Semua Bab 婚約破棄された悪役令嬢は、聖母になりました!?: Bab 21 - Bab 30

55 Bab

第21話。

 どうしてエルザをママって呼ぶのか分からず戸惑ってしまう。しかし何だろうか……。 エルザ驚いたが、嫌だとは思わなかった。むしろ心の中があたたかくなり幸せな気持ちにさせてくれる。「そうよ……ママよ」 エルザは、そう応えた。もしかして、この子はお腹の子ではないかと思えてならない。だってママって言ったし。 エルザはフフッと笑ってみせる。すると遠くから声が聞こえてきた。『こら戻って来い。クリスティーナ』(えっ? クリスティーナ?) するとハッと目を覚ました。あれは夢だったのだろうか?  気づくとエルザはベッドの上で眠っていた。するとルルとビビアンが慌てて、こちらに来る。「エルザ様。目を覚まされましたか!?」「良かったですわ。3日間も高熱を出して、ずっと寝込んでいたのですよ」「3日間も熱を出して?」 やっぱり夢だったのだろう。なら、婚約破棄も夢だったのだろうか? 何処までが夢だったのか記憶が曖昧だった。 「あの声は誰だったのかしら? 低く大人の男性だったけど、知らない声だったわ。それに、あの赤ん坊も……) 不思議に思いながら起き上がろうとするが高熱を出したせいか、ふらつく。「急に起き上がったりしたら危ないですわ」「ねえ、レイヴァン様は? 婚約破棄なんて、していないわよね?」「それは……」 すると廊下から、バタバタと誰かがこちらに来る足音がした。そして勢いよく、ドアが開かれる。「エルザが目を覚ましたって、本当か!?」「れ、レイヴァン様!?」 エルザは驚いて彼の名前を呼んだ。そうしたら駆け寄り、エルザをギュッと抱き締めるレイヴァン。「良かった……無事で」 何故、抱き締められているのだろうか? 急に抱き締められたのでエルザは、さらに驚いてしまった。「あ、あの……レイヴァン様?」 ドキドキしながらもレイヴァンを見ると、真っ直ぐとエルザを見てくれた。やっぱりアレは、夢だったのだろうか? どう見ても、婚約破棄した後の対応とは思えない。いや、むしろ穏やかになっているような気がする。 前は気遣ってくれたが、こうやって抱く以外は抱き締めてはくれなかった。冷たい表情でもない。「レイヴァン様……私達はどのような関係なのでしょうか? 婚約破棄なんて……していないですわよね?」 夢か現実か分からない記憶をハッキリさせるために尋ねた。聞く
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-14
Baca selengkapnya

第22話・隠された違和感。

 それだけ言い残すと、レイヴァンは寝室から出て行ってしまった。エルザは呼び止めることが出来ずに、ボー然とする。また来ると言ってはいたが。それはつまり、またお会いして下さるって解釈でいいのだろうか? 婚約破棄して、追放された身。しかし、見放されたわけではない様子だ。(何故……? 嫌われたはずの私に? それにあの手の傷。戒めって言っていたけど、何のために?) チラッとトムソンを見る。すると悲しそうな表情を見せてきた。「殿下は誰よりもエルザ様を大切にしております。何か事情があるのでしょう」「事情……何の?」「そこまでは私にも。ですが私達に仰っていました。お腹の子は、紛れもなく次期皇太子になる子だと。エルザ様も、お腹の子もそのように敬えと」「レイヴァン様が?」 辻妻が合うようで合わない彼の行動。試しているのだろうか? いや、それにしたら不自然だ。感情と嚙み合っていないというか……。 それに、お腹の子を次期皇太子と言った。(あれ? でも、どうしてレイヴァン様は『皇太子』と言ったのかしら?) まだ産まれてもいないから性別は分からないはずだ。女の子の可能性もある。なのに、何故男の子だと思ったのだろうか? 頭の中が困惑してくる。レイヴァンは産まれてくるなら、能力を受け継いでいる女の子の方がいいはずだ。なのにどうして……? その日は頭痛が酷くなり、それ以上考えられなかった。 しかし、それから1ヶ月後。違和感は、さらに膨らませるばかりだった。 あの日からレイヴァンは、まだお見えになっていないのだが贈り物が届くように。装飾品はもちろんなのだが、花束や本、有名デザイナーがデザインしたドレスまで。「エルザ様。こちら殿下からの贈り物でございます。有名デザイナーのルモンド・ドーランがデザインしたドレスでございます」「こちらは、そのドレスに合った宝石と靴でございます」「えぇっ!?」 ルモンド・ドーランって、あのなかなか予約が取れないと有名なデザイナーだ。本人も職人気質で気に入らないと断るとも言われている。皇族の依頼なら断らないだろうけど……。「とても素敵なデザインなんですよ。是非とも着替えてみて下さいませ」「えっ……えぇ、そうね」 目をキラキラさせてルル達が言ってくるので、言われるがまま着替えてみる。「まあ、素敵ですわ。華やかの上でエレガント。まさ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-14
Baca selengkapnya

