二人が見つめ合い、香織はついに折れた。「わかった!一度だけ信じてあげる。でも、もし実紀に何かあったら――命を賭けてでもあなたを追い詰める!」唇を噛みしめながら、悔しそうに言った。抵抗する者がいなくなった風歌は、難なく病室に入ると、実紀を運ぶよう指示した。香織の不満と心配が入り混じった視線を背に、実紀を連れ去った。音羽家の邸宅に戻った頃には、すでに夕暮れ時だった。夕日の残光が空を優しいオレンジ色に染め、街全体を温かな光が包み込んでいる駿は客室を用意し、一時的に実紀を安置すると、風歌と共にソファに座り、今後の計画を話し合った。ベッド上の実紀は表情が穏やかで、目を閉じたまま、あたかも眠っているかのようだった。「状態は安定しているようだ。バイタルは全て基準範囲内」駿は主治医から渡された検査報告書を受け取り、顎に手を添えながら目を通す。風歌は報告書を受け取ると、ベッド上の実紀をじっと見つめ、美しい眉をひそめた。「植物状態からの回復は困難を極める……望月家も国内外の名医を呼び寄せたが、誰も為す術がなかった。実紀を突破口にするには、最終手段しかない」駿はテーブルを軽く指で叩き、手元に灰皿を引き寄せた。「その最終手段とは?」風歌の目に一瞬、疑問の色が浮かぶ。「おい、忘れたのか?」駿は呆れたように彼女の頭を軽くたたいた。「医学界のエリートである俺たちの兄貴のことを。あの医術と権威を疑える人間なんて、この世にそうそういない」風歌はハッとした。長く音羽家と距離を置いていたせいで、兄である音羽真(おとわしん)の実力を忘れかけていたのだ。「でも……真兄さんは無口で変わり者だし、いつも仕事で忙しい。それに月見丘市にいるから、協力を得られるかどうか……」喜びに浮かれることなく、風歌は慎重に言葉を選んだ。「確実を期すため、私が直接月見丘市まで行って、兄さんを連れ戻す。たとえ強引な手を使ってでも」実紀は今や計画の要だ。一歩でも間違えるわけにはいかない。俊永が公言した五日の期限のうち、すでに二日が過ぎていた。残り三日で全てを逆転させるためには、急がなければならない。「兄さん、急ぐわ。今夜中に月見丘市へ行って、真兄さんを連れてくる」風歌は鞄を手に立ち上がった。「そんなに急ぐのか?だが、普段私用機は
Read more