海斗くんに数学を教えてもらうようになって、何度目かの水曜日の放課後。 この日も誰もいない教室で、いつものように海斗くんと向かい合って座り、数学を教えてもらっていた。 「うん、正解。希空、最初の頃に比べたらだいぶ出来るようになったよな」 今日の授業で習った問題を全て正解した私に、海斗くんが微笑む。 「海斗くんが、いつも丁寧に教えてくれるお陰だよ」 「いや。一番は、希空が努力してるからだよ」 海斗くんが、私の頭をくしゃくしゃっと撫でてくれる。 海斗くんに褒めてもらえると嬉しくて、私は自然と頬が緩む。 「それじゃあ、希空。次はこれを解いてみて」 海斗くんに、1枚のプリントを渡される。 「これまでやったことが全部頭に入ってるか、復習も兼ねて確認のテストな」 どうやらこれは、海斗くんが作ったテストらしい。 「希空がちゃんとできたら、何かご褒美をやるよ」 「えっ、ご褒美!?」 ご褒美という言葉に、思わず反応してしまう私。 「それじゃあ、めっちゃ頑張るね!」 私は、テストに取り組み始める。 「ははっ。ご褒美目当てとか、ほんと分かりやすいヤツ」 海斗くんに言われたとおり、ご褒美が欲しいっていう気持ちも確かにあるけれど。一番は、海斗くんの笑顔が見たいから。 せっかく毎週水曜日、こうして海斗くんに勉強を教えてもらってるんだもん。 私が頑張ることで、海斗くんに喜んで欲しいって思うんだ。 私がしばらく、カリカリとシャーペンを走らせていると。 「教科書、もしかして教室に忘れたのかな」 誰かの声と複数の足音が、廊下の向こうから聞こえてきた。 「ナホ、確か明日の英語の授業で先生から指名されてたわよね?」 えっ。この声は……平野さん!? ナホさんは、先日平野さんと一緒に私を体育館裏へと連れて行った女子の一人だ。 「そうなの。だから、教科書がないと困るなって思って。ごめんね、マナに付き合わせちゃって」 マナは平野さんの名前だから、やっぱり……! ナホさんの忘れ物を、二人で教室まで取りに来たんだ。 海斗くんといるところを、あの二人に見られたらまずい。 「海斗くん、ごめん。ちょっと立って、一緒にこっちに来て」 「希空!?」 私は海斗くんの腕を掴んで立ち上がると、教室の隅へと移動する。 私は海斗くんを窓辺へと連れて来ると、急いでカーテン
Terakhir Diperbarui : 2025-05-09 Baca selengkapnya