第23話

 本当にまた訪問してくれたようだ。ど、どうしよう。 この前は熱も出て目覚めたばかりだったが、今度は、ちゃんとおもてなしをしないといけない。 それに、どんな顔で会えばいいのだろうか。婚約破棄されたばかりなのに。「丁度いいではありませんか。殿下にそのドレス姿を見せてあげたら、どうでしょうか?」「えっ……この姿を!?」 ビビアンの言葉に驚く。プレゼントされたばかりのドレスを着ていくのは、さすがに恥ずかしい。パーティーではないのに。「はい。せっかくプレゼントして頂いたモノですもの。見せて殿下を喜ばせてあげて下さいませ」「で、でも。この姿では派手ではないかしら?」「そんなころはありませんわ。とてもお美しいです。それに、どのみち殿下にお会いするのなら着替えないといけませんから」 そう言われると、確かにお会いするなら着替え直さないといけない。だとしたら、変な格好を見せるわけにはいかない。 恥ずかしかったが、結局レイヴァンから頂いたドレスをお披露目することになった。 ビビアン達は気合を入れて支度を手伝ってくれた。 待たせてある応接間に向かう。確かにレイヴァンがソファーに座り、待っていていた。「あ、あの……お待たせして申し訳ございません。レイヴァン皇太子殿下にご挨拶を申し上げます」 エルザは慌ててドレスの裾を上げて皇族式の挨拶をする。深々と頭を下げる。「頭を上げろ。今まで通りでいい」「し、しかし」 そういう訳にはいかない。婚約破棄された身。しかも幽閉されたのだ。もうサファード公爵家の肩書きなんて、何の意味も持たない。それは平民として格下げされられたのと同じ扱いのはずだ。恐れ多くて顔を上げるのも躊躇ってしまう。 すると、レイヴァンはハァッ……と深いため息を吐いてきた。 そのため息にビクッと反応する。もしかして怒らしてしまったのだろうか? レイヴァンは立ち上がると、徐にエルザのところまで来る。「あ、あの……レイヴァン様」 もしかして怒らしてしまったのだろうか? ガタガタと震えていると「とにかく早く座れ。お腹には子供も居るのだ。立ちっぱなしは体に障る」「あ、はい」 レイヴァンはそう言うと、強引にソファーに座らせられる。もしかして、お腹の子のために? 胸がズキッと余計に痛みだした。レイヴァンはエルザを座らせた後、向かい側に座る。 すると
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-04
Baca selengkapnya

