ログイン希空の通う高校には、アイドル並みに人気の双子がいる。希空は優しい双子の兄・陸斗に片思い中で、意地悪な双子の弟・海斗のことは苦手に感じていた。 ところがある日をキッカケに、希空は海斗から甘く迫られるようになる。「あいつなんかやめて、俺のことを好きになれよ」海斗の突然の変化に戸惑う希空だったが、さらに陸斗からも「希空ちゃんだけは、誰にも渡したくない」と言われてしまい……。双子の男子たちとの、甘くて少し切ない三角関係の行方は……?
もっと見る「はぁ、はぁ……っ、海斗くん!」 廊下をしばらく走り続けて、ようやく海斗くんの後ろ姿が見えた。 「海斗くん、待って!」 「希空!?」 私に気づいた海斗くんが立ち止まり、驚いた顔でこちらへと振り返る。 「何しに来たんだよ。早く陸斗のところへ行けよ」 「ううん、行かない」 私は、首を何度も横に振る。 「ねぇ、海斗くん。さっきのテストのご褒美は、まだ有効?」 「あっ、ああ」 「だったら、頑張ったご褒美として私を……海斗くんの彼女にして欲しい」 「え?彼女って希空、何を言って……」 「私は、海斗くんのことが好きなの!」 私はそう言うと、海斗くんの制服のネクタイを引っ張り、彼の唇にキスをした。 「これで、信じてくれた?」 私が唇を離すと、海斗くんは目をパチパチとさせている。 「希空が、陸斗じゃなくて俺を好きだなんて……本当に?」 「うん」 「だって、お前はもう陸斗のもんだとばかり思ってたから。まさかこれ、夢とかじゃないよな?」 「夢じゃないよ。私は、誰よりも海斗くんのことが好き」 「ありがとう、希空」 私は、海斗くんにふわりと抱きしめられる。 「俺も、希空のことが誰よりも大好きだ。だから、希空……俺と付き合って」 「はい」 最初に海斗くんに告白されたときは、断ってしまったけれど。 私は今ようやく、彼の気持ちに応えることができた。 「つーか、希空。この前、平野たちにひどい目に遭わされたんだって?」 「えっ、どうしてそれを……」 「陸斗から聞いた。なんで俺にすぐ話してくれなかったんだよ」 「だって、心配かけたくなかったから……痛っ」 私は、海斗くんに頬を引っ張られる。 「だとしても、ちゃんと話して。これからは、隠し事はナシだからな?だって俺たち、今日からは彼氏と彼女だろ?」 海斗くんの“彼氏と彼女”という言葉に、胸が熱くなる。 「これから希空のことは、俺が守るから。大事な希空のこと、もう誰にも傷つけさせたりしねぇ」 「ありがとう。海斗くんがいてくれるって思うと、心強いよ」 海斗くんと私は、クラスメイトでもなく友達でもなく。今日からは、彼氏と彼女という特別な関係。 「なぁ、希空。さっきは不意打ちだったから、俺にもう一度キスして?」 「ええ!?」 あのときは、海斗くんに想いを伝えるのに必死だったから。 「
「おい、陸斗。何だよ、この間の返事って」 首を傾げた海斗くんが、陸斗くんに尋ねる。 「ああ……僕、希空ちゃんに告白したんだよ」 「は?告白!?」 海斗くんが、目を丸くする。 「……そうか。陸斗、希空に告白したのか」 少しの沈黙のあと、海斗くんがぽつりと呟く。 「良かったじゃん、希空。陸斗と両想いになれて」 海斗くん……? 「俺、希空に少しでも好きになってもらえるように頑張るって宣言してから、友達としてお前のそばにいたけど。いつだって希空の心には、陸斗がいたもんな」 海斗くんが、切なげに笑う。 「やっぱり希空には、自分が本当に好きな男と幸せになって欲しいから。邪魔者は、退散するわ」 そう言うと、海斗くんは私から背を背ける。 「これからはもう、希空と必要以上に関わったりしないから。希空、陸斗と幸せになれよ」 消え入りそうな声で言うと、海斗くんは早足で教室を出て行く。 海斗くん、『これからはもう、希空と必要以上に関わったりしない』って、そんなの嫌だよ。 私はこれからもずっと、海斗くんと一緒にいたいのに。 「海斗くん、待って……!」 私は、咄嗟に海斗くんを追いかけようとしたけれど。 「希空ちゃんっ!」 私は陸斗くんに、後ろから腕を掴まれてしまった。 「希空ちゃん、行かないで……」 陸斗くんが、後ろから私をぎゅうっと抱きしめてくる。 