぶんじゃないかって思ってね」「はい、すごく嬉しいです!」  * * * 自販機で缶コーヒーを買い、空いてるスペースに二人揃って腰を下ろす。 見上げると月も輝いていた。そのせいで星はあまり見えないが、それでもいつも見ている空とは比較にならなかった。「夢みたい……」 そう言って、菜々美が嬉しそうにコーヒーを口にする。「0時になったら、この魔法もとけてしまうけど
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-31
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第13章 それぞれの想い 5/7

 「……ん?」 目を覚まし、感じた。 あの感触、あの匂いを。 ゆっくり顔を横に向けると、そこには沙耶〈さや〉の意地悪そうな笑顔があった。「おはようございます、遊兎〈ゆうと〉。今日は大サービスだぞ」 そう言って、悠人〈ゆうと〉の鼻を甘噛みした。「はむっ……」「うぎゃああああああっ!」  * * *「いい目覚めだったようだな、遊兎」 温泉旅行の時と同じ、膝までのジーパン、赤いダウンに帽子をかぶった沙耶が、意地悪そうな笑みを浮かべた。「いやいや、何度経験しても、あの目覚めは心臓に悪いぞ」「何を言うか。この二日、夜這いをかけられなかったのだ。私のストレスを考えて見ろ」「どんな理屈だよ」「おかげで今日はすっきりしたぞ」 駅のベンチに座る二人。昨日とはうってかわって、五月晴れの気持ちのいい天気だった。「そろそろダウンも暑いだろ」「いや、そうでもないぞ。こいつは中身を重ねるタイプでな、今はそれを外しているので快適だ。それにジャケットの中はシャツ一枚だからな、丁度よいのだ」「気に入ってくれてるみたいで何よりだ」「うむ。夏に着れないのが残念だ」 そう言って小さく笑う。「で、だ。遊兎よ、今日は私をどうエスコートするつもりなのだ」「後の楽しみじゃ駄目なのか」「いや、その……駄目という訳ではないのだが……心の準備とかは必要ないのか」「なんだお前、緊張してるのか」「にゃ……にゃにを言うか! デートごときに緊張など!」「沙耶」「なんだ」「噛んだな、今」「ふにゃああああっ!」  * * *「&he
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-01
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第13章 それぞれの想い 6/7

 「腹は膨らんだか」「うむ。全く庶民には困ったものだ」「しかしお前、いくら美味いからって、一体何本食ったんだ」「し、仕方あるまい。感動したのだ、初めてだったのだ……少しぐらい、優しくしてくれても……」「変な言い方をするな」 二人は喫茶店でコーヒーを飲んでいた。 静かで落ち着いた佇まい。まるでそこだけ時間が止まっているような、そんな懐かしい感じのする店だった。店内にはジャズが流れている。「遊兎〈ゆうと〉は不思議なところを、たくさん知っているな」「そうか? まあ、地元みたいなもんだしな」「知っての通り、私は子供の頃から天才と呼ばれてきた。知識だけなら、お前より遥かに多くのことを知っているはずだ」「だろうな。IQだけでも、俺二人分ぐらいありそうだ」「だが所詮、それらは全て動かずして得た知識だ。ネットの世界に入り、私はこれまで体験したことのない、情報の渦に飲み込まれて感激した。しかし遊兎、お前と出会ってから知ることは、それ以上の感動だった。正に生きた知識だ」「大袈裟だな」「大袈裟ではないぞ。私の周りにいた者どもの何人が、遊兎の持っている生きた知識を知っているか。おそらく誰も知るまい。やつらは今、私が経験していることを取るに足らない、くだらないものだと笑うかもしれない。こんなものを知らなくても、人生に何の影響もない、そう言うかもしれない。だが、知ってしまった私から言わせれば、やつらの人生こそ薄いものだ」「おいおい、テーマが壮大になってるぞ」「私の素直な気持ちだ」「だろうな。今言ったこと全部、お前の本当の気持ちだと思う。でもな、沙耶〈さや〉。そう思える、お前の懐の深さこそがすごいんだぞ」「……」「お前のそういうところが、俺は気に入ったんだ。ネットの世界でお前に出会った時、お前の発信する言葉は強烈だった。一言一言に力があった。それに圧倒されるやつも多かった。独善的な意見もあったが、それで
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-02
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第13章 それぞれの想い 7/7