第24話。

 まさかレアチーズケーキまで用意してくれるとは思わずエルザは驚いてしまった。 しかし嬉しいと思った。社交界に出て話題を聞いていたら、食べたくなっただろう。実際に見ても、話題になるのも頷ける。「食べてみたらどうだ?」「は、はい。ではお言葉に甘えていただきます」 レイヴァンがそう言うので、早速食べてみることに。ケーキを一口食べてみる。(あ、美味しい) 甘さも控えめでなめらか。全体に広がる上品な味つけだった。今回はオレンジジュースだったが、コーヒーや紅茶にもよく合うだろう。「美味しいです。甘さも控えめで」「そうか……なら、また買ってこよう」 レイヴァンは、そう言いながらクスッと微笑んだ。(今……笑った!?) エルザを抱く時しか笑ってくれないのに。その笑いでさえ、優しい微笑みとは程遠かった。なのに……。「どうした? 私の顔に何かついているのか?」「いえ……何もありませんわ」 すぐに素顔になるレイヴァンを見て、気のせいかと思い直したが。 しかし、レイヴァンの変化はそれだけではなかった。忙しい引き継ぎや公務の仕事があるはずなのに、エルザの住む屋敷に度々訪れるようになっていた。 頻繫ではないが、わざわざ時間を空けて来てくれる。無理な時は手紙を送ってくれた。その度に、手土産と貴族の令嬢達が流行っているモノや話題を教えてくれる。 そのためか、公の場に出て行かなくても話題に困らないぐらいには情報が入ってきた。それだけではない。 レイヴァンに対しても変化が。エルザと一緒に居る時でも穏やかな表情を見せてくれるようになっていた。 元々『ホワイトキャッスル』の中ではエルザに気遣ってくれてはいたが、何というか隠さないようになってきたと思う。 お腹も6ヶ月頃になると大きくなり、動くようになってきた。「あ、今足で蹴飛ばしてきましたわ」「えっ? 本当か?」 レイヴァンに教えると、お腹に耳を当ててきた。するとポコッと勢いよくお腹の中で蹴飛ばしてくる。「あ、本当だな。威勢がいい」「えぇ、本当に。元気な赤ちゃんみたいです」 エルザはクスクスと笑う。最初は何を考えているのか分からず、警戒したりしていたが、一緒に過ごしている内に、それが当たり前のようになっていく。「まあ、威勢がいいのは足だけじゃないけどな」「えっ? 今なんて」「……いや、何でもない」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-04
Baca selengkapnya

第25話。

 子供の頃のレイヴァンを思い出す。 今と同じでクールで冷たい印象はあったが、エルザには優しかった。たまに見せてくれる微笑みに胸を高鳴らせたものだ。 レイナが現れなかったら、自分達は……今頃は結婚の準備をしていたかもしれない。 婚約破棄されたのだから、誰かが婚約者にならなければいけないだろう。今なら聖女であるレイナがなってもおかしくはない。(レイナ様を皇妃を迎えたら、自分はどうなるのだろう? 今の状態だと側室? それとも妾?)そう考えていると、一瞬ある事が頭をよぎる。(まさか……お腹の子だけを奪う気では? 優しくするのは、お腹の子が居るからで、産まれたらまだ見捨てられるのでは?) レイヴァンに限って、そんなことはないと思うのだが、一度裏切られている。 次も裏切られないとは限らない。もしそうなら……。 エルザはレイヴァンを信じたいのに。その優しさが怖くて胸が痛い……。 その夜。モヤモヤした気持ちを隠したまま眠りにつく。 そうしたら、またあの夢を見る。真っ白で何もない空間。そこに、エルザは1人で立っていた。「ここって……あの時の?」 するとまた、空中に黄金に輝く物体が浮かんでいた。まさか!? 近くに寄って見ると、あの可愛らしい不思議な女の子の赤ん坊だった。また会えるなんて。 エルザの手のひらまで降りてくると、それを受け止める。白いおくるみに包まれた女の子は、ニコニコと笑っている。「また会いに来てくれたの?」「う~きゃう。まんま」 上機嫌に雄叫びを上げながら、こちらに手を伸ばしてきた。可愛らしい。「ねぇ……あなた。もしかして」 エルザが言葉を出そうとする。その時だった。他にも黄金に輝き出すと、人の形に変わっていく。「クリスティーナ。全くお前は……早くこちらに来なさい」「キャハッ。に~に」 姿を現せたのは、白銀の長い髪と碧眼が印象的なとても美しい青年だった。(えっ? にいにって……? 彼はこの子のお兄様なの?) 彼は、白い騎士の制服を着ていた。マントは、裏地が青になっている。しかし顔立ちは、どことなくレイヴァンに似ている気がする。「あなたは……誰?」 何故だろう。全くの初対面なのだが、何故か懐かしく感じる。 彼は、何も答えずに女の子を抱きかかえた。女の子は離れたくないのか、ぐずりだした。「えっ?」 女の子の目がキラ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-04
Baca selengkapnya

