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【エピソード33〜カウントダウン〜】

Auteur: 水沼早紀
last update Dernière mise à jour: 2025-05-22 19:03:39

 爽太さんがイギリスに発つまで気が付けば残り一週間となっていた。 あと一週間後、私たちは離れてしまう。

「爽太さん、もうすぐですね」

「ああ。そうだな」

 こうしてニ年間一緒に生活してみて、すごく思い出がたくさんあった。楽しいこと、面白かったこと、色々と思い出が蘇ってくる。

 泣いたこともあった。辛かったこともたくさんあった。

「私、爽太さんのことずっと大好きですから。……離れても、ずっと」

「ああ、俺もだよ」

 私たちのお互いを思うその気持ちは、これからもずっと変わらない。

 私は爽太さんのことを愛している。この子の父親として、爽太さんは必ず帰ってきてくれると言ってくれたから。

 待ってる、この子と二人で……。

「そろそろ、向こうに行く準備しないとですね」

「そうだな。もうそろそろ、やらないとな」

「はい」

 爽太さんと離れるのは、正直寂しい。本当のことを言うと、離れたくない。

 ずっとずっと、一緒にいたい。

「もしかしたら紅音のことを、もう少し待たせてしまうかもしれない。……けど、必ず迎えに行くから」

 爽太さんからそう言われた私は「約束ですよ?……必ず、迎えに来てください」と言って爽太さんの手を握った。

「ああ。 だって俺には、守らなきゃいけないものがもう一つあるからな」

 それは私だけでなく、赤ちゃんもという意味だ。

「だって私たちの赤ちゃん、ですからね」

 大切な大切な、私たちの宝物。この子を守るためにも、私は爽太さんの分まで頑張らないといけない。

 この子の成長を見届けて、爽太さんとまた再会した時、笑顔でまた会いたいから……。

「帰ってきたら、二人を思いっきり抱きしめたいよ」

「……はい。抱きしめて、あげてください」

 私たちは、またさらに家族になるんだから。またこうして再会した日から、みんなで家族になるんだから……。

「紅音、俺はこれからも、君のことを……。いや、君たちのことを大事にする。今度はこんな風に離れたりしないと約束する」

 爽太さんの言葉は、私を強くしてくれる。心の奥まで、温かくしてくれる。

「……約束、ですからね」

 今度もし離れるようなことがあった時には、私はどうしようもなく、泣いてしまうかもしれないな。

「紅音、俺の結婚指輪……持っててくれないか?」

「え? でも、いいんですか?」

「ああ。持っててほしいんだ、紅音に」

 爽太さん
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