【記憶を失った悪女の、人生を立て直す為の奮闘記】 池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われていることを知る。どうせ記憶喪失になったなら、今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知ることになる――
View More気付けば水面が目の前に迫っていた。
そして次の瞬間――
ドボーンッ!!
激しい水音と共に私は冷たい水の中にいた。
(く、苦しい……!!)
長いドレスの裾が足に絡まって水の中で足をうまく動かせない。水を飲みこまない様に口を閉じるには限界がある。
(だ、誰か……っ!!)
その時、誰かの腕が伸びて来て私の右腕を掴んできた。そして勢いよく水の中から引き上げられ、自分の身体が地面に横たえられるのを感じた。太陽の眩しい光が目に刺さる。呼吸をするにも、ヒュ~ヒュ~と喉笛がなり、空気が少しも吸い込めない。まるで水の中で溺れているかの様だ。
「ユリア様! しっかりして下さい!」
誰かの声が遠くで聞こえた瞬間。
ドンッ!!
胸に激しい衝撃が走った途端、激しく咳き込んでしまった。
「ゴホッ! ゴホッ!」
咳と同時に大量の水が口から流れ出てきて、途端に呼吸が楽になる。
良かった……私、これで助かるかもしれない……。
「ユリア様!? 大丈夫ですか!?」
太陽を背に誰かが私に声をかけてくる。
……誰……? それに……ユリア様って……一体……?
そして私は意識を失った——
****次に目を覚ました時はベッドの上だった。フカフカのマットレスに手触りの良い寝具。黄金色に輝く天井……。え? 黄金色……?
「!!」
慌ててガバッと起き上がった拍子にパサリと長いストロベリーブロンドの髪が顔にかかる。
「え……? これが私の髪……?」
何故だろう? 非常に違和感がある。本当にこの髪は私の髪なのだろか? でも髪だけでこんなに違和感を抱くなら……。
「顔……そうよ、顔を確認しなくちゃ」
ベッドから降りて丁度足元に揃えてあった室内履きに履き替える。……シルバーの色に金糸で刺繍された薔薇模様の室内履き。どう見ても自分の趣味とは程遠い。
「鏡……鏡は無いの……?」
部屋の中を見渡すと趣味の悪い装飾に頭が痛くなってくる。赤色の壁紙には薔薇模様が描かれている。床に敷き詰められた毛足の長いカーペットは趣味の悪い紫。部屋に置かれた衣装棚は黄金色に輝いている。大きな掃き出し窓の深紅のドレープカーテンも落ち着かない。
「こんな部屋が……自分の部屋とは到底思えないわ……」
溜息をついて、右側を向いたときに、大きな姿見が壁に掛けてあることに気が付いた。
「あった! 鏡だわっ!」
急いで駆け寄り、鏡を覗いて驚いた。紫色のやや釣り目の大きな瞳。かなりの美人ではあるが、性格はきつそうに見える。
「……誰よ、これ……」
サテン生地の身体のラインを強調するかのようなナイトドレスも落ち着かない。これではまるで……。
「相当な悪女に見えるじゃないの……」
ぽつりと呟いたとき、突然扉が開かれた。部屋の中に入って来たのは年若いメイドだった。そして私と視線が合う。
良かった! この部屋に入って来たということは、私について良く知っているはずだ。「あの、少しお聞きしたいことが……」
話しかけると、途端にメイドの顔が青ざめる。そして——
「も、申し訳ございませんでしたっ!」
突然頭を下げて来たのだ。しかも何故か彼女はガタガタと小刻みに震えている。
「あ、あの……何故頭を……」
言いかけた時、メイドが大声で謝罪してきた。
「どうぞお許し下さい! まさかユリア様がお目覚めになっているとは知らず、ノックもせずに勝手にお部屋に入ってしまった無礼をどうかお許し下さい!」
