「ただいま帰りました」「おかえり、紅音」 あっと言う間に時は過ぎ、離婚まで残り七ヶ月となった。 時間の流れは残酷だ。一日一日が本当に早くて、ため息が出そうになる。 「今日は、ちょっと肌寒くなってきたのでお鍋にしますね」「お、いいな」 季節は秋になり、秋の匂いがする。木々の葉は落ち、イチョウが咲く頃。もう少しもすれば、紅葉が見られるだろうな……。 そっか……。もうそんな季節になってきたんだ。「……紅音?どうした?」「え?……あ、いえ、何でもないです」 そっか、残り七ヶ月しかないんだな……。爽太さんと夫婦でいられるのは。 最近では、暇さえあればそんなことばかりを考えるようになっていた。「何か手伝うよ」「あ、じゃあ……土鍋、出してもらってもいいですか?」「お安い御用だ」 優しい笑顔を向けて土鍋を棚から出してくれる爽太さん。その背中に、思わず見惚れてしまう。「ほら、取れた」「すみません。ありがとうございます」 お礼をして土鍋の蓋をガスコンロにセットした。「今日はなんの鍋だ?」「今日は豆乳鍋にしようかと」「いいな、豆乳鍋。美味いよな」 その爽太さんの言葉に、私は「はい。豆乳鍋大好きです」と答える。 そんな何気ない会話をしながら毎日を過ごすことは決して寂しいものではないけど、時々寂しい気持ちになるのは確かだった。 私はもう少しで、爽太さんの妻ではいられなくなると分かっているから……。「後は煮込むだけか」「はい。しっかりと味が染み込むように、煮込みます」 お鍋が出来るのを待っている間、私はお風呂のボタンを押してお風呂のお湯を沸かした。 ふと爽太さんに視線を向けると、ソファに座って本を読んでいた。 その横顔を見つめながら私は、爽太さんと一緒にいられる時間が残り少ないことに不安を感じていた。 私にはまだ、爽太さんに言えていないことがあった。 だけどそれを言ってしまったら、私は爽太さんと一緒にいられる時間がもっと減ってしまうかもしれない。そう思って、言い出すことも出来ない。 私って本当に、臆病だな……。ちゃんと言わなくちゃいけないとわかっているけど、怖いんだ。 怖くて怖くて、仕方ない。 そっと自分のお腹に手を当てながら、唇をそっと噛みしめる。 この前体調不良で病院に行った時に発覚した。……私が、爽太さんの子を
Terakhir Diperbarui : 2025-05-10 Baca selengkapnya