夕食が出来上がった頃、爽太さんが仕事から帰ってきた。そしてすぐさま、私を抱きしめてくる。 「爽太さん……?」「ただいま、紅音」「おかえりなさい」 爽太さんのその温もりは温かくて、なんだか安心する。「赤ちゃん、元気にしてるか?」 そう聞かれて私は「はい。とても元気ですよ」と答えた。「それは良かった。 少しだけど、お腹大きくなってきたな」「はい。少しだけ、ですけど」「産まれてくるまでにまだたくさん時間はある。ゆっくりと成長してくれたら、それでいいさ」 そんな爽太さんの言葉に、私は「そうですね」と答えた。 私たちの赤ちゃんは、必ず元気に産まれてきてくれるに違いない。 そして元気に育ってくれるはずだ。「それより、腹減ったな」「じゃあ、ご飯にしましょうか」「ああ。手を洗ってくるよ」 爽太さんは一旦部屋に戻り、着替えてからキッチンにやってきた。「「いたただきます」」 と手を合わせて夕食を食べ始める。「うん。美味い」「良かった」 こうやって二人でご飯が食べれるのも、残りわずか……。 カウントダウンは、もうすでに始まっている。「……あの、爽太さん」「なんだ?」「離婚届の、ことなんですけど……」 カウントダウンが始まった今、離婚するという選択肢にきっと、変わりはない。 だからこそ、今という瞬間を大切にしたい。……だけどまた、プロポーズしてくれるというその言葉を信じて、私は爽太さんのことを待つ。「……紅音」「はい」「そのことで、俺から話があるんだ」 「話……ですか?」 爽太さんからそう言われて、私はお箸を置いて爽太さんを見つめる。……話とはなんだろうか。「すまない、紅音。先に謝らせてくれ」 そして爽太さんは、たった一言だけそう答えた。「え? なにが、ですか……?」 私たちが本当の家族になるには、まだ時間がかかることに間違いはない。 私たちは、普通の夫婦じゃないから。「紅音、離婚届について……後で俺から改めて話をさせてほしい」 「……はい。わかりました」 子供のために頑張るなんて言ったけど、本当は私は、自信なんてない。 一人で頑張れるか、不安を抱えている。 でも爽太さんにその不安は見せたくないから、つい強がりそうになってしまう。「紅音には、苦労ばかりかけてすまない」 爽太さんから突然
Terakhir Diperbarui : 2025-05-21 Baca selengkapnya