意地悪なクラスメイトが、最近甘くて困ってます

意地悪なクラスメイトが、最近甘くて困ってます

last updateDernière mise à jour : 2025-05-16
Par:  藤永ゆいかComplété
Langue: Japanese
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希空の通う高校には、アイドル並みに人気の双子がいる。希空は優しい双子の兄・陸斗に片思い中で、意地悪な双子の弟・海斗のことは苦手に感じていた。 ところがある日をキッカケに、希空は海斗から甘く迫られるようになる。「あいつなんかやめて、俺のことを好きになれよ」海斗の突然の変化に戸惑う希空だったが、さらに陸斗からも「希空ちゃんだけは、誰にも渡したくない」と言われてしまい……。双子の男子たちとの、甘くて少し切ない三角関係の行方は……?

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Chapitre 1

第1話

私の通う高校には、アイドル並みに人気の双子の兄弟がいる。

二人だけで、全校女子生徒のハートを鷲掴みにしてるんじゃないかってくらいの人気ぶり。

私、小嶋希空(こじまのあ)も彼らのファンのうちの一人だ。

お兄ちゃんである相楽陸斗(さがらりくと)くんは、少し癖のあるミルクティーブラウンの髪に、タレ目の二重の瞳と目元のほくろがチャームポイント。

弟である相楽海斗(かいと)くんは、染めていないサラサラの黒髪に、涼やかな切れ長の二重の瞳が印象的。

相楽兄弟は、双子でも顔は全然似ていないけど。

兄弟そろって目だけでなく鼻も口も整っていて、少女漫画のヒーローにも負けないくらいのイケメンだ。

おまけに成績も優秀で、陸斗くんはサッカー部、海斗くんはバスケ部で運動神経も抜群。

そして、兄の陸斗くんは私の好きな人でもある。

陸斗くんと初めて話した日のことは、今でも鮮明に覚えている。

あれは、今からちょうど1年前のこと。

高校に入学して間もない、4月のある日の放課後。

私は、担任の先生から授業で回収したクラスメイト全員分のノートを、教室から職員室まで運ぶようにと頼まれた。

「日直でもないのに、なんで私が……」

『小嶋お前、暇そうだから』って、先生ひどくない?!

そりゃあ今後部活に入る予定もないし、今日は学校が終わったら真っ直ぐ家に帰るだけだけど。

入学して早々に雑用を頼まれるなんて、ついてない。

「はぁ……」

クラスメイト40人分のノートを胸の前で抱えると、無意識にため息がこぼれた。

ていうかこれ、けっこう重い。その上、何冊ものノートを胸の前で抱えていると、目元が隠れてしまって足元がおぼつかない。

私は、足元に気をつけながらゆっくりと階段をおりていたのだが。

──ズルッ!

「きゃっ」

ふとした瞬間に足が滑り、体が大きく後ろにのけぞった。

うそ。おっ、落ちる……!そう思ったときだった。

「危ない!」

私は、後ろから誰かに抱きしめられた。

え!?

