บททั้งหมดของ 目を合わせたら、恋だった。: บทที่ 31 - บทที่ 40

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第三十一話 温かい応援の言葉

 ステージパフォーマンスの始まる時間まで、芽衣と二人で模擬店を食べ歩きした。どの人も俺に冷たい目を向ける人など一人もおらず、ホッとした。たこ焼きの熱さで舌を火傷しそうになりながらも、久しぶりに外の空気を満喫していた。 その時、急に一人の女子学生から声をかけられた。「あの……。ハルトのイラストの絵師さんですか?」 安心しきっていたところに、アカウントのことで声をかけられ、体が固まってしまった。喉がカラカラに渇き、背中に冷たいものが伝った。足がわずかに震え始め、逃げ出したい衝動に駆られる。「私、あのアカウントのフォロワーなんです。絵のタッチが大好きで。いつもイラスト見て、今日も頑張るぞ! って思ってたから、新しくアップされないの、寂しいです」 俯いたその女子学生は、本当に寂しそうな顔をしていた。その瞳には、嘘偽りのない残念さが浮かんでいる。「ハルトの絵も素敵でした! またハルトとかバンドメンバーのイラスト上げてください!」 女子学生は頬を赤らめて、丁寧にお辞儀をしてその場を去っていった。小さな背中が人混みの中に消えていく。 キモいとかサイテーとか言われるのかと思っていたのに……。俺のアカウント、みんなの心に浸透していたんだと思うと、じんと心の奥が暖かくなった。目に涙が浮かぶ。「ほら、みんな叶翔のイラストが好きなんだってば。BLUE MOONの公式でも叶翔のアカウント紹介してたしねー。メンバーもみんな、好きみたいだよ」 芽衣の言葉に、胸の中で何かが溶けてくような感覚があった。「……うん、うん。……考えてみる」 俺はコクコクと頷きながら、急な嬉しい出来事に、頬を赤らめて俯いた。顔が熱くなるのを感じる。 ――うれしい。 フォロワーの生の声。本当に、人の役に立ててるんだと思うと、今までにない高揚感に襲われた。この気持ちは、以前の俺なら想像もできなかった。「叶翔、そろそろステージに行こうよ」 芽衣がキャンパス内に設置された特設ステージへと引っ張って行ってくれた。そこではすでにパフォーマンスが始まっていて、今は『戦隊ヒーロー研究会』のパフォーマンスが行われていた。五人がそれぞれテーマカラーの衣装を纏い、戦隊ヒーロとなって敵を倒していくパフォーマンスをしていた。観客は歓声を上げたり、笑ったりしている。「遊園地とかショッピングモールでショーやってます
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第三十二話 陽翔の本気の告白

 気づくと、ライブパフォーマンスは終わって、BLUE MOONのメンバーは手を振りながら舞台裏に下がって行った。陽翔の姿が見えなくなると、何か大切なものを失ったような気持ちになった。 会場内では「すごかったね」とか「感動した」などと言った言葉が飛び交い、ざわめいていた。興奮した表情の学生たちが、口々に感想を述べ合っている。「叶翔、どうだった?」 芽衣は俺の顔を覗き込みながら聞いてきた。彼女の目には、期待の色が浮かんでいる。「……うん」 俺は喉から言葉が出て来ずに、それしか言うことができなかった。心の中は感情が渦巻いていたが、言葉にできない。「なによー、もっとなんかないの?」 肘でウリウリと突かれる。その感触で現実に引き戻された気がした。「……陽翔さん、かっこよかった。そして、遠い人に感じた……。俺が近づいたらいけない人、みたいだ」 胸の奥底から絞り出すように言葉を紡いだ。言葉にした途端、その気持ちがより鮮明になる。「……っ!」 芽衣が息を呑むのが分かった。その表情には驚きと何か、言いようのない感情が混ざっている。 俺だってそう思いたくないが、あのライブを見たら、そう思わざるを得ないほど、陽翔は俺の手の届かない人だと分かった。輝きに満ちた彼と、影のような自分。その差は埋められないほど大きかった。「そんなことないから! ほら、アンコールあるから、聴くよ!」 芽衣が俺の腕を取って、ずるずると引っ張っていく。俺はその場に踏ん張って止まろうとしたが、芽衣は見かけによらず力が強い。紐をつけられた犬のように引っ張られて行った。 ステージから十列目ぐらいの場所まで連れて行かれて、仕方なくその場に佇んだ。周りはBLUE MOONのファンで埋め尽くされていて、芽衣は周りから声をかけられて楽しそうに喋っている。 アンコール、アンコールという声が徐々に大きくなって言った。会場全体が大きく拍手とアンコールという声で溢れたその時、メンバーが手を振りながら再びステージに戻ってきた。 汗に濡れた衣装を変えて、さっぱりした表情だが、陽翔ひとり、少し緊張した面持ちだった。その表情に何か違和感を覚える。いつもの自信に満ちた表情ではなく、どこか不安そうに見えた。「……最後に、俺の大切な人に届けたい曲です」 今までざわついていた会場が、一気にしんと静まり返った。まるで
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第三十三話 信じたいと、思ったんだ

