それから1年後。クリスは歩けるまでに成長する。言葉も少しずつ口で話せるようになっていた。 レイヴァンも時間を作っては、時々邸宅に来てくれてクリスの成長を一緒に見守ってくれるように。今だと、歩く練習をしていた。「ほら、もう少し足を上げろ」「うっ……うるちゃい」 文句を言いながらもレイヴァンに両手を持ってもらいながら、一歩ずつ歩いて行く。ただ時々火花を散らしてはいるが。 こう見ると歩く練習というよりもただの決闘にも見えなくもない。この2人は仲がいいのか、悪いのか分からない。 エルザはお茶をしながら、その光景を微笑ましく見ていた。しばらくするとクリスを抱っこして、こちらに戻ってきた。「練習は、もうよろしいのですか?」「あぁ、少し休憩しよう。まったく……やっと歩けるまでになった」 はぁっ……とため息を吐きながらクリスをエルザに預けると向かい側の椅子に座った。 エルザはクリスにオレンジジュースを飲ませる。「慌てなくても、ちゃんと成長しておりますわ」「いや、慌てる必要はある。先日父の容態が急変したからな」「えっ……陛下が!?」 皇帝陛下は体調を崩していた。そのため、世代交代を囁かれていると侍女から聞いていたが。そんなに悪くなっていたとは。「今は安定してベッドで安静をしているから心配はないが、医師からは長くないと言われている。そろそろ大臣達からも即位をするのは早い方がいいと言われているしな」「……そうなのですか」 そうなると余計に後継者争いが激化する。今ではレイヴァンの皇帝にするのを賛成派と反対派で分かれているらしい。 その原因は現在の皇帝陛下がレイヴァンを皇太子にするのを渋っていると噂されているからだ。その原因の1つは皇妃の育成だった。 強い権力を持つサファード公爵家の婚約は解消され、今の婚約者は聖女のレイナだ。 しかし皇妃教育が上手く進んでいない一方。 皇帝陛下がもともと転生者で爵位を持たないレイナを皇妃と認めるには皇妃教育を終了させてからと宣言したのが問題になっていた。 周りにはレイナを崇拝する信者達や聖皇丁がそれを批判し、早く皇妃にしろと騒いでいるらしい。 それに対して帝国がそんなやり方では他国に示しがつかないと反対する者まで現れ分裂してしまったとか。 もう国のほとんどがレイナについているのだと思っていたエルザは、その
Terakhir Diperbarui : 2025-05-10 Baca selengkapnya