メイドは涙声で訴えてくる。
え? 何故彼女はこんなにも私を見て怯えているのだろうか? いや、それよりもまずは彼女を落ち着かせなくては……これではまともに話も出来ない。
「大丈夫です。私はちっとも怒ってなどいませんから。どうか落ち着いて下さい」
「ユリア様がそのような言葉遣いをされるなんて……!」
ますます怯えさせてしまった。
「あーっ! とにかくもう! 本当に怒っていないから落ち着きなさいよ!」
少々乱暴な口調で大きな声をあげると、少しだけメイドが落ち着きを取り戻した。
「そ、それでこそ……いつものユリア様です……」
「そう、それよ」
「それ……とは一体何のことでしょう?」
首を傾げるメイドに尋ねた。
「ユリアって誰のことかしら? ついでにここは……何所なの?」
すると私の言葉にメイドは目を見開き、突然身体を翻した。
「た、大変! メイド長~!!」
「あ! ちょっと待ってよ!」
私の質問に答えず、メイドは部屋から走り去ってしまった――
「どうもありがとう」御者にお礼を述べ、馬車を降りて校舎を目指して歩いていると背後から私の名を呼ぶ声が聞こえてきた。「ユリアーッ!」振り向くとその人物はマテオだった。「あら、おはよう。マテオ」「ああ、おはようユリア」「いいの? ベルナルド王子の側にいなくても」「ああ。もういいんだよ。何しろ王子の方から俺達に離れてくれと頼んできたんだから」「ふ~ん……何故かしらね」すると今度は背後で大きな叫び声が上がった。「「あーっ!!」「げっ! アーク! オーランド!」マテオの顔色が変わる。「マテオッ! 勝手に抜け駆けするな!」「全く何て奴だ!!」「うるさい! 俺の勝手だろうが!」アークとオーランドが駆け寄って来ると3人は私の頭の上で口論を始める。どうやらこの3人は私のことを取り合いっこしているらしい。そもそも何故3人がこのような行動を取る様になってしまったかと言うと、オルニアスの話によれば、ノリーンが仕組んだ事の様だった。私の方からベルナルド王子への興味を失わせようとする為に、マテオ達をオルニアスの魔力で私に惚れさせて、彼等に口説かせて誰かと恋に落ちてしまえば王子からの婚約破棄に応じるだろうと言う筋書きだったらしい。オルニアスはノリーンに命じられるまま彼らに私を好きになる魔法をかけ、結果彼らは私の虜? になってしまった。そしてオルニアスのかけた魔法が解けた後も何故かマテオ達は私に好意を寄せたままの状態だった。オルニアスの見解ではマテオ達はどうやら始めから私を好きだったから魔法が解けても何も変わらないのだろう……と言うことだった。「はぁ~……もう付き合ってられないわよ」私は激しく口論を続けるマテオ達からそっと離れると急ぎ足で校舎の中へ入って行き、偶然にもテレシアに会った。「あ、おはよう。テレシアさん」「おはよう~見たわよ。またあの3人に絡まれていたわね?」「そうなのよ……本当に嫌になるわ」今では私とテレシアは親友と呼べる仲になっていた。「それで? ベルナルド王子はどうしてるの?」2人で廊下を歩きながらテレシアに尋ねた。「あ? やっぱり気になるの?」「う~ん……まぁ多少は? 何しろあのノリーンと付き合っているんだから」「そうよね~でもいずれ別れさせられるんじゃないかしら? 何しろ結局は王族と平民の仲だからね」「やっぱり…