第26話。

 しかし、その頃、レイヴァンはレイナと一緒に居た。優しくレイナを抱き締める。「レイヴァン様。私は早く皇妃教育を終わらせて、本物の皇妃になりたいです~。どうして周りは教養がなってないと言って、私を虐めますの。私は聖女なのに。聖女は敬うものでしょ? それなのに酷いんです~」 目をウルウルさせてレイヴァンを見つめるレイナ。「レイラ、分かっておくれ。皇妃になるには教養は必須だ。それに、それを終わらせないと、父……皇帝陛下も許してくれないだろう。私も、まだ皇帝としての権力がないから、それには逆らえない」「ですが……どうにかなりませんか? このままだと私、皇后どころか皇妃にもなれませんわ」 なだめるレイヴァンとは対照的にレイナは頬を膨らませていた。その姿すら可憐で可愛らしく見える。その姿にレイヴァンは苦笑いする。「心配することはないよ……レイナ。そのために秘策がある。何度か言っただろう? 権力をひっくり返す方法があるって。もうすぐエルザに子供が産まれる。産まれた子が能力を受け継ぐ女の子なら、奪い取り君が母親として育てればいい。強い能力の子が居れば私の権力になる。そうなれば誰も文句は言えない」「でも、男の子だったらどうするのです? 自分の子じゃないのに、その子を次期皇太子にしたくありませんわ。それに、あんな怖い方とレイヴァン様が一緒に居るなんて耐えられません」 レイナは納得がいかないのか反論する。レイヴァンは、そんなレイナを見ながら、ため息を吐いた。「これも何度か言っているがサファード一族の能力が欲しくて、父からの命令で仕方がなく従ったことだ。今だと大事な時期だから、せめて産まれる間は、誠意を持って接しろと言われてしまった。まさか断罪した後に、妊娠が発覚するとは思わなかったが。こちらの非を認めてしまったら、君の立場も危うい。相手も相手だから父もお怒りだ。分かっておくれ」「でも……」「いい方法ならある。2人共殺せばいい。難産で死んだと言っても誰も怪しまないさ。男で邪魔なら消せばいい。しかし、まだ女の子か男の子か分からないデリケートな状態だ。警備も厳しくなっている。下手に刺激して流産にでもなったら計画がパーになってしまう。そうなったら今までの努力が無駄になる。いいかい? 子供が産まれるまでは大人しく耐えておくれ。賢い君ならできるよな?」 レイヴァンは、ニ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-04
Baca selengkapnya

第27話。・運命の歯車が動き出す。

 そして月日が過ぎ、出産の時期になった。エルザの陣痛が始まると、邸宅の侍女達が慌てて支度をしていた。「早くお湯を持ってきて。タオルも、もっとたくさん」 助産婦に手伝ってもらいながら出産に備える。痛みになる短くなってきていく。 エルザは、舌を嚙まないように口をタオルでくわえて必死に耐える。「エルザ様。そのまま……はい、思いっきり力んで下さい」「くぅ~っ」 淑女とは思えないほどの声で力む。恥じらいなんて気にしている場合ではない。 必死に痛みとの戦いだった。一度息を整えて、また力む。その繰り返し。「そう……もう少し。エルザ様、赤ん坊の頭が見えてきましたわ」「んんっ……ぐっ~」 意識が遠退きそうになるが、その度に助産婦のエマに起こされ、力を入れ直す。 そして何時間の末……赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。「おぎゃあ、おぎゃあ」「う……産まれた?」 汗をかいてぼんやりする意識の中、確かに赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。「おめでとうございます。元気な男の子ですよ」「えっ? 男の子……?」 エマが取り上げると、エルザのところに来て、一緒のベッドに横に寝かせてくれた。確かに男の子だった。 皇族特有の白銀の髪。顔立ちは、レイヴァンに似ており整っていた。レイヴァンの言う通り男の子。しかし……あれ? この子は今日私が産み、初めて顔を見たはずなのに見覚えがあるような気がする。 「どうして……?」  エルザは、そう呟くと赤ん坊が目を開けた。 エルザと同じ碧眼。その時だった。赤ん坊の目が七色に光り出したのだ。「えっ? 何で……!?」 サファード一族の女性ではないのに、どうして能力が!? 神々しい光りでオーラを輝かせながら、クスッと微笑んできた。その微笑みは、どこか余裕の表情で妖艶な雰囲気だった。ドキッと心臓が高鳴る。(えっ……笑った!?) すると、その時だった。バタバタと誰かが入ってくる。「子供が産まれたって本当か!?」「れ、レイヴァン様……」 レイヴァンが、わざわざ子供が産まれると分かると、駆けつけてくれた。(あっ……この場合はどうなるのだろう。男の子だったが、私と同じ能力を持っている。そうなると、どう扱われるのだろう?) 何よりレイヴァンは、何を考えているのだろうか。 エルザは戸惑っていると、レイヴァンは息を整えながらベッドの方
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-04
Baca selengkapnya

