出産から1ヶ月後。あれから体の体調が戻り、ベッドから起きて少し出歩けるまでに回復する。レイヴァンは、また来ると言っていたが、忙しくてなかなかこちらに来られない様子。クリスからの能力で教えてもらった。彼は前世で番人の時に使っていた両手サイズの水晶玉を使い、周りの様子を観察することができるらしい。これは時の神・クロノスから頂いたそうだ。 エルザにも見せてもらったが、確かに水晶玉の中を覗くと、見たいと思っていた人物を見ることが簡単にできた。不思議な能力だ。 この国も魔法の力は発達しているが、水晶玉を使うことができる者はいない。それだけに、まだ生まれて幼いクリスが扱えることには驚かされる。まさに天才だろう。 本人は番人でもあり、前世の記憶を持っているので当たり前だと言っていたが。 クリスは、すくすく育ってはいるが、どうやら他の子と違い成長速度が驚くほど異常に早い。今では、すでに首が座っていた。しかし、まだ赤ん坊なのでミルクしか飲めない。だが、ミルクは口に合わないようで断られる。なら母乳はどうだと思い、乳母になったケイリー夫人に母乳を与えてもらおうとするが、見ず知らずの女性のは飲めないと拒否された。なかなか難しい性格のようだ。なら母親の私ならどうだと思い、母乳を与えてみると、それは渋々ながらも飲んでくれた。やっと口をつけてくれてエルザはホッと胸を撫で下ろす。そして今日もクリスに母乳を与えていると、ケイリー夫人は申し訳なさそうにする。「エルザ様。すみません……私が頼りないばかりに」「いいのよ。私も母の母乳で育ったから新鮮だわ」 貴族や皇族は、ほとんど乳母の手で育てられるのが一般的だ。親の役目は、あくまでも子供の方向性を決め、それを与えるのみ。 エルザの両親は可愛がり、なるべく自分達で育てようとしてくれた。そのせいで、自分で母乳を与えることには別に抵抗はない。 クリスを見ると、ゴクゴクと一生懸命に飲んでいる。番人の時は生命体のため、お腹は空いたことはないと言っていたが、今は人間として生を受けている。 生きるためには食事は大切なので、この機に少しでも栄養を与えたいところだ。こうやって見ると、可愛らしい。 クリスのことは、すでにここに使用人達には話しておいた。ハンナはいなくなり、周りには敵がいないため信用して話した。 大変驚いてはいたが、それより
Last Updated : 2025-05-07 Read more