Semua Bab ゆるきゃん〜俺がハマったのは可愛い幼なじみでした: Bab 61 - Bab 68

68 Bab

48話 彼が伝えたい事

 48話 彼が伝えたい事  まるでシキタリは自分の兄のようだった。見た目も何処か伊月と似ている。雰囲気はどちらかと言うと近いのが夏樹なのかもしれない。感覚的に、本当に実の兄なんじゃないかと思ってしまうくらいだった。彼の瞳は青がかっている。見ていると吸い込まれてしまいそうなくらい綺麗な瞳だった。「……そうですか。パートナーの方が彼に化けてここにいた、と」 無意識に自分の内情をペラペラと喋ってしまった伊月は、後の事を考えずに口走っているように見えた。その姿を見ていると、まだ若さが見え隠れしている。何が起こっているのかを把握する事で、見えない不安から逃れようとしているのが明白だった。例え、知っている人でも、決められた婚約は、彼には重たいのかもしれない、と心の中で感じている。何を言えばいいのかは出てこないが、シキタリは今の自分に出来る事は、伊月の話を聞く事だと納得していく。伊月がシキタリの存在を無意識の中で兄と認識しようとしている事にも、気づいている彼は、実の弟の心の不安を取り除く事に集中する事にしたようだった。「私には状況を変える事は出来ません、しかし話を聞く事は出来ますよ」「……でも親父に報告するんでしょ」 自分の素直な気持ちを言葉に変えたシキタリは、親父のことを持ち出してきた伊月の様子を見て、首を横に振る。それで彼が信用してくれるかは彼次第。実際に何かあった時には報告をするように命じられているが、それ以外には規定はなかった。何処かに吐き出してしまいたい伊月は数分考えると、決心出来たようにシキタリの目をまっすぐ見つめながら、信じてみる事にする。 伊月はベッドの上に座ると、その光景を見守るように側に近寄っていく。決して気を抜く事のない表情で、その場で立っているシキタリがいた。 昔の自分の環境の事、学園時代の薫との関係、そしてここまで至った経緯を全て話していく。薫が側にいても、知ってしまえば巻き込まれると考えていた伊月には言えなかった。それでもその世界に沈んでいるシキタリには、隠さず全て言う事が出来ている。「……スッキリしましたか?」「ありがとう。僕の話ばかりですまない」「いいんで
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-12
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49話 渚登場

 49話 渚登場  扉を開けると、大きなシャンデリアが目に映った。まるで舞踏会に来ているような錯覚を感じながら、家の主人を待つ事になる。薫はこの場所が自分にはそぐわないと思いながら、広々とした空間に身惚れていく。「いらっしゃい、貴方が薫くんね。よろしく」 話しかけてきた人物は見た目若く見えるが、かなり落ち着いている様子だった。黒い髪を靡かせて、周囲に妖艶さをアピールしている。その姿を見ていると、思った以上に緊張感が高まっていく。「初めまして、よろしくお願いします」 礼儀作法の一つも分からない薫は、なるべくその人物に嫌な気持ちをさせないように、自分なりに考えて会話を進めていく。彼女の名前は渚と言うようだ。どことなくノビラに似ている不思議な女性だった。自分の母親の役を受けてくれた彼女の年齢は不詳。自分から聞くのも失礼だと思い、聞く事はなかった。「緊張してるのね。ここでは楽にしていいのよ。私達は今日から式が終わるまで家族なんだから」 赤いドレスを見せつけるように着こなしている彼女は、どこかの貴族のように思えてしまう。現実離れした容姿を持ち、自分の母親とはかけ離れていた。コツコツとヒールの音を靡かせながら、目の前に降りてくると、にっこりと微笑みながら手を差し伸ばせてくる。「案内するわ、いきましょうか」 渚はそう言うと、薫の手を優しく添えながらエスコートをし始める。性格は全く逆なのに、見れば見る程ノビラに似ていて、目をまん丸にしながら、彼女を観察している自分がいた。 赤い絨毯で敷き詰められている屋敷には彼女以外に人の姿はない。この広い屋敷で一人で住んでいるのだろうかと、妄想を膨らましていく。「疲れたでしょ、今日からここが貴方の部屋よ。好きなだけいて頂戴」 通された部屋はシンプルな色使いで落ち着いている。ベッドは思った以上に高級そうだ。木で作られている部分に彫刻があしらわれている。まるで最初から自分が来る事をわかっていたような部屋のインテリアに驚きながら、キョロキョロ確認していると、落ち着きがないように見えたのか、クスリと笑われてしまっ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-13
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50話 機械技師と身の上話