  その後駄菓子屋を回り、道端でたこ焼き、焼きそばと食べ歩く。そうこうしているうちに、いい時間になってきた。 悠人〈ゆうと〉が最後に向かった場所。それは通天閣だった。 レトロな街並みの中、存在感のある出で立ちに沙耶〈さや〉が言葉を失う。 エレベーターを上り展望台へ。大阪の街並みが一望に見渡せた。「遊兎〈ゆうと〉、あれは何だ」「ああ、あれは双眼鏡だ。見てみるか」 そう言われ、目を輝かせて何度もうなずく。「おおっ! すごいぞ遊兎! 街がこんなに大きく見える!」 沙耶が子供のようにはしゃぐ。「私たちの街はどっちだ」「あっちの方角だよ」「そうか……私は今、あの辺りに住んでいるのだな。遊兎たちと……」「ああ。お前の街だよ、あそこは」「私の街……くすぐったいな、遊兎」 沙耶が照れくさそうに笑う。そうしてしばらく見ていると、時間切れになった視界が、ガシャンという音と共に問答無用で真っ暗になった。「ひゃっ……」 沙耶が驚いて後退る。「お、終わったのか……」「びっくりしたか」「うむ。時間だ消えろ、そう言われたような気がした」「はははっ。もう一回見るか?」「いや、十分楽しんだ」 そう言って笑い、再び悠人の腕にしがみついた。  * * * マンションに着いた二人が、扉前で言葉を交わす。「楽しかったよ。ありがとな、沙耶」「礼を言うのは私の方だ。こんな楽しい時間、生まれて初めてだったぞ」 目をつむり、胸に手を当てた沙耶が、噛みしめるようにそう言った。「楽しんでくれたのならよかった。色々考えたかいがあったよ」「違うのだ、遊兎よ」「え?」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-03
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第14章 小鳥と小百合の想い 1/4

  今朝は目覚めがいい。 熟睡出来た時のような、爽快感があった。「さすがに熟睡出来たか……目覚ましより早く起きたのに、体が軽いな」 小鳥〈ことり〉とのデートの日。悠人〈ゆうと〉がそう言って大きく伸びをした。 その時悠人の耳に、小鳥の歌が聞こえてきた。 小鳥が来てから、毎日聞いていた歌。三日聞かなかっただけで、随分と懐かしい感じがした。 「え? 小鳥……?」 こんな早い時間から、小鳥は来てるのか?「あ、悠兄〈ゆうにい〉ちゃん、おはよー!」 小鳥が悠人の部屋に入ってきた。いつもの元気な笑顔だ。「ちょっと待っててね。今、朝ご飯作ってるから。て、時間的には昼ご飯なんだけどね」「……昼?」 悠人が時計を見る。時間は昼の12時を回っていた。「……12時! 俺、寝過ごしたのか!」 悠人が慌てて飛び起きる。 なんてこった。よりによって、小鳥とのデートに日に寝坊するなんて。 目覚ましも間違いなくセットしておいたのに、無意識に切ってしまったのか。悠人が青ざめた顔で台所に向かった。「小鳥ごめん!」 小鳥に向かい、勢いよく頭を下げる。「どうしたの? 悠兄ちゃん」「いやその……寝過ごしてしまった。すまん!」「ああそのこと? いいよそんなの。だって悠兄ちゃん、三日間大変だったんだから」「いや、でも……約束は約束だ。折角のデートなのに俺、目覚まし止めちまって」「それ、小鳥だよ」「え?」「小鳥が止めたんだよ。今日は朝からここにいたんだ。ルールだから仕方なかったけど、悠兄ちゃんと三日も会えなかったんだから、早く会いたくて。 それでね、悠兄ちゃんの部屋に忍び込んで、目覚まし止めておいたんだ。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-04
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第14章 小鳥と小百合の想い 2/4

  前回同様、賑やかなオープニングが来るかと思っていたが、静かに画面が現れた。 どこかの部屋の中から、カメラが窓に向けられているようだった。 窓には、青い小鳥のぬいぐるみが置かれている。それは遊園地に行った時、小百合〈さゆり〉にプレゼントしたものだった。 曇り気味の窓から見える外は少し、雪が降っているようだった。  * * *「悠人〈ゆうと〉。あらためて……久しぶり。小百合です。 前のビデオとはかなり趣が違うので、ちょっと面食らってるかな? この前のが前編なら、今回のは後編ってことになります。 前編で私は悠人に、小鳥〈ことり〉の気持ちを伝えました。 あの子が今まで育んできた、悠人への想い。悠人と共に人生を歩みたいという、純粋な願い。それを一人の親として、大切な私の幼馴染、悠人に考えてほしい、そう思い話しました。 今回は私の素直な気持ち、そして私の願いを話したいと思ってます。 このDVDは、あなたたちが一緒に生活をして、その中で、悠人が小鳥のことを一人の女として見てくれた時か、もしくは私との約束、三ヶ月が過ぎた時、どちらかのタイミングで見せるように言いました。 結局どうだったんだろう。小鳥は怒るかも知れないけど、私の予想では期限になったから、そう思ってます。 だって悠人ってば、優柔不断なの治ってそうにないから。小鳥がどれだけアピールしても、手を出しそうにないもんね。ふふっ。 それに悠人、真面目だから。小鳥のことを本当に大切に想ってくれていたから。そう簡単に恋愛の対象として見るなんて、まずないだろうと思ってます。 まあ、あの子も頑張ってアピールしただろうし、何といっても、私の遺伝子を受け継いでるんだから可愛いし。悠人のストライクゾーンなのは間違いないから、悠人もちょっとは心、動いてると思うけど。 あ、悠人、今ちょっと図星って思ったでしょ。私には分かってるよ、ふふっ。  悠人。小鳥は本当に悠人のことが好きだよ。あの子はこれまでずっと、悠人への想い一筋
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-05
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第14章 小鳥と小百合の想い 3/4