第28話。

(そ、そうだわ。私と同じ能力を持つ女の子に会ったのだったわ!?) 綺麗な青年に記憶を消されてしまったはずだったが。「れ、レイヴァン様。私と同じ能力を持つ赤ん坊の女の子に会ったのです。夢の中で」 思わず起き上がるとレイヴァンにそう告げる。夢のことなのに、会ったと話すのもおかしな話だが。しかし息子を見ると夢ではない気がしてならない。 何より、あの時に一緒に居たレイヴァン似の青年は息子にそっくりだったからだ。 顔だけではない。あの低く透き通るような声まで全く同じ。『それは、クリスティーナのことだろう』 そうしたら息子が、はっきりとそう言ってきた。 やっぱり、あの女の子はクリスティーナだったのだろう。 青年が女の子のことを、そう呼んでいた。だとすると、やはりあの青年は息子なの?「あなた……夢の中で会った人よね?」『……そうだ。だが、あそこは夢の世界ではない。現世と天界の堺目……無の空間だ』「無の空間?」『そう……現世と天界の狭間にある真っ白な世界。どうやらクリスティーナが、会いたさに勝手に母上の魂を引き抜き、その世界に連れて来てしまったようだ』「私を!? じゃあ、私があそこに居たのは、あの女の子のせいなの?」 不思議な女の子だった。「あの子……誰なの? それに……あなたは一体?」 エルザは、思い切って質問をしてみる。もしかしてサファード一族と関係があるの? そうしたらレイヴァンは、徐に息子をエルザが見えるように抱く。 息子はクスッと微笑んだ。その微笑みは、赤ん坊とは思えないほどの美しさがあった。『その前に私のことを知る必要がある。私の名はクリス。時の神であり、我が君主であるクロノス様の居るのが天界。そこにある何処の時空も繋ぐ『時の扉』の門番をしている者だ』(天界の扉の門番!? しかも時の神ですって……?) クリスという名の息子は、凄いことを告げてきた。クロノスと言ったら、我が国の守護神であり、サファード一族を加護している神だ。『そして、母上に会った赤子はクリスティーナ。クロノス様の能力を濃く引き継ぎ将来、時の神の後継者になる、お方だ』「時の神の後継者!? あの小さくて可愛らしい女の子が?」 門番にも驚かされるが、本当にその能力が受け継がれているのだろうか? この子のことを疑っているわけではないが、半信半疑だった。『まだ疑
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-06
Baca selengkapnya