「キミ、大丈夫?!」

相手の人の両腕が、後ろからしっかりと私の腰にまわされている。

誰かが、助けてくれたんだ。

「はい、ありがとうございま……」

私は、助けてくれた人にお礼を言おうと後ろを振り返った。だけど、最後まで言葉を発することができなかった。

だって相手の男の子が、思わず息を飲むほどきれいな顔立ちをしていたから。︎︎︎︎︎︎

「怪我はない?」

にっこりと微笑む彼。

やわらかそうなミルクティーブラウンの髪が、窓から入ってきた風で揺れる。

「はい。おかげさまで大丈夫です」

「そう。なら良かった」

彼は私から手を放すと、階段に散らばったノートを拾い始める。しばらくそれをぽーっと見ていた私も、慌てて一緒にノートを拾う。

「これ、職員室へ持っていけば良いのかな?」

ノートの束を抱えた彼が、私に尋ねる。

「いや、でも悪いです」

「遠慮することないよ。クラスメイトなんだから、助け合うのは当たり前」

クラスメイト……こんなにもかっこいい人、同じクラスにいたんだ。

まだ入学して数日だから、クラスメイト全員の顔と名前を覚えていなかった私。

そういえば、入学早々女の子にキャーキャー言われている人がいたような気がする。

えーっと、確か名前は……そうだ。相楽くんだっけ。

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第1話
私の通う高校には、アイドル並みに人気の双子の兄弟がいる。二人だけで、全校女子生徒のハートを鷲掴みにしてるんじゃないかってくらいの人気ぶり。私、小嶋希空(こじまのあ)も彼らのファンのうちの一人だ。お兄ちゃんである相楽陸斗(さがらりくと)くんは、少し癖のあるミルクティーブラウンの髪に、タレ目の二重の瞳と目元のほくろがチャームポイント。弟である相楽海斗(かいと)くんは、染めていないサラサラの黒髪に、涼やかな切れ長の二重の瞳が印象的。相楽兄弟は、双子でも顔は全然似ていないけど。兄弟そろって目だけでなく鼻も口も整っていて、少女漫画のヒーローにも負けないくらいのイケメンだ。おまけに成績も優秀で、陸斗くんはサッカー部、海斗くんはバスケ部で運動神経も抜群。そして、兄の陸斗くんは私の好きな人でもある。陸斗くんと初めて話した日のことは、今でも鮮明に覚えている。あれは、今からちょうど1年前のこと。高校に入学して間もない、4月のある日の放課後。私は、担任の先生から授業で回収したクラスメイト全員分のノートを、教室から職員室まで運ぶようにと頼まれた。「日直でもないのに、なんで私が……」『小嶋お前、暇そうだから』って、先生ひどくない?!そりゃあ今後部活に入る予定もないし、今日は学校が終わったら真っ直ぐ家に帰るだけだけど。入学して早々に雑用を頼まれるなんて、ついてない。「はぁ……」クラスメイト40人分のノートを胸の前で抱えると、無意識にため息がこぼれた。ていうかこれ、けっこう重い。その上、何冊ものノートを胸の前で抱えていると、目元が隠れてしまって足元がおぼつかない。私は、足元に気をつけながらゆっくりと階段をおりていたのだが。──ズルッ!「きゃっ」ふとした瞬間に足が滑り、体が大きく後ろにのけぞった。うそ。おっ、落ちる……!そう思ったときだった。「危ない!」私は、後ろから誰かに抱きしめられた。え!?「キミ、大丈夫?!」相手の人の両腕が、後ろからしっかりと私の腰にまわされている。誰かが、助けてくれたんだ。「はい、ありがとうございま……」私は、助けてくれた人にお礼を言おうと後ろを振り返った。だけど、最後まで言葉を発することができなかった。だって相手の男の子が、思わず息を飲むほどきれいな顔立ちをしていたから。︎︎︎︎︎︎「怪我はない?」
last updateDernière mise à jour : 2025-04-03
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第2話