呼び声に応えるかのように、突然何も無い空らセラフィムが姿を現し、私の前に立つとオルニアスと対峙した。「オルニアス。もうノリーンとユリアは和解したんだ。ノリーンはユリアの命を奪う事を願ってはいない。おとなしく魔界に帰るんだな」するとノリーン……いや、里美が声を上げた。「はぁ? ちょっと何言ってるのよ! 確かに和解はしたけれど、命を奪う事は願っているわよ? だって美咲の命を奪わなければ、私は一生彼から生活費と召喚代金としてお金を搾取され続けるのよ。冗談じゃないわ! 破産しちゃうわよ!」「ああ、確かに生活費は必要だな。おまけに魔力の全く無い人間に呼び出された為に人間界に現れるまでにえらく苦労させられたからな」オルニアスが頷く。「ノリーンには支払能力があまり無いんだ。少し位まけてやれないのか?」「ええ、そうよ。まけてちょうだいよ」セラフィムの言葉にノリーンは頷く。何ともスケールの小さい話を彼らは私抜きで始めた。「ちょ、ちょっと! 肝心の私を忘れないでよ!」ついに我慢出来ず、私は彼らの間に割って入ってきた。「どうした? ユリア」何故かオルニアスが妙に優しげな声で私を見る。そんな彼に警戒しながら訴えた。「お金が問題なら私が彼女の代わりにあなたに全額まとめて支払うから……お願いだから、そのお金を持って魔界へ帰ってちょうだい! そして二度と私の命を狙わないでよ!」「そうよ。ユリアが払ってくれれば、それでいいわ」「まぁ……ユリアは公爵令嬢だから、支払い能力はあるかもしれないが……」ノリーンとセラフィムが頷く。「……イヤだね」オルニアスは少しの間、私を黙って見ていたがそっぽを向いた。「何でよっ!!」里美はもう私には殺意は多分? 抱いていないのに、それでもオルニアスは私の命を狙っているのだろうか?「何でだって? それを俺に尋ねるのか? 前にも夢の世界で言っただろう? 殺すにはあまりにも惜しいって」確かに言われた気がするけれど……。すると次にオルニアスは耳を疑うようなことを言ってきた。「俺はユリアが好きだからな。傍にいたいから帰らないんだ。ユリアはもう王子のことはどうでもいいんだろう? だったら俺が相手でも構わないよな?」オルニアスが私の手を握りしめてきた。「はぁっ!?」その言葉に耳を疑う。「「ええええええっー!?」」ノリーンと
「ごめんなさい……美咲。私は前世で貴女に酷い嫌がらせばかりしてきたわ。それだけじゃない。交通事故に遭って死んでしまったのだって……私のせいなのよ……」里美が顔を覆って泣き始めた。「だから……だからきっと罰を受けたのね。前世の時よりも平凡な顔で生まれて魔法も使えない平民と言うポジションしか与えられなかったのよ……」「そ、それはちょっと違うと思うけど……」「いいえ! 違ってなんか無いわよ! 美咲は被害者だったから、公爵令嬢として……挙句にそんな美い容姿で生まれ変わることが出来たのよ!」そして里美は涙に濡れた瞳で私を見つめた。「美咲……今までごめんなさい……。だから……死んでちょうだい!」「はぁっ!?」いきなりの爆弾発言で驚いた。「ちょ、ちょっと待ってよっ! 普通、この話の流れなら、『どうか今までのことは全て、水に流してこれからは仲良くしてちょうだい』と来るのが筋じゃないの? それなのに、死んでちょうだいだなんて!」すると里美がヒステリックに叫ぶ。「だって仕方がないのよ! 呼び出した相手が言ったのよ! 『召喚者がこんなに未熟で魔力が全く無いとは思わなかった』って! それで……」 その時――「そうさ。この人間界に来るまでにどれ程の魔力を消耗たことか。普通なら召喚者の魔力を分けて貰うのだが、これっぽちも魔力を持っていないんだから驚きだよ」突然声が聞こえ、私と里美は慌てて声の方角を振り向いた。すると地面の上に光り輝く円が現れ、中からオルニアスが姿を現したのだ。「オルニアス! 生きていたのね!?」「ユリア…何を言っているんだ? 勝手に死んだことにしないで貰えるか?」オルニアスは呆れた様子で肩をすくめる。すると里美が声を上げた。「ほ、ほ、ほら! ここにターゲットがいるわ! 貴方にあげるから、これで契約も終わりよ! もうこれ以上付きまとわないでよ!」「里美……ひょっとして、あなたオルニアスに酷い目に遭わされていたの!?」オルニアスに生贄? として捧げられてしまうのは嫌だけれど、里美の置かれた状況も気になる。「人聞きの悪いこと言わないでくれ。俺はただ呼び出した責任を取って貰っていただけだ」呼び出した責任……? 一体何のことだろう? 私にはさっぱり見当がつかなかった。「呼び出した責任て何?」私は里美に尋ねた。「そんなこと、決まってるじ
