深雪〈みゆき〉の隣に弥生〈やよい〉と菜々美〈ななみ〉が座り、いつの間にか三人で酒盛りが始まっていた。「深雪さんって本当、お強いですね」「いやいや菜々美くん、君もなかなかいける口だね」「よく父に付き合わされてましたので」「ほほう、やはり……こんなところに同志がいたとは」「弥生さんも?」「はいであります。私めも父に鍛えられた口で。未成年に何を鍛えさせてるんだって話ですが」「私は日本酒のほうが好きなんです。今日も持ってきたんですよ」「おおっ、これはまた上物を」「私にももらえるかい」「どうぞ。これ、田舎の地酒なんですよ。お母さんがお正月に送ってくれた物なんです」「娘に日本酒のお年玉とは、いい母親を持ったね」「そ、そうでしょうか」「そうですとも菜々美殿。まあ、かくいう私の親もそんな感じで、正月にはいつも地酒と共に手紙が入ってる訳ですが。『彼氏出来たか』と」「……私もですよ」「あれは辛い年賀状です……」「弥生さん、20歳でそれでしょ? 私なんかどうするんですか。『今年こそ孫の顔を見れるのでしょうか』なんて年賀状がきたら」「君たちは、少年抜きでも十分面白いな」「深雪さん、なんでそこで笑うんですか。ひどいですよ」「いやすまない。君たちがあまりに可愛いものでね」「可愛いって深雪さん、私とそんなに歳変わらないじゃないですか」「そうなんだけどね。でも菜々美くん、君は若いよ。歳をあと3つ4つ下げて申告しても、きっと大丈夫だ」「それって褒められてます?」「勿論」「ならいいです」 そう言って、菜々美も笑って日本酒を飲む。「ささっ、深雪殿も飲んでください。今宵は飲み明かしましょうぞ」「すまんね、弥生くん」 *
Huling Na-update : 2025-05-19 Magbasa pa