それから彼は、職員室まで一緒にノートを運んでくれた。「ど、どうもありがとう。相楽……くん」「ううん。僕は、ただ当然のことをしただけだよ。またね、小嶋さん」爽やかにヒラヒラと手を振ると、相楽くんは歩いていった。か、かっこいい……ていうか相楽くん、私の名前を覚えててくれたんだ。そんな小さなことすらも嬉しく思いながら、私は遠ざかっていく彼の背中をしばらく見つめていた。◇あの日を境に、相楽くんに恋をしてしまった私。多分、一目惚れだったんだと思う。それからしばらくして、相楽くんは双子だということが判明。あの日、私を助けてくれたのがお兄さんの陸斗くん。そして、海斗くんという弟が隣のクラスにいることを知った。学校中の女の子から大人気の、王子様的存在の陸斗くんに恋をしてしまった。地味な私なんて、到底手の届かない相手だと思っていたのだけど。あのあと、たまたま陸斗くんと同じ図書委員になった私は、委員会の仕事を一緒にするうちに陸斗くんと少しずつ仲良くなっていった。「希空ちゃん、おはよう」「おっ、おはよう。陸斗くん」そして現在、高校2年目の春。陸斗くんのことを想い始めてから、ちょうど1年。今ではお互いのことを、下の名前で呼ぶまでになれた。高校2年生になってクラスが離れてからも、朝学校で会うと、陸斗くんはいつも私に声をかけてくれる。人気者の陸斗くんから声をかけてもらえるなんて、夢みたい。陸斗くんに朝、笑顔で声をかけてもらえるだけで、とても幸せな気持ちになれるんだ。「ねぇ。そういえば、希空ちゃんはいつも髪おろしてるけど。結んだりはしないの?」「え?」ある日突然、私は陸斗くんにそんなことを聞かれた。「一度、髪結んでるところ見てみたいな」それだけ言うと、陸斗くんは友達と一緒に歩いていく。やばい、どうしよう。陸斗くんに『髪結んでるところ見てみたい』って、言われちゃった……!◇ああ、今日もかっこよかったなぁ、陸斗くん。『髪結んでるところ見てみたい』って、言われちゃったし。「おい、小嶋。何さっきからニヤニヤしてるんだよ」「あっ!」現在、数学の授業中。たった今、先生から返してもらったばかりの小テストの答案用紙を、後ろから誰かに取られてしまった。︎︎︎︎︎︎
last updateDernière mise à jour : 2025-04-03
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第4話
整った顔に見つめられ、否応なしにドキドキしていると、相楽くんの手が再びこちらへと伸びてきた。──するっ。「え!?」なぜか相楽くんは、私のポニーテールのヘアゴムを外した。「さっ、相楽くん!?」ちょっと!どうして外すの!?朝から、せっかく頑張って結んだのに。「返して!」私がヘアゴムを取り返そうと手を伸ばすと、ゴムを遠ざけられてしまう。「これは、俺が預かっとく。小嶋、今日からポニーテールにするの禁止な」「はい!?」一方的にそれだけ言うと、相楽くんは席を立ち教室を出ていってしまった。ヘアゴムを取られた上に、ポニーテールにするの禁止って……。どうしてそんなことを言うの?どうして意地悪するの?相楽くん、意味分かんないよ。ほんとに双子?って思ってしまうくらい、陸斗くんとは正反対だ──。◇あれから1週間が経ち、校庭の桜の木は花びらが散り、鮮やかな緑色の葉をつけた。「最近、陸斗くんとはどうなの?」お昼休み。友達の栗山香澄(くりやまかすみ)ちゃんが、玉子焼きを口にしながら聞いてきた。私は今、香澄ちゃんと教室で机を向かい合わせにして、お弁当を食べている。「んー、最近はあまり話せてない……かな」陸斗くんとは、朝会ったら挨拶を交わすくらいで、それ以上の進展はない。それだけでも私は、十分なんだけど。「まぁ、今は陸斗くん隣のクラスだもんね」「うん。でもね、今日の放課後に図書委員会の当番があるから。陸斗くんに会えるんだ」今年も奇跡的に、陸斗くんと同じ図書委員になれた私。隣のクラスの陸斗くんと一緒の当番になったから、会える!「希空、嬉しそうな顔してるね。で?海斗くんのほうはどうなの?」「ぶっ!」香澄ちゃんに聞かれて、私は口の中にあったウインナーを吹き出しそうになってしまった。「なっ、な、なんで相楽くんの名前が出てくるの?!」「あれ?ふたりは、仲良いんじゃなかったの?」「なっ、仲良くなんかないよ」チラッと相楽くんのほうに目をやると、彼は教室の窓際でパンを食べている。「キャー、海斗くーん」「パンを食べてる姿もかっこいい〜」食事中でもファンの子にキャーキャー言われていて、ちょっと迷惑そう。ていうか相楽くんは、出席番号順でたまたま席が私の後ろっていうだけなのに。香澄ちゃん、私たちの一体どこを見て、仲良いなんて思ったの?そもそも相楽くんが