 ライブが終わり、名残惜しそうにフェス会場を後にする人たちを横目に、俺は校舎裏に立ちすくしていた。夕暮れの柔らかな光が校舎の影を長く伸ばしている。辺りが静まり、遠くから人々の声が聞こえる。みんなの歓声が遠くに聞こえる。 胸の高鳴りがいつまでも落ち着かない。ドキドキする心臓の音が、自分の耳にも聞こえるほどに。俺は、胸に手を当てて、ぎゅっと胸元を握りしめた。 ――陽翔さんに愛されることが、怖いって思っていた。でも、この胸の高鳴りは、誰にも嘘つけない。 高校時代のトラウマも、最近起きた嫌な出来事も、全て洗い流されるような感覚だった。陽翔の言葉が、俺の心の傷を優しく包んでくれている。 自分の気持ちを整理するように、深く深呼吸をした。春の夕暮れの空気が肺の中に染み渡る。もう、嘘をつきたくない。この気持ちに。そして、信じてみたい。陽翔のまっすぐな声を。 そばにいた芽衣が、俺の肩をポンと叩いた。その感触が、現実と夢の狭間にいた俺を引き戻す。「叶翔。もうそろそろ、自分の気持ちに正直になってみたら?」 その言葉は俺の胸の奥までまっすぐ届いた。やさしくも、強い言葉だった。 ――もう、逃げるの、やめよう。 自分の気持ちに正直になりたい。メジャーデビューも目の前でスキャンダルを避けたいはずなのに、大勢の観客で陽翔は自分の気持ちを曝け出してくれた。その気持ちに、俺も、応えたい。 芽衣が遠くを見て、口角を上げた。「あたし、そろそろ撤収の手伝いしてくるね」 芽衣は手を振りながらステージへと向かっていった。新緑の青い香りを纏った温かい風が俺の髪を揺らした。「君が歌った世界に、俺がいてもいいのなら――、もう、逃げないって、決めてもいいですか?」 俺は瞬く星空を見上げて、陽翔に向き合うことを決めた。恐怖と期待が同じ速度で脈打つ。けれど今は、前に進む足が震えていることさえ誇らしかった。
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第三十四話 藤堂さんはいい人!