「そうだったの……? いくら前世の記憶を無くしてたからと言って、貴女には酷いことをしてしまったのね」「ええ、そうよ。魔法が存在しているファンタジーみたいな世界に生まれ変われたのよ? なのに私は少しも魔法が使えなくて……まるで『お前は余所者だ』と突きつけられているようで心細くてたまらなかったところに、あんたが現れたのよ。それに私と同様魔法が使えないことが分って、ようやく自分はこの世界に1人じゃないんだって思えた矢先……。あんたは私のことを馬鹿にして、意地悪ばかりしてきたのよ! だけどこの世界じゃ、あんたは公爵令嬢、そして私はただの平民。どうすることも出来ないじゃないの!」里美……ノリーンは憎々し気な目で睨み付けて指さしてきた。確かに私は記憶の中で彼女を散々虐めていた。自分が魔法を使えないコンプレックスをノリーンにぶつけてきたのだ。それは明らかにノリーンの方が私よりも立場が弱かったからだ。魔法も使えず、さらに平民である彼女は私――ユリアにとっては都合が良い存在だった。 里美の怒りはまだ続く。「だから私はあんたに仕返ししてやろうかと思ったのよ。王子が婚約者だって知って、あんたが王子に良く思われていなことが分ったから、誘惑してやろうかと思ったけど……。所詮、こんな平凡な容姿じゃ無理だったのよ。だからあんたに仕返しして色々やってみたけど、どれもうまくいかなかったわ。いえ、違うわね。あんたを始末するのに自分の手を汚したくなかったのよ。それで召喚魔法を使って魔物を呼び出したのよ。私の代わりにあんたの始末をして貰う為にね。幸い私の祖母が腕の良い召喚士だったから呼び出すことは造作なかったわね。尤も下級魔族しか呼び出せなかったけど」「え……? 下級魔族?」そんな……ノリーンが呼び出したオルニアスはどう見ても下級魔族には思えない。だって彼は堕天使なのだから。ひょっとすると、ノリーンは自分が何を召喚したのかわかっていないのだろうか? だけど、私はもう逃げ続けるのは嫌だ。それに、全ての記憶をとり戻した今、自分がどれ程嫌な人間だったのかを知っている。「ごめんなさい、ノリーン。いえ……里美」私は膝をつくと、その場に座って土下座した。「は? あんた……一体何してるのよ?」「いい訳になってしまうかもしれないけれど、この世界での私は本当にいやな人間だったわ。家で家族から見下されて
「それで何所で話をするの?」ノリーンが肩をすくませながら私を見た。ノリーンがこんな態度を私に見せるのは初めてだ。その仕草はまるで前世の里美そのものだった。「そうね。何所か静かな場所で話しましょう? お互いここで話をするのは色々まずいと思わない?」「いいわよ。だったらこの学園の校舎の裏手に林があるわ。そこなら人が来ないから、ゆっくり話が出来るんじゃないかしら?」「ええ……そこでいいわ」「それじゃ、行きましょう」ノリーンは踵を返すと、先に立って再び校舎の中へと入って行く。そして私はその後をついて行った――**** 校舎の中を突っ切り、裏口へ続く通用口を通り抜けると何も無い林が広がっている。確かにここだと人の目につくことは無いだろう。私の前に立って歩いていたノリーンがピタリと足を止めて振り返った。「それで話って何?」「ノリーン……いえ、里美。そんなに私が憎かったの?」