last updateDernière mise à jour : 2025-04-03
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第5話
背後から耳馴染みのある声がし、後ろを振り返ると。……!私の真後ろに、陸斗くんが立っていた。「りっ、陸斗くん!」うそ。いつの間に来ていたの!?「希空ちゃん、ごめんね?来るのが遅くなっちゃって」間近でふわりと清潔感に満ちた香りがして、胸がドキッと跳ねる。「それで、どの本を取りたいの?これ?」スッと背後から書棚へと伸びてきた腕が、私の右の肩をわずかに掠める。「そ、その右隣の本を……」私が言うと、陸斗くんは後ろから私に覆いかぶさるかのような体勢で、書棚から目的の本を抜きとった。り、陸斗くん、距離が近すぎるよ……!お陰で心臓が、ばっくんばっくん鳴ってやばい。「はい、どうぞ」「あっ、ありがとう」「あれ?希空ちゃん、何だか顔が赤いよ?」「えっ!?」「……顔が真っ赤な希空ちゃんも可愛い」陸斗くんに耳元で吐息混じりに囁かれ、背筋がゾクリとする。「ちなみに、僕もその本読んだけど面白かったよ。オススメ」「わあ。陸斗くんのオススメなら、絶対読みたい。さっそく借りて読んでみるね」「うん。それじゃあ、委員会の仕事頑張ろうか」そう言って陸斗くんは、返却された本を手にする。「書棚の高いところは、僕がやるから」「ありがとう」それから私たちは、しばらく黙々と作業をしていたのだけど。「……くしゅん」その沈黙を破ったのは、私のくしゃみだった。今日の日中は夏のように暑かったから、ブレザーを脱いでブラウスのみで作業をしていた私。夕方になって、冷えてきたのかな。「……くしゅんっ」またもや、くしゃみが出てしまった。好きな人のそばでこう何度もくしゃみをするのは、ちょっと恥ずかしいかも。ちなみにブレザーは、教室に置いたままで手元にない。「希空ちゃん。良かったらこれ、着てて」陸斗くんは自分のブレザーを脱ぎ、私の肩にふわりとかけてくれた。「えっ、でも悪いよ。陸斗くんも寒いでしょう?」「僕は平気。希空ちゃんが風邪でもひいたら、大変だから。僕のことは気にしないで?ねっ」陸斗くんの優しさに、胸がキュンと鳴る。「ありがとう、陸斗くん」ここは陸斗くんのお言葉に甘えて、私はブレザーをこのまま借りておくことにした。陸斗くんのブレザーは私にはブカブカだけど、すごく温かい。まるで、陸斗くんに包みこまれているみたい。そして私たちは、図書委員の仕事を再開させた。
last updateDernière mise à jour : 2025-04-07
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last updateDernière mise à jour : 2025-04-09
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第7話
放課後。この日も私は、陸斗くんと一緒に図書委員の当番だった。委員の仕事が終わる頃には、辺りは夕焼け色に染まっていた。図書室の司書の先生に閉館時間になったら、戸締りをするように頼まれていたので、いま私は陸斗くんと図書室で二人きり。今は陸斗くんと分かれて窓の鍵が閉まってるか、ひとつずつ確認しているところ。「希空ちゃん。こっちの窓は、全部OKだよ」「私のほうも大丈夫だった」「それじゃあ鍵閉めて、僕たちも帰ろうか」「うん」図書室の戸締りを終えて、最後に扉の鍵を閉めると、私は陸斗くんと並んで廊下を歩く。そういえば、今日の昼休みにリマちゃんが陸斗くんに告白するって言ってたけど……どうだったんだろう?陸斗くん、OKしたのかな?「そういや希空ちゃん。最近、弟とはどう?」「……」「おーい、希空ちゃん!」「えっ。あっ、はい!」しまった。つい考え込んで、ボーッとしてしまってた。「希空ちゃん、大丈夫?」「うん。大丈夫だよ、ごめんね。それで陸斗くん、話って……」「ああ、うん。希空ちゃん、この前みたいに海斗に、キツく言われたりしてないかなと思って」気にかけてくれるなんて、陸斗くんは優しいな。「もし、海斗にまた何か嫌なこととか言われたら、僕に言ってね?」「ありがとう。最近は大丈夫だよ」相楽くんには、今も変わらずちょっかいを出されることはあるけれど。この前みたいに、キツく睨まれるとかはないから。