「なんだって!?」その言葉を聞くや否や、深志は慌てて車に飛び乗り、猛スピードで実家へと車を走らせた。屋敷に駆け込むなり、深志は血相を変えて問い詰めた。「母さん、さっき電話で言っていたのはどういう意味だ?何の合意書だって? 芽依はあんなに風初を可愛がっていたんだ、あの子をいらないなんて言うはずがない!」静子は腑に落ちないといった顔つきで一枚の書類を取り出し、深志に突きつけた。「これを見てみなさい。芽依が自らの意思で風初の親権を放棄するって、はっきりと書かれているわ」書類を手にした深志は、雷に打たれたようにその場に立ち尽くした。つい先ほどまで、芽依が我が子を手放すはずがないと高を括っていたのだ。だが、まさか彼女が子供すらも捨てて出て行くとは、夢にも思わなかった。風初が生まれてから今日まで、ミルクの世話から幼稚園の行事に至るまで、何もかも芽依が手塩にかけて育ててきたのだ。彼女は自分自身のこと以上に風初のすべてを最優先にしてきた。あれほど愛情深い母親が、よりによって親権を放棄する道を選ぶなど信じがたかった。よほどの絶望を感じたからでなければ、芽依がこんな形で去る理由など他に考えられない。その時、深志の脳裏に、あの会社のパーティーでの出来事がふとよぎった。そうだ、芽依はあの夜のことで深く腹を立てているに違いない。だから当てつけに家を飛び出し、意地を張ってこんな合意書にサインしたのだ。そう思い至ると、深志は自分の推測が絶対に正しいと確信を深めた。一方、目の前の静子は冷ややかな声で深志を叱責し続けた。「あとの始末は自分でつけなさい。世間を騒がせたのはあなたなのだから。夏寧と結婚するか、それともきっぱり縁を切るか、二つに一つよ。自分で選びなさい」「母さん、以前は俺と夏寧の交際にあんなに反対していたじゃないか? どうして今更……」その言葉に、静子は歯痒そうに大きなため息をついた。「じゃあ、どうしろって言うの?あなたがどうしてもあの子がいいと執着しているのでしょう? 五年前もそう、そして五年の月日が流れた今も変わらないじゃないの。それに、これだけスキャンダルが大きくなってしまった以上、結婚でもして体裁を整えなければ、浅間家の名誉の傷は拭いきれないでしょうが!」その言葉を聞いて、深志は全身から力が抜け落ち、よろよ
Read more