 空がオレンジから濃紺のグラデーションに染まる頃、俺は、ライブを終えた陽翔に自分の気持ちを伝えようと、正門前で震える足で立っていた。キャンパス内には模擬店の片付けをふざけ合いながらしているような楽しい笑い声が響き渡り、その自然な幸せが俺にはまだ遠い世界のように感じられた。 観客の前であのような公開告白をしたのだから、きっとメジャーデビュー前の汚点になるだろう。大勢に囲まれてどうしてあんなことをしたのだと詰め寄られてはいないかと、陽翔のことを心配した。熱くなると周りが見えなくなる天然な彼のことだ。芸能人予備軍として、ああいう行動は制限されているはずなのに。 目線を靴先に落とし、どうやって自分の気持ちを伝えようかと思案しているところに、俺に近づく足音が聞こえた。心臓が早鐘を打ち、息を潜めて足音の主を待った。 目を上げると、そこには陽翔ではなくBLUE MOONのメンバー、ドラムの藤堂晴臣(とうどうはるおみ)が立っていた。スレンダーな体躯に整った顔立ちは、それだけで絵になる。ただ、彼の表情はいつものような冷たいものではなく、どこか柔らかい光を湛えていた。 俺はなぜ晴臣がここにいるのかと両眉を跳ね上げ、思わず一歩後ずさった。「綾瀬くん、ちょっと話できるかな?」 いつもクールな声は、一段と低く心地よく耳に届いた。その表情は借り物のような貼り付けた笑顔ではなく、初めて見る素の表情だった。「……はい」 きっと陽翔のことに違いない。メンバーとして俺を牽制しに来たのかもしれないと身を固くした。人気バンドのボーカルが大学の後輩に公開告白なんて、メンバーが黙っているはずがない。 何を言われるのだろうか……。メジャーデビューのために、身を引いてくれと言われるのか? それとも、もう、陽翔に関わるなと罵られるのか……。もしかしたら、ボコボコに殴られるかも――。 拳をぎゅっと握って、半歩前を行く晴臣について行った。陽翔の気持ちに向き合うと決めたのに、心の中はまた不安でいっぱいになり、喉が乾き足取りは重い。 人気のないキャンパスのベンチに着くと、晴臣はこちらを向いてガバッと頭を下げた。「綾瀬くん、ごめん! 俺、君に意地悪してた!」 予想していたことと全く違う展開に、俺は思わず口をポカンと開けてしまった。心の中で反芻する。 ――え? BLUE MOONのイケメンドラマーが
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第三十五話 やっぱり、好きだ

 春フェスも終わり、普段の大学生活が戻ってきた。キャンパスに植えられたツツジが白やピンクの花を咲かせて、まだまだ春は続くと訴えているようだ。その花びらの一つ一つが鮮やかで、以前より色彩豊かに見える。 フェスで人気バンドのボーカルが公開告白をしたと言うことは、学内に知れ渡っている。きっとなんであの人が、とか、全然釣り合わないとか言われるに違いない……。もしかしたら、嫌がらせのひとつやふたつ……。高校の時のように、また孤立するのではないかという恐怖が俺を包み込む。 誰にも見られないように、前髪で目を隠して、俯きながら教室へ向かっていると女子学生数人の声が耳に入った。「ほら、あの人! ハルトの」「え? どれどれ? えっ! めっちゃイケメンじゃん!」「お似合いだよねー」 ――え? イケメン? お似合い? 俺のことじゃないよな、と声のした方に顔を向けると「きゃあ!」と黄色い悲鳴が聞こえた。暖かい春の日差しが顔に当たる。「やっぱ、めっちゃイケメン!」「えっ?」 ――俺のこと? きゃあきゃあ楽しそうに俺に向けて視線を注ぎながら、頬を赤らめてその場を去っていった。いつも俯いて人と顔をわせないように歩いていたので、顔を上げて初めて気づく。嫌悪の表情をしている人は、ほとんど、いない。むしろ、憧れのような目で見られている。 ――もしかして、認められて、いる? 高校の時のトラウマが少しずつ解けていくのを感じた。クラス全員からの冷たい目。ヒソヒソと囁き合う心無い言葉。ゲイ、キモい、同じ空気吸いたくない。あの時の恐怖が徐々に薄れていく。ここはそんなことはないのだ。 ここでは本当の自分でいて、いいのかもしれない。そう思うと、心が弾んだ。足取りが軽くなる。 昼休みに、陽翔に会えるかもしれないという、淡い期待を胸に久しぶりに中庭に行ってみた。カラフルな花々が咲き誇る中庭に、一人でランチを食べる人もいれば、友達と輪になって談笑する人もいる。でも、陽翔の姿はなかった。 それもそうだろう。あれだけずっと避け続けていたのだから……。俺が彼を拒絶し続けていたのだから。 俺はバッグからパンを取り出して、食べようとしたところに、人の気配を感じた。顔を上げると、そこには息を切らして駆けつけたような陽翔がいた。少し汗ばんだ額に、春の柔らかな日差しが反射している。「よかった! 叶翔
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第三十六話 好きって、言いたい

