「浅間家は二年前からもうダメだったんだ。新興企業が次々と台頭して、浅間家は小さな会社にすら太刀打ちできなくなり、資産は当然のように売り払われたのよ」芽依は目を見開いた。彼女は全然知らなかった。あの日病院を離れてから、深志とは完全に連絡を絶っていた。彼女はずっと海外で活動していたため、浅間家のこんな激変をまったく知らなかった。食事をしていると、潔羽が呟いた。「パパ、気持ち悪い……吐いちゃいそう……」京平は潔羽の額に手を当てると、熱があることに気づいた。彼は慌てて言った。「日本の気候に慣れなく、行ったり来たりして風邪をひいちゃったのかもな……」芽依はすぐに立ち上がり、タクシーを呼んで潔羽を病院へ連れて行った。病院に着くと、医者は解熱剤を処方した。潔羽は薬を飲むと芽依の腕の中で眠り込んでしまった。その寝顔は愛らしかった。そのとき芽依は、心理カウンセリング室から出てきた深志を見かけた。六年を経て、深志はかつての活力を失い、疲れ切った表情で、白髪も生えた。彼は芽依を見つめ、その場で固まり、やっとのことで微笑んだ。「久しぶりだね」「久しぶり」芽依はこんな形で深志と再会するとは思わなかった。深志は芽依が抱える潔羽を指差し、問いかけた。「この人は?」芽依は愛おしそうに潔羽を見つめ、微笑んで答えた。「私の娘だよ」深志は納得したように頷いた。芽依は眠る潔羽を京平に託して言った。「すぐ戻ってくるね」芽依と深志は病院の外の小道を歩いた。時間はすべてを洗い流した。芽依の心には、もう何の愛情も残っていなかった。かつての憎しみすら消え去り、胸にあるのはただ坦懐だけだった。芽依は深志に視線を向けると、彼の手にある「重度抑うつ症」と記された診断書に気づいた。芽依の視線に気づくと、深志は慌てて診断書を隠した。芽依はそれをさらけ出さなく、ただ深志を見つめて問いかけた。「風初は? どうして一緒にいないんだ?」深志は自嘲気味に笑いながら言った。「風初は母に預けている。今じゃ一年に数回しか会えない」その軽い口調に、芽依は深い哀しみを感じた。深志の不調だから、彼の母が家業を任せられなかった。だが、彼の母は風初も奪ったなんて。芽依は深志の腕を見つめた。新旧の傷跡が五、六本も刻まれていた。彼の心が深く
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