最低かもしれないけど。陸斗くんに抱きしめられている今でさえ、私の頭に浮かぶのは海斗くんの顔で。 私から背を背ける際に見えた海斗くんの泣きそうな顔が、頭にこびりついて離れない。 「海斗くん……っうう」 私の目には、涙が浮かぶ。 ここに来て、ようやく確信した。 私はやっぱり……海斗くんが好きなのだと。 私が辛いときいつもそばにいてくれた、優しい海斗くんのことが、いつの間にか私は大好きになっていたんだ。 「希空ちゃん?」 今になって、ようやく自分の気持ちに気づくなんて。 「あの。陸斗くん、私……」 陸斗くんに告白の返事をしようと思うと、緊張で声も手も震える。 もしかしたら、これで本当に陸斗くんとの関係は終わってしまうかもしれない。だけど、ちゃんと言わなくちゃ。私は、真っ直ぐ陸斗くんを見据える。「あのね、陸斗くん。私……海斗くんのことが好き。だから、陸斗くんとは付き合えない」「や
背中には嫌な汗が伝い、心臓の音がバクバクとうるさく響く。お願い。どうか、バレませんように。こんな、海斗くんに抱きしめられているところなんて見られたら……きっと、今まで以上に敵視されるのが目に見えてるもん。私はハラハラしながら、じっと息をひそめる。︎︎︎︎︎︎さすがの海斗くんも状況を察したのか、今は何もせずにじっとおとなしくしている。「あっ。教科書、やっぱり教室に置き忘れてたわ」ナホさんが、英語の教科書を机の中から取り出す。「教科書、あって良かったね。それじゃあ帰ろうか」二人の声と足音が、だんだんと遠ざかっていく。二人とも出て行った……?私たち、なんとかバレずに済んだの?「よし。大丈夫そうだな」海斗くんが私から離れ、カーテンを開ける。教室には私たち以外もう誰もいなくて、一気に緊張が解けた。「ああ、ドキドキした……」「ほんと、危なかったな」それだけ言うと、海斗くんは何事もなかったように席に戻る。あ、あれ。海斗くん、何だかもうスッカリいつも通り?さっきドキドキしていたのは、もしかして私だけだった?唇には、まだわずかにキスの余韻があって。先程まであんなにも彼と距離が近かったのに、今は遠くて。離れていった海斗くんの腕が、温もりが、なんだか無性に恋しい。海斗くん、もうキスはしてくれないのかな?だってさっきのキス、すごく良かったから……って、何を考えてるの私!これじゃあまるで……私が海斗くんのことを、意識してるみたいじゃない。「……っ」思い返してみれば、先程の海斗くんのあの少し強引なキスも全然嫌じゃなかったし。最近は海斗くんの笑顔を見ると、ドキドキすることも増えていた気がする。もしかして私、海斗くんのことを……?「おい、希空。何やってるんだよ。テスト、まだ残ってるぞ?」眉をひそめた海斗くんが、じっとこちらを見てくる。海斗くんに見られてると思うと、また鼓動が速くなる。これってやっぱり……?「テストちゃんと解かなきゃ、ご褒美は無しだからな?」「わっ、分かってる!」自分のなかでの違和感みたいなものを感じながら、私は海斗くんの向かいの席へと腰を下ろした。◇それから海斗くん手作りの確認テストを解き終わった私は今、海斗くんに採点してもらっている。「凄いな、希空。90点!頑張ったな」『90』と赤ペンで書かれた答案を私に
海斗くんに数学を教えてもらうようになって、何度目かの水曜日の放課後。 この日も誰もいない教室で、いつものように海斗くんと向かい合って座り、数学を教えてもらっていた。 「うん、正解。希空、最初の頃に比べたらだいぶ出来るようになったよな」 今日の授業で習った問題を全て正解した私に、海斗くんが微笑む。 「海斗くんが、いつも丁寧に教えてくれるお陰だよ」 「いや。一番は、希空が努力してるからだよ」 海斗くんが、私の頭をくしゃくしゃっと撫でてくれる。 海斗くんに褒めてもらえると嬉しくて、私は自然と頬が緩む。 「それじゃあ、希空。次はこれを解いてみて」 海斗くんに、1枚のプリントを渡される。 「これまでやったことが全部頭に入ってるか、復習も兼ねて確認のテストな」 どうやらこれは、海斗くんが作ったテストらしい。 「希空がちゃんとできたら、何かご褒美をやるよ」 「えっ、ご褒美!?」 