 放課後、待ち合わせまで少し時間があったので、俺は図書館に行った。いつもの窓際の席に座り、絵を描いていた。鉛筆が紙の上を滑る音だけが静寂に響き、その心地よさに包まれる。いつもならばこの時間が俺の救いだった。でも今日は違う。今日は彼に会える。あまりにも集中してしまい、時間が経つのを忘れていた。気づくと待ち合わせの時間が過ぎていて、慌てて遅れると言うことを陽翔にメッセージで入れた。 走って正門に行くと、陽翔がスマートフォンをいじりながら佇んでいた。夕焼けに輝く彼の横顔に、しばし見とれてしまう。「ごめん。遅れて……」 俺は息を切らしながら謝ると、陽翔は「大丈夫だよ」と優しく微笑んだ。その笑顔が刺さる。「何かあったの?」 遅れた理由を陽翔から聞かれて、うっと言葉に詰まった。言うべきか……。彼に隠し事をするのはもうやめよう。「……実は、絵を描いてて……集中し過ぎてた」 ちらりと陽翔を見ると、眉を下げて嬉しそうな顔をしていた。彼の目が輝いている。「やっと言ってくれたね! あの俺が好きな絵師さんのアカウント、叶翔くんだったんでしょ?」「……うん……」「またイラスト、アップしてね! 楽しみにしてるから。俺、叶翔くんのイラストのファンだし」 陽翔はそれ以上、何も言わなかった。彼はそれを咎めるどころか、むしろ喜んでいるようだ。この人は本当に優しい。「陽翔さんのイラスト、勝手に投稿して、怒ってないの?」「なんで?」 陽翔は首をこてんと傾げて不思議そうに俺を見てきた。その純粋な表情に胸が痛む。「俺って、こんな表情してるんだって嬉しかったけど?」「そっか……」 俺はふっと微笑んだ。すると陽翔が大騒ぎをする。「今、叶翔くん笑った! あーもう、また写真撮れなかったじゃんっ! 笑う時、笑うって言ってよー」 俺はぷははと笑った。それまで緊張していた体が、一気に力が抜けるように解放される。「そんな、『今から笑いますよ』なんて言えるわけないじゃん」 ふたりでケラケラ笑いながら公園のベンチに腰掛けた。街灯がぽつぽつと灯る住宅街の公園は誰もおらず、ひっそりとしていた。春の夜の風は、少しひんやりとしていた。陽翔と肩が触れ合う距離で並んで座り、その温もりを感じる。「今日、お弁当ありがとう。弁当箱、洗って返すね」 俺はまず、心を落ち着かせるために何気ない話をし始めた
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第三十七話 触れて、知った熱

 陽翔がそっと手を重ねてきた。そこから彼の体温を感じる。温かい。俺の中に優しく温かさが広がっていった。凍えていた心が溶けていく。 陽翔に優しく抱きしめられる。俺は少し震えたが突き放すことなく、それを受け入れた。彼の胸の鼓動が俺の体に伝わってくる。それはとても早い。「もう、絶対、離したくない……」 耳元で陽翔に囁かれ、背筋がぞくりとする。その声が耳から心を経由して、全身に広がっていく。「俺、怖かったんだ。過去に色々あって……陽翔さんのこと好きになったら、壊れるんじゃないかって……」 陽翔の胸に顔を埋めて言うと、彼は優しく髪の毛を撫でた。太い指が優しく髪に触れる感覚に身を委ねる。「大丈夫。壊さない。俺が守る……。何があっても、絶対に」 陽翔が体を離して、愛おしそうな表情で見つめ、俺の左の頬を手のひらで包んだ。彼の手の熱が頬から伝わってくる。温かい。俺は、陽翔の手に自分の手を重ねた。「うん……」 陽翔の手のひらに頬を擦り付けると、陽翔の親指が俺の下唇をするっと撫でた。触れるだけで、鳥肌が立つ。「叶翔、キス、していい?」 その言葉に、俺の中で何かが震えた。陽翔の瞳が、街灯の光を集めて揺れている。これまで何度も目をそらしてきた相手と、今、まっすぐに見つめ合っている。 怖い、怖い、なのに――。 俺はこくんと頷いた。もう、逃げない。今度は違う。今度こそ、自分の気持ちに素直になりたい。 陽翔の顔が徐々に近づいてくる。彼の吐息が頬を撫で、温かさと甘い匂いが鼻をくすぐる。その顔が近づくにつれて、心臓が早鐘を打ち始め、呼吸が浅くなる。世界がスローモーションになったような感覚。目を閉じると、柔らかな感触が唇に触れた。 ――優しい。 まるで壊れ物を扱うような、繊細で丁寧なキス。陽翔の唇は想像していたよりずっと柔らかく、温かかった。甘い吐息が混ざり合い、春の夜風さえも暑く感じる。その一瞬の接触だけで、体中の感覚が高まり、指先までしびれるような感覚が走った。 一度離れた唇が、今度は角度を変えて再び重なる。今度はもう少し長く、もう少し深く。 ――ああ、こんな気持ち、初めてだ。 これまで誰かに触れることを恐れていた。その度に高校時代のトラウマが蘇り、体が強張っていた。でも今は違う。陽翔の唇に触れるたび、昔の怖れが薄れていく。代わりに胸の中に広がるのは、温かな安
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第三十八話 ふたりで、始める

