車中でアニソンを流し、ヲタク話に花を咲かせながら着いた先は、郊外にあるヨットハーバーだった。「これはまた……大阪にこんなお洒落なところがあったんですね」「いいところだろ? 昔よく一人で来てた、お気に入りの場所なんだ」 夕焼けに染まる水面。そして海岸には、いくつものヨットがつながれていた。 波が来るたびにヨットが揺れ、傾きあい優しい音を奏でる。 夕陽に包まれながら二人は、言葉を交わすことなくその音に耳を傾け、海を見つめていた。 陽が落ちた後、二人はヨットハーバーが見渡せるレストランでディナーを楽しんだ。 ドレス姿の女性のピアノの生演奏、テーブルにキャンドルが灯され、窓の外にはヨットと広がる海の夜景。その雰囲気に弥生〈やよい〉は酔っていた。「悠人〈ゆうと〉さんって、やっぱりオトナなんですね」「いやいやいやいや、そんな大層なものじゃないから」「いえいえ私、こんなところで食事だなんて、思ってもみませんでしたから」「折角のデートなんだし、たまにはいい格好したかっただけだよ」「こんな映画のワンシーンみたいな場所で、悠人さんと二人でディナー……今日の私、幸せすぎて死んじゃいそうです」「弥生ちゃん。来年の春までは死ねないよ」「あ、そうでした」「そうそう」「あはははっ」 * * *「でも弥生ちゃんとの出会いは本当、アニメでも今更ないような鉄板だったよね。玄関先で鍵を探してる女子に、まさかリアルで会うとは思わなかったよ」「あはははっ、お恥ずかしい限りです。でも実は、私もあの時思ってました。『おおっ、私は正に今、アニメの王道を体現しているのではないか!』と」「で、オチが違うポケットに入ってたと」「自分でも笑ってしまいました」「あれからもう、二年になるんだよね」「はい。悠人さんとこうして出会って、二年です」
Terakhir Diperbarui : 2025-05-29 Baca selengkapnya