私は夢を見ていた——何故か分からないが、私にはこの世界が夢であるということを認識していた。夢の中の私は薄暗い霧が立ち込める森の中を立っていた。そして森の中へ一歩を踏み出す。そこで私の目が覚めた——****「ユリアお嬢様……今朝は随分と眠そうですね?」朝食を食べながら今朝4回目の欠伸をしていると、向かい側の席に座るジョンが声をかけてきた。「ええ……色々考えることがあって、なかなか寝付けなくてね」テーブルパンにマーマレードを塗っているとジョンが首を傾げる。「考え事ですか? 一体何を考えることがあるのです? ひょっとすると悩みでもあるのですか?」「え……?」私はその言葉に驚き、ジョンを見た。彼は美味しそうにオムレツを食べている。「ねぇ、ジョン」「何ですか?」「ひょっとして、私には悩みがないと思っているの?」「はい、勿論そう思っていますが……え? ひょっとするとユリアお嬢様は今悩みをお持ちなのですか?」言い終わるとジョンはベーコンを口に入れた。「あるに決まっているじゃないの。命は狙われているし、記憶は戻らない。家族からはどうやら嫌われているらしいし、何か夢を見た気がするのに全く覚えていない……」するとボソリとジョンが言った。「嫌われているのは家族だけでは無いのに……」「え? 何? 何か言った?」「いえ、何も言ってません」「嘘、今『嫌われているのは家族だけでは無いのに』と言ったじゃないの」「聞こえているなら問い直さないで下さいよ」「あのねぇ……」言いかけたたけれども、ジョンは視線も合わせずに食後の珈琲を飲んでいる。それを見ていると何だか馬鹿馬鹿しくなってきた。「別にいいわ。私が嫌われているかどうは登校すれば分かる話だものね」わざとジョンに聞こえるように言うと、ミルクを飲み干した。そう、今私が一番頭を悩ませているのは嫌われているかどうかよりも記憶を失っていると言うことなのだから——**** ガラガラガラ……走り続ける馬車の中、私はジョンと向かい合わせに座っていた。私もジョンも高校の真っ白い制服を着ている。「ジョン、その制服姿……中々似合っているわね」するとジョンは謙遜することもなく言う。「ええ、私は何を着ても似合いますから」ジョンは馬車から窓の外を眺めつつ、返事をする。「…」確かにジョンは悔しい位にハンサ
Last Updated : 2025-04-28 Read more