 長いキスの後、俺と陽翔は額をくっつけて、微笑みあった。ほんのり汗ばんだ肌と肌が触れ合う心地よさ。 ――あぁ、陽翔さんは、本当に温かい人だ……。「叶翔、愛してるよ」 ぎゅっと優しく抱きしめて、愛を囁いてくれる。本当に好きな人と、恋人同士になれたんだ。そう思うと目が熱くなった。今まで怖くて拒絶していたことが、どれほど馬鹿げていたことか。「俺も、陽翔さんのこと、愛してる」「もう、さん付けやめて。陽翔って呼んでよ。恋人なんだから」 ふふっと笑う声が耳元でじんわりと響いた。その吐息が耳に触れ、背筋がぞわりとする。「陽翔……」「うん?」「呼んでみただけ」 陽翔は朗らかにははっと笑って、チュッとキスをしてきた。その唇の柔らかさに、まだ慣れていない俺は、頬が熱くなるのを感じた。「可愛い、叶翔……。離したくないな……」「俺はどこも行かないよ?」 ふふっと笑って、陽翔の背中を優しく撫でた。大きくて温かい背中。この背中に支えられたら、もう何も怖くないような気がした。「あぁ〜、帰りたくねぇ〜」 陽翔が空を仰ぎながら喚いていた。まるで子供のようないたずらな表情。俺は、陽翔のこう言う子供っぽいところも好きだ。一途で純粋で、まっすぐで。ステージ上の彼とのギャップが愛しい。「明日も一緒に弁当食べるんだろ?」「また明日も、愛情込めて作ってくるから、楽しみにしてて!」 グッとガッツポーズをしている。全くこの人は、かっこいいんだか、かわいいんだか……。愛のこもった弁当を毎日作ってくれると思うと、胸がいっぱいになる。その姿を見て、思わず笑ってしまった。 陽翔と二人なら、きっとこの先も大丈夫だ。もう目を逸らさない。まっすぐ彼を見つめて、彼に見つめられる関係を大切にしよう。俺たちの始まりはこんなに温かいのだから。 俺は陽翔の胸に顔を埋めた。彼の心音が、俺の心と同じリズムを刻んでいるように感じられた。
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第三十九話 思わぬ反応に戸惑い