ご褒美という言葉に、思わず反応してしまう私。 「それじゃあ、めっちゃ頑張るね!」 私は、テストに取り組み始める。 「ははっ。ご褒美目当てとか、ほんと分かりやすいヤツ」 海斗くんに言われたとおり、ご褒美が欲しいっていう気持ちも確かにあるけれど。一番は、海斗くんの笑顔が見たいから。 せっかく毎週水曜日、こうして海斗くんに勉強を教えてもらってるんだもん。 私が頑張ることで、海斗くんに喜んで欲しいって思うんだ。 私がしばらく、カリカリとシャーペンを走らせていると。 「教科書、もしかして教室に忘れたのかな」 誰かの声と複数の足音が、廊下の向こうから聞こえてきた。 「ナホ、確か明日の英語の授業で先生から指名されてたわよね?」 えっ。この声は……平野さん!? ナホさんは、先日平野さんと一緒に私を体育館裏へと連れて行った女子の一人だ。 「そうなの。だから、教科書がないと困るなって思って。ごめんね、マナに付き合わせちゃって」 マナは平野さんの名前だから、やっぱり……! ナホさんの忘れ物を、二人で教室まで取りに来たんだ。 海斗くんといるところを、あの二人に見られたらまずい。 「海斗くん、ごめん。ちょっと立って、一緒にこっちに来て」 「希空!?」 私は海斗くんの腕を掴んで立ち上がると、教室の隅へと移動する。 私は海斗くんを窓辺へと連れて来ると、急いでカーテン
私が連れてこられたのは、人気の全くない体育館裏だった。「ねぇ、どういうつもり?」「えっと……どういうつもりとは?」私が恐る恐る平野さんに尋ねると、女子3人に一斉に睨まれ肩がビクッと跳ねる。「小嶋さんって、この間まで陸斗くんのことが好きだったんじゃないの?」「それなのに陸斗くんに振られた途端、海斗くんに乗り換えるとかありえないんだけど!」「えっ。なんで私が振られたってこと……」思わず聞き返してしまう私。「廊下で小嶋さんが陸斗くんに告白してるところを、ここにいるナホがたまたま見かけたのよ」まさかあのとき、誰かに見られていたなんて。「小嶋さんは、軽い気持ちで海斗くんと遊んでるの
【海斗side】「あっ。海斗くんだ」「海斗くん、おはようー!」朝。俺・相楽海斗の1日は、矢継ぎ早に飛んでくる黄色い声を交わすところから始まる。双子の兄である陸斗と二人で登校し、校門をくぐり抜けた途端、横に後ろにと女子たちがワッと集まってきた。またか……と、ため息をつきそうになるのを俺は必死に堪える。高校に入学してからというもの、毎日こんな調子だ。「キャーッ。今日は、陸斗くんと海斗くんが一緒だ」「ふたり一緒なんて、ラッキーだね」特に陸斗と一緒にいると、集まる女子の数は半端ない。人から嫌われるよりは、好かれるほうが格段に良いのかもしれないが。アイドルでもないのに、こうも毎日の
「ごめん。さすがにそれはできないよ。私はさっき失恋したばかりで、すぐに新しい恋なんて無理。それに……私、相楽くんのことは今までクラスメイト以上に見たことがなかったから」「そっか。そうだよな」相楽くんが、しゅんと肩を落とす。「でも、相楽くんの気持ちは嬉しいよ。ありがとう」私は、抱きしめてくれていた相楽くんから、そっと離れる。「……だったら俺、小嶋のクラスメイト以上になれるように頑張るよ。これからは、小嶋の嫌がることもしないから。だから小嶋、まずは俺と友達から始めてみない?」「えっ。わ、私と相楽くんが友達!?」「友達なら、問題ないだろ?ほら、小嶋と栗山さんみたいな感じでさ」私と相
返事を聞くのが怖くて、私は俯きそうになる顔を必死に上げると、陸斗くんの瞳が揺れていた。「……ごめん」まるでハンマーで頭を殴られたような、強いショックを受ける。「僕、今まで希空ちゃんのことは……仲の良い友達だと思っていたから」“ 仲の良い友達 ” それはそれで、嬉しいけれど……そっか。陸斗くんは私のこと、好きではなかったんだ。あまりのショックに、頭がクラクラして。息も、いつもみたいに上手くできなくなる。陸斗くんにポニーテールを可愛いって褒めてもらったり、ブレザーを貸してもらったり。香澄ちゃんにも、脈アリだと思うと言ってもらえて……私は、きっと心のどこかで舞い上がってしまっていた