第29話。

『私が先に産まれたのは我が君主・クロノス様の命令で兄として彼女を守り、暴走気味な妹を抑止させるため。そして、今現在起こっている母上暗殺計画から守り、無事にクリスティーナを産んでもらうためでもある』「えっ? どういうこと!? 私の暗殺計画って、なんですの?」 クリスの言葉に衝撃を受けた。暗殺計画って……命を狙われているのだろうか? するとレイヴァンは複雑な表情をしながら重たい口を開いた。「そこからは私が話す。君の命を狙っているのは聖皇庁だ」「聖皇庁ですって!?」 聖皇庁って……聖女のレイナが居るところだ。そこには神を信仰している教団で、もっとも偉いのが聖皇猊下。「待って。何で、そんな神に使える教団が私の命を狙うというの?」「狙う理由は、これ以上皇族の影響力を抑えるため。サファード一族との子供が産まれたら、その影響は国どころか世界を動かすほど大きい。聖皇庁はそれを恐れている。聖皇庁は古くから皇族とも関わっていたせいで、サファード一族の能力を知っている。そして、彼らは新しい力を手に入れた。転生者の聖女・レイナだ。しかし彼女は本物の聖女なんかではない」「えっ? レイナ様が本物の聖女じゃないって、どういうことですか!?」 でも彼女には、癒すことができる治癒能力があるはずでは?「……彼女の持っている能力は治癒ではなく『魅了』だ。人を惑わし、判断力を鈍らす。そのせいで、たくさんの人達が被害に遭っている。私も……本来その1人だった」 申し訳なさそうな表情をするレイヴァン。(じゃあ、本心ではなかったの……?) レイナの能力が魅了だなんて驚きだった。なら、どうしてそんな噓を? するとクリスが、また口を開いた。『私が『魅了』にかかった父上の能力を解いて、協力してもらっていた。私が産まれ、マナが溜まるまで。母上を安全な場所に避難させ、身の安全を守ってほしいと。この計画も全て私の指示だ』「全部……あなたの指示だったの!?」 婚約破棄も、あの冷たい表情や言葉も全部自分を守るためにしていたとは。エルザは驚きを隠せなかった。 しかし今までのレイヴァンの言動を思い出す。たまに言葉と行動が矛盾しているのは、レイヴァンの本心が混ざっていたからだったのだろう。だから冷たくても、あんなに気遣ってくれていた。 やっと、その意味を理解する。その原因が実の息子だったとは驚
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-06
Baca selengkapnya

第30話。

「喧嘩はおやめください。せっかく誕生して下さったのですから……ねっ?」 ニコッと微笑みながら止める。すると、それ以上言わなくなる。 どうやら、喧嘩は収まってくれたようだ。するとムスッとしていたレイヴァン。「とりあえず無事に出産が終わったのならいい。私は仕事が残っているから帰る。エルザも出産したばかりで休みたいだろうからな。また改めて謝罪に来よう」「レイヴァン様……」 レイヴァンは、それだけ言うと寝室から出て行ってしまった。残されたのはエルザとクリスだけだった。 怒ってはいたが、あの言葉に噓があるようには見えなかった。レイヴァンの本音を初めて聞いたような気がする。 もともとあまり感情を表に出す人ではなかったが、気遣いができる優しい方だ。 レイナが来てからガラリと変わり、感情を表に出すようになったと思った。どうやらエルザの勘違いだったようだが。 今でもエルザのことを考えて、陰ながら守ってくれている。本音を隠して、ずっと守ろうとしてくれたことを知り、エルザは胸が熱くなった。 目尻からじわりと涙が溢れてくる。「今のレイヴァン様の言葉……本当なんですよね?」 もう疑ってはいないが、もう一度クリスに尋ねてみる。『そうだ。父上の言葉は全て事実。婚約破棄も、あの女を油断させるための手段に過ぎない』「どうしてそんなことを前もって話してくれなかったのですか?」 あの時は本当に傷ついた。婚約破棄もだが、冷たい言葉は今でも思い出しただけで涙が出そうなる。『……母上にはすまないとは思っているが、仕方がないことだ。下手に、このことを知られたら聖皇庁はどんな手を使ってでも、母上の出産を妨害しただろう。現にスパイをこの屋敷の送り込んだぐらいだからな」「えっ? スパイを!?」『偽聖女が送り込んだスパイだ。メイドとして潜り込み『虹色のダイヤ』を盗み、刺客に渡し母上に濡れ衣を着せた。母の妊娠のことも、その者から聞いたようだ』「えっ!? じゃあ『虹色のダイヤ』が無くなった原因はメイドが!?」 道理で刺客に指輪に渡った訳だ。不思議には思っていた。 屋敷の周りには警備をする護衛騎士は居るのに、どうやって盗み出したのか。外からの盗みに入ったのなら誰かに気づかれるはずだし。護衛を欺くような凄腕のプロか……またまた内部の犯行か。でも内部だとは思いたくはなかった。この屋敷
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-06
Baca selengkapnya
Sebelumnya
123456
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status