「そっか。それなら良かった」陸斗くんが、私にニッコリと微笑んでくれる。もし、陸斗くんに彼女ができたら……こんなふうに、笑いかけてもらうことはなくなるのかな。「ああ見えて、海斗も悪気はないだろうからさ。希空ちゃんにはあいつのこと、嫌いにならないでやって欲しいな」「……相楽くんのこと、嫌いにはならないよ」だって相楽くんは、陸斗くんの……私の好きな人の大切な弟だから。「希空ちゃんは優しいね」「いや、そんな。私は、陸斗くんほどでも……」「ありがとう、希空ちゃん」陸斗くんが、私の肩にぽんと手を置く。「そうだ。僕、一昨日発売された東谷先生の新刊を買ったんだけど。面白くて、1日で読んでしまったよ」もし、陸斗くんに彼女ができたら……こんなふうに、二人で並んで歩くこともなくなるのかな?「……希空ちゃん?」急に廊下で立ち止まった私を見て、陸斗くんが首を傾げ
last updateDernière mise à jour : 2025-04-11
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第8話
返事を聞くのが怖くて、私は俯きそうになる顔を必死に上げると、陸斗くんの瞳が揺れていた。「……ごめん」まるでハンマーで頭を殴られたような、強いショックを受ける。「僕、今まで希空ちゃんのことは……仲の良い友達だと思っていたから」“ 仲の良い友達 ” それはそれで、嬉しいけれど……そっか。陸斗くんは私のこと、好きではなかったんだ。あまりのショックに、頭がクラクラして。息も、いつもみたいに上手くできなくなる。陸斗くんにポニーテールを可愛いって褒めてもらったり、ブレザーを貸してもらったり。香澄ちゃんにも、脈アリだと思うと言ってもらえて……私は、きっと心のどこかで舞い上がってしまっていたんだ。陸斗くんが私を好きだなんて保証は、どこにもなかったのに。なんで、こんな勢いで先走ってしまったのだろう。「……っ」こうなったのも、自業自得なのに。視界が涙で、だんだんとぼやけていく。「希空ちゃん、本当にごめんね」「ううん。自分の気持ちを、伝えたかっただけだから。聞いてくれてありがとう」私はこぼれそうになる涙を必死に堪えて、何とか言い切る。「あの、陸斗くん。私ひとりで図書室の鍵、職員室まで返しにいくから。先に帰ってて」これ以上、陸斗くんと二人きりでいるのは辛くて。私は陸斗くんの手から鍵を取ると、職員室へと向かって駆け出した。◇職員室に鍵を返却したあと、廊下をとぼとぼと歩く私の目からは、ついに堪えていた涙が溢れ出す。「っうう」私、失恋したんだ。陸斗くんに、振られたんだ。私は人気のない廊下の片隅に、力なくしゃがみ込む。「っく、う……っ」さっきから、涙がポロポロと溢れて止まらない。私は、両手で泣き顔を覆う。好きだった。去年、陸斗くんに学校の階段で助けてもらったあの日からずっと……私は、あなたのことが好きだったのに。「振られちゃったよ……っ」『希空ちゃん!おはよう』こんなときでも思い出すのは、陸斗くんの優しい笑顔。好き。たとえ振られても、陸斗くんのことが私はまだ好き。この1年間ずっと、陸斗くんのことだけを想ってきたんだもん。好きって気持ちは、振られたからってそんなに簡単にはなくならないよ。「……小嶋?」突然低い声で名前を呼ばれ、私が顔を上げると。「……っ、相楽くん……」目の前には、部活終わりなのかスポーツバッグを肩にかけた、陸斗
last updateDernière mise à jour : 2025-04-13
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第9話
私は思わず、相楽くんをじっと見てしまう。「す、好きな女って……?」もしかして私の他にも泣いている女の子がいるのかと、思わずキョロキョロと辺りを見回す私。「ばーか。どう考えても小嶋しかいねぇだろうが」頭の上にコツンと、優しいゲンコツが降ってきた。「う、うそ。相楽くんが、私のことを好きだなんて……冗談だよね?」「冗談じゃない」「『嫌い』の間違いじゃなくて!?」「違う。俺は、小嶋のことが好きだ」何これ。まさかの相楽くんから、こんな突然の告白なんて。私はびっくりし過ぎて、涙も引っ込んでしまった。「いつもお前に意地悪していたくせに。こんな突然、好きだとか言っても信じてもらえねえよな」少し悲しげに笑う相楽くんが、私の頬を伝う涙を指で優しく拭ってくれる。