その言葉が落ちた時、雪華もようやく追いついてきた。口を開こうとした彼女が、視線は思わず人々の中心へと向かってしまった。高層ビルから飛び降りるという死に方はあまりにも壮絶で、目を背けたくなるほどの惨状だった。雪華は、夕帆なんて死ねばいいと何度も思ったことがあった。だが、いざ目の前でその光景を目にした時、思わず叫び声をあげていた。「きゃあっ!」よろめくように二歩後ずさり、その場に尻餅をついてしまった。「茂仁......」彼女は震える手で茂仁のズボンの裾をつかみ、連れて帰ってほしいと懇願するように見上げた。だが彼はその手を無情にも振り払って、半歩たりともその場から動こうとしなかった。それどころか、頑なな表情で警察に尋ねた。「いつになったら......彼女を連れて帰れるんですか?」「死因が判明した後です」警察は事務的な口調で答えたが、別に意地悪でそう言ったわけではない。もっとも、死因など明白だった。警察側も必要以上に長引かせるつもりはなかったのだろう。それから三日後、茂仁は夕帆の遺体を引き取れるという通知を受けた。彼女の遺体を別荘まで迎えるその日、雪華は泣き腫らした目で彼の前に立ちふさがった。瞳の奥には、今にも溢れ出しそうな悲しみと困惑があった。「茂仁......私たちはもう結婚したのよ?彼女はもう死んだのに、なんでまだ彼女を探そうとするの?」その問いに、茂仁の瞳に困惑の色が浮かんだ。「俺たちは仮の結婚だろ?でも、雪華......夕帆は俺の彼女なんだ。本当の、恋人なんだよ」結婚して一緒に一生を過ごすはずのの人なんだ。そう言って、彼は雪華を押しのけようとした。彼のその一言で、雪華はしばし呆然となり、次の瞬間、信じられないように目を見開いた。「仮の結婚って......?」彼女は呆然と呟き、やがて、ひとりでに笑い出した。「今さら言うつもりなの?本当に愛してたのは、夕帆だって」茂仁の足が、ふと止まった。目に一瞬、迷いの色が浮かんだ。愛してる?......夕帆を?そんなことは一度も真剣に考えたことがなかった。彼の中で、夕帆への感情は「責任」に近いものだった。そして自分が愛しているのは、雪華だと思っていた。だが、今こうして改めて問われてみると、ふと気づいた。――もし本当に夕帆を愛して
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