ピクリと眉を動かしたノリーンは腕組みする。「…は? 誰よ? 里美って」「私は子供の頃、本当に貴女のこと親友だと思っていたのよ? それなのに気付けば貴女は私が付き合って来た男性達を奪っていったわね? 私はそこまで恨まれることをした覚えは無いけど?」するとノリーン……いや、里美は口元を歪めると吐き捨てる様に言った。「は? 親友ですって? ふざけないでよっ! 私はあんたが大嫌いだったんだから! だからあんたの恋人を奪ってやったのに、すぐに新しい恋人を作って……! 苦労してあんたから恋人を奪ったのに、結局すぐ皆私と別れたいって言ってきたのよ! あんたの方がいいと言ってね!」「え?」そんな話は初耳だった。「それだけじゃないわ……いっつもあんたの周りには人が大勢集まって……輪の中心にいる人気者で、勉強だって運動だって……何でも出来て、私の持っていない物全てを持っていた……羨ましくて仕方なかった。あんたといるだけで自分が駄目な人間に思えてずっとコンプレックスを抱えていたのよ!」「さ、里美……」「あの夜……あんたに恥をかかされて、それが悔しくて後を追いかけたら……よりにもよって交通事故で死んでしまうなんて……。目が覚めたら、魔法が存在するだとか、訳分らない世界に転生してるわ、しかも容姿だってこんなにさえないし、ただの平民として生まれ変わっしまったことにどれだけ絶望したか分る?それな
「そう言えば、今は何時なのかしら?」ようやくベッドから身体を起こせるようになった私はセラフィムに尋ねた。「今は14時半を過ぎた辺りだ。恐らくまだノリーンは学校の授業に出ているだろう」「そうね。それじゃ出かける準備をするわ」「……今から学校へ行くのか?」「ええ、勿論。夢の世界で閉じ込めたオルニアスが現れる前にノリーンと決着をつけなくちゃね」「よし。覚悟が出来たってことだな?」「勿論よ」「なら手伝ってやるよ」セラフィムは指をパチンと鳴らすと、一瞬で私の服は制服に変わっていた。「すごい……やっぱり魔法って便利よね」するとセラフィムがしんみりした様子で言う。「だけど……俺はユリアのいた前世の世界を知った時に気付いたよ。ユリアがいた世界は文明がとても発展していた。恐らく魔法が存在しない世界だったから人々は努力して魔法なんか使えなくても便利な世の中になったんだろうなって。……いつまでも魔法にばかり頼っていては……駄目なのかもしれない」「セラフィム……」「よし、それじゃ行くか。ユリア」セラフィムが手を差し伸べてきたので私はその手に掴まった。「ええ」「空間移動するから目を閉じているんだ。目を回すかもしれないからな」「分かったわ」全く……ついさっき、魔法に頼ってばかりではいけないと自分で言ったばかりのくせに。思わず、苦笑しながら目を閉じた次の瞬間、セラフィムは空間を飛んだ――****「……」正門の前で私はノリーンが校舎から出てくるのをじっと待っていた。セラフィムには警戒されないよう、姿を隠しているように伝えてある。授業が終わり、校舎からゾロゾロと出てくる生徒達は腕組して校舎をじっと見つめている私を目にしてはヒソヒソと囁いている。その声は風にのって私のところにまで聞こえてくる。「見て、悪女と名高いアルフォンス公爵令嬢よ」「ここ最近姿を見せていないと思っていたのに……」「あんなところで何してるんだ?」「誰かを脅す為に立っているんじゃないか?」「本当に今世の私は嫌われていたわね……」でも全ての記憶を取り戻した今ならよく分る。本当に私は嫌な人間だった。公爵令嬢と言う立場を理由に、勉強も出来ないくせに威張り散らして親しい友人など1人もいなかった。どうして自分がそんな行動を取っていたのかは今となっては理由は分らないけれど。そんなこと
Comments