「俺がよく小嶋に意地悪していたのは、陸斗のことが好きなお前に、俺のことを見て欲しかったからだよ」そうだったの?!「ていうか、相楽くんに私が陸斗くんを好きだってことは、一度も話していないのに……」どうして分かったんだろう。「そんなの、いつも小嶋を見てれば分かるよ」「相楽く……っ」すると、相楽くんが戸惑う私のことを正面からぎゅっと力強く抱きしめてくる。「それで?小嶋がこんなにも泣いてたってことは……もしかして、陸斗に告白して振られたとか?」「!」ず、図星だ。相楽くん、すごい。分かるってことは、まさか本当に今まで私のことを見ていてくれたの?「……そうだよ。相楽くんの言うとおり。私、陸斗くんに告白して振られたの……っ」思い出したら、何だかまた泣けてきた。「そうだったんだ。小嶋、頑張って自分の気持ちを陸斗に伝えたんだな」てっきり、いつもみたいにバカにされるのかと思ったら……。「よくやったな、小嶋」相楽くんは微笑むと、私の背中をトントンと手で優しく叩いてくれた。「……っ、ごめん。いつまでもこうして泣いてたらダメだよね。相楽くんの制服が、涙で濡れちゃう」そう言い、私は彼から離れようとするが。「……いいよ」頭の後ろに手を添えられ、相楽くんに再び抱き寄せられる。「俺の胸で良ければ貸すから。今日は、泣きたいだけ泣けば良い」「っうう」私を抱きしめてくれる相楽くんは、すごく温かくて。声も言葉も、いつもよりも優しくて。こんなんじゃ、調子狂っちゃうよ。「なぁ、小嶋。こんなときに言う
last updateDernière mise à jour : 2025-04-15
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第10話
「ごめん。さすがにそれはできないよ。私はさっき失恋したばかりで、すぐに新しい恋なんて無理。それに……私、相楽くんのことは今までクラスメイト以上に見たことがなかったから」「そっか。そうだよな」相楽くんが、しゅんと肩を落とす。「でも、相楽くんの気持ちは嬉しいよ。ありがとう」私は、抱きしめてくれていた相楽くんから、そっと離れる。「……だったら俺、小嶋のクラスメイト以上になれるように頑張るよ。これからは、小嶋の嫌がることもしないから。だから小嶋、まずは俺と友達から始めてみない?」「えっ。わ、私と相楽くんが友達!?」「友達なら、問題ないだろ?ほら、小嶋と栗山さんみたいな感じでさ」私と相楽くんが、香澄ちゃんと私みたいな関係に……。えっ。ということは、相楽くんと私が一緒にランチしたり、恋バナをするってこと?なんか、全く想像できないんだけど。「でも、まあ……友達なら良いかな」「ほんとか!?小嶋に断られたら、どうしようかと思ったよ。ありがとう!」こんなにもニコニコしている相楽くんは、初めて見たかもしれない。「それじゃあ今日は、小嶋が失恋した日じゃなくて。俺と友達になった日だな」「友達に、なった日?」「ああ。だって、今日という日を思い出すたびに、いちいち失恋のことが頭を過ぎるのも嫌だろ?」言われてみれば、確かに。「だから、陸斗じゃなくてこれからは俺のことを思い出してくれよな?今日5月✕✕日は、俺と小嶋の友達になった記念すべき日。つまり、俺の日だ」「……ぷっ。俺の日って、何?」腰に手を添えて、ドヤ顔で言う相楽くんがおかしくて。私は思わず、吹き出してしまった。「まさか相楽くんが、こんなことを言う人だなんて思わなかったよ。ハハッ」「希空、やっと笑ったな。やっぱりお前は泣き顔よりも、笑った顔が一番可愛いよ」か、可愛いって。相楽くんに突然そんな甘いことを言われると、反応に困るんだけど。それに相楽くん、今さらっと私のことを『小嶋』じゃなく『希空』って……。家族以外の男の人に、名前を呼び捨てで呼ばれたことがないから照れる。「友達になったなら、俺はこれからお前のことは希空って呼ぶから。希空も海斗って呼んでよ」「えっ?」「陸斗のことだけ名前で呼んで、俺は苗字でズルいって思ってたんだよ。同じ双子なのにって」相楽くんが、少し不機嫌そうに言う。「さっ
last updateDernière mise à jour : 2025-04-17
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