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【エピソード27〜知ってしまった秘密〜爽太SIDE〜】

Auteur: 水沼早紀
last update Dernière mise à jour: 2025-05-15 23:03:34

「よく眠ってるな……」

 ニ週間のシンガポール出張を終えてようやく自宅へと帰宅した俺は、今すぐにでも紅音に触れたくてそのまま紅音を抱いてしまった。

 行為の後、紅音は疲れたようですぐに眠りについてしまった。

 俺は眠っている紅音の髪や頬を撫でると「愛してる」と呟き、そのままシャワーを浴びた。

 シャワー後、パジャマに着替えリビングに行くと、紅音が作ってくれたメニューたちが食卓に並んでいた。

「うわ、美味そうだな」

 ちゃんと俺のリクエストしたローストチキンとビーフシチューだ。

 本当に作ってくれたのか……。ありがとう、紅音。

 俺はビーフシチューを温めて器に盛り付け、そしてローストチキンもレンジに入れて温めた。

「……いただきます」

 熱々のビーフシチューを一口食べると、すごく美味しかった。 お肉もかなり柔らかくなっていて、食べやすくなっていた。

「美味い……」

 こんなに手の混んだ料理を作ってくれる妻、他にいるのだろうか……。

 あまりの美味しさに手が止まらなくなり、そのまま完食した。

「ごちそうさまでした」

 そして食器を片付けていたその時ーーー。

「おっと……!」

 俺は近くに置いてあった紅音のカバンを蹴ってしまった。

 あ、やべ……!

「紅音、またこんなとこに置きっぱなしにしてたのか……」

 紅音のカバンを蹴ってしまったせいで、中身が飛び出してしまっていたようだった。 俺はそれを拾おうと手を伸ばした。

「ん? なんだ、これ……?」

 ーーーその時、あるものが俺の視界に飛び込んできた。

「……え?」

 これって……。そこには紅音の名前がしっかりと書いてあった。【小田原紅音】と。

「母子、手帳……?」

 なんでこんなものを、紅音が持っているんだ……?

 いや、母子手帳を持ってるってことは……。

「え……まさか」

 紅音はもしかしてだけど……。

「妊娠……してるのか?」

 俺はイケないと思いながらも、その中身を見てしまった。

「……っ!」

 やはり、間違いないようだ。

 紅音は妊娠している。俺の子供を……妊娠、しているんだ。

 その事実を知ってしまった俺は、戸惑った。

 紅音、妊娠しているのなら、なぜもっと早く言ってくれなかったんだよ……。

 どうして今まで、隠していたんだよ……。

 母子手帳を見ると現在は、妊娠八週目のようだった。

「……待てよ
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