 春フェスが終わって、ずっとどうするか迷っていた創作アカウントを再び公開することにした。どれだけネガティブなコメントが来るのかと身構えていたのだが、反応は全く逆のものだった。「待ってました!」「くらーじさんのイラスト大好き」というものばかりで驚いた。「みんな、気持ち悪がると思ってたけど……よかった……」 俺はコメントを読みながら、心が温まるのを感じた。息を吐く度に、胸の奥が少しずつ軽くなっていくような感覚。これが、認められることの喜びなのだろうか。 そもそも、アカウント名をフランス語の「勇気」を表すcouroge(クラージ)としたのは、自分自身に勇気が持てないからだった。でも、勇気を出して、イラストをみんなに見てもらいたいという気持ちも込めてアカウント名をcourogeした。そして、見てもらった人にも勇気を持ってもらえれば、なおいいと思っている。 休止していた間もずっとイラストは描き綴っていた。陽翔を描いたもの、彼の笑顔、彼の指、彼の横顔――数えきれないほど。だが、それはまだ誰にも見せていない。そのおかげで、アカウントを再開してもコンスタントにイラストを公開することができている。やはり俺にとって絵を描くということは、一番心休まる瞬間なのだ。 筆を走らせる時だけは、全ての恐怖から解放される。色彩と線だけの世界。そこには、逃げなくてもいい自分がいる。 アカウント再開から一ヶ月が経った頃、陽翔からデートに誘われた。毎日大学で会っているのだが、外で会うのはこれが初めてだ。なんとなく恥ずかしさが伴いながらも、初デートにウキウキと心が踊った。新鮮さを感じながら服を選んでいると、スマートフォンが震えた。『十時に大学近くのカフェに来て』 俺の家に十一時に迎えに来ると言っていたのに、何か予定が変わったのだろうか? 少し不安になったが、すぐに返信した。『分かった。今から向かうね』 突然どうしたのだろうかと不思議に思ったものの、時間通りに指定のカフェに行った。中に入ると、そこに陽翔の他に、晴臣ともう一人、バンドのベーシストが座っていた。三人は何か話し込んでいるようだった。「叶翔! 急にごめんね」 俺が入って来たことに気づいた陽翔は立ち上がって、ぱあっと明るい笑顔を俺に向けてきた。夏の日差しのような、まぶしいばかりの笑み。手招きされ、バンドメンバーのいる席に向か
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第四十話 ふたりで過ごす、ふつうの休日

 バンドメンバーとの話が終わり、俺と陽翔は席を立った。拓真と晴臣にお辞儀をして、カフェを出た。外は初夏を思わせる日差しだが、湿気がなくカラッとしているからか過ごしやすい。木漏れ日が通り沿いの歩道を斑模様に彩っている。「陽翔、改めて、おめでとう!」 俺は陽翔に笑顔を向けると、「ありがと」と小さく呟いてスッと手を繋いできた。指を絡ませて恋人繋ぎをする。ついでに手の甲にチュッとキスを落としてきた。「……っ! な、何っ……!」 頬が熱くなり、思わず周囲に目を配る。でも、誰も気にしていないようだった。「だって、あいつらさー。今日デートだって言ったのに、その前に連れてこいって言うんだもん。二人っきりの時間、少なくなったじゃん」 こてんと俺の肩に頭をのせて甘えてくる陽翔は可愛い。その重みが、今ではすっかり心地よく感じられるようになっていた。 がっ! こっちは初彼氏、初デート、初屋外恋人繋ぎなんで、結構テンパってるんですけど?「ま、まぁ……、それもそうだけど……」 俺は愛おしい陽翔の髪の毛に手を入れて、頭を撫でてやった。スリっと擦り寄ってくる陽翔は本当に大型犬のようだ。ついでにつむじにキスを落としてやると、機嫌が治ったのか、顔をあげ元気よく言った。「叶翔、大好きっ! じゃあ、行こっか?」 急な襲撃に俺は思わず赤面してしまった。陽翔の「好き」という言葉は、いつも真っ直ぐに胸に刺さる。迷いのない、嘘のない、純粋な思い。俺たちは手を繋ぎ、肩を寄せ合いながら当初の目的のデートへと向かった。 デートと言っても、どこか特別なところに行くわけでもない。 まず本屋に行って、俺はイラスト関連の書籍の棚の前で、陽翔は音楽関連の棚の前で雑誌や本を立ち読みしていた。本のページをめくる指の動きには、目に見えない熱量がある。きっと、聴いたことのない音が頭の中で鳴り響いているのだろう。 一通り見終わった陽翔が、スッと俺の後ろにピッタリとくっついてきた。「どう? なんかいい本あった?」 言葉をかけると同時にするっと手を繋いでくる。さりげなくやってくれるのだが、俺は反射的に体がビクッとしてしまう。まだ、こういうことには慣れない。 カフェでは向かい同士に座り、お互い頼んだランチを「あーん」と食べさせる。これは毎日のように大学の中庭でお弁当を食べる時にやっている行為で、もうすっかり慣
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