  悠人〈ゆうと〉が目を見開く。 息が出来なくなった。変な汗が滲み、胸の動悸が早まった。 今、小百合〈さゆり〉は……小百合は何を言ったんだ…… 「半年前、私は職場で倒れました。過労かな、そう思ってたんだけど、聞かされた病名は『急性白血病』というものでした。検査した時には症状が進んでいて、手がつけられなかったそうです。そして伝えられたのが、余命半年というものでした。 この半年、自分の人生について、色々と考えることが出来ました。そして気付きました。私の人生って、悠人と小鳥〈ことり〉で埋め尽くされていたって。 余命を伝えられてから、急に悠人に会いたくなった。もう助からない命なら、せめて悠人の胸の中で死にたい、そう思った。でも、そう思って振り返ると、そこには小鳥がいた。 私の余命を先生から聞いたのは、小鳥でした。小鳥、随分悩んだみたいだけど、私に話してくれた。私の胸で泣いてくれました。 死ぬことは怖い。今、こうして話していても怖いです。でもそれ以上に私は、小鳥がこれからどう生きていくのか、それが心配でした。 あの子は本当にいい子に育ってくれました。父親の顔も覚えていなくて、私と母さんと三人、決して裕福ではない環境の中でまっすぐに、素直に育ってくれました。思いやりのある、優しい子になってくれました。 でも小鳥はまだ18歳、人生はこれからです。この子のこれからをずっと見守っていきたい、そう心から願いました。でも、それは叶わない。 この半年、小鳥は毎日病院に来てくれました。たまに先生の許可をもらって、病室に泊まってくれました。いっぱい話しました。今まで話せなかった私のこと、和樹〈かずき〉のこと、そして悠人のこと。 小鳥はよく泣きました。私との別れを、急にリアルに感じる時があるんだと思う。そして、私が悠人のことを本当に好きなんだって知って、悠人に連絡したい、そう何度も言いました。 でも、私は許さなかった。私はもうすぐここからいなくなる。私のことより、小鳥には小鳥のことを考えて欲しかったから。 最初
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-06
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第14章 小鳥と小百合の想い 4/4

  悠人〈ゆうと〉は小鳥〈ことり〉を探し、走っていた。 何度電話してもつながらない。悠人の頭から、小鳥〈ことり〉が一人で泣いている姿が消えなかった。 コンビニに行くがいない。カウンターにいた沙耶〈さや〉が、会ってはいけないルールを破ってやってきた悠人に、そして様子に驚いていた。弥生〈やよい〉に、菜々美〈ななみ〉に、深雪〈みゆき〉にも電話するが分からない。深雪は冷静だったが、弥生と菜々美は突然の電話に驚いていた。 再びマンションに戻った時には、既に陽が落ちていた。「小鳥……」 その時悠人の脳裏に、ひとつの場所が浮かんだ。 それは、すぐ目の前の堤防だった。「くそっ、何をやってるんだ俺は! いつもなら真っ先に行ってるだろうが!」  * * * 陽が落ちた堤防を見下ろす。暗く静まりかえったそこに、小鳥の姿があった。「小鳥―っ!」 小鳥は堤防で、膝を抱えて座っていた。 小鳥の横に立つと悠人は息を整え、そして小鳥の肩に自分のジャケットをかけた。 悠人が隣に腰を下ろす。小鳥は何も言わず、膝に顔を埋めたまま動かなかった。 「……小百合〈さゆり〉のDVD、見たよ」「……」「ごめんな、小鳥……俺、ずっと小鳥を見ていたつもりだったけど、何も見えてなかった。 小鳥がどれだけ寂しい思いをしてきたか、どんな気持ちで俺のところに来たのか、分かってなかった」 悠人の言葉に、小鳥はうつむいたまま首を振った。「そんなことないよ……小鳥、悠兄〈ゆうにい〉ちゃんの家に来てから、本当に楽しかったから……泣きたくなっても、悠兄ちゃんの顔を見たら元気になれたから…… ここに来るまで小鳥、ずっと泣いてたと思う。もうお母さんと話せないんだって思ったら
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-07
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