 50話 機械技師と身の上話  どうやら渚の執事との話に時間がかかったようで、部屋に来るのはそれから1時間経ってからの事だった。いつ来てもいいように、気合いを入れていた薫は、そのままの状態を保てる訳でもなく、つい表情が緩んでしまう。「遅くなりすみません。今日はどうされたんでしょうか」 すっかり存在を忘れられていたと思っていた。彼にも彼なりの話があったのだろうと、自分に無理矢理、納得させようとする。「大丈夫ですよ。こちらこそ、急に呼んですみません。変声機の方ですが……正常に作動しないんです、見てもらえますか?」 何があってもいいように、いつも道具をスーツケースに入れて持ち歩いている機械技師の人は、床にスーツケースを置くと、中身を確認しながら、道具を取り出した。「それでは、変声機の方を借りてもよろしいでしょうか?」「はい、これです」 蓋を開ける前に動作確認をする。依頼者がスイッチを切ったまま、使っている可能性が高いからだ。話を聞くと、結構同じ事があるようで、その中の大半はスイッチの入れ忘れのようだった。最初に説明をして、渡すように心がけているが、それでも後を経たないらしい。僕の場合は接触不良が原因でスイッチがオンの状態でも、オフになるらしく、中身を分解しないと直せないとの事だった。「お時間かかりますが、よろしいですか?」「……お願いします」 自分の家のように扱っていいと聞いているが、それでもここは他人の屋敷だ。自分が勝手に決めてもいいのかと考えたが、どちらにしても今の自分には必要不可欠なものには変わりない。後で渚に謝ろうと思いながら、彼の作業を見学する事にした。こういう事でもないと技術者の作業を見る事がないから、貴重な経験になる。「どうして変声機をご使用しているんですか?」「え?」 唐突に聞かれた言葉に反応すると、薫の顔をチラリと見て、話を続ける。「貴方のような方が変声機を使用するなんて、意外でしたから」 最初の挨拶と今の彼では全くの別人のように見える。あんなに礼儀正しく、腰が低
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-14
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51話 未知の経験

 51話 未知の経験  調整が終わった変声機の電源スイッチを押して、以前のように起動するか確認してみる。最初に薫の声に合わせる為にピーと小さな音が発生されると、小さくあーと声を出した。その音を基本に、データーの中に薫の声の特徴などがインプットされていく。音が切れると、ベースになった声を元に元々あるデーターに打ち込まれた声に変わっていった。 何故、最初に自分の声をインプットしていくのかの理由が未だ分からない薫は機械技師に質問の一つとして聞いてみる事にした。「どうして最初に自分の声を取り込むんですか?」 一番初めに使用した時もそうだった。データー上に他の声の情報が書かれているのなら、不要にも思うのだが、どうも原理が見えてこない。「いくらデーター上で組み込まれているからといっても、誤作動で君の声に近いものになる可能性もあるんだ。それをクリアする為に、念には念をね」「そうなんですね」 感慨深い声を出しながら、彼の説明に耳を傾けていく。時折、専門用語が出てくるのだが、さっぱり分からないのが現状だった。これ以上、質問を投げかけてもそれ以上の答えは返ってこない事を悟った薫は、丁度いい所で切り上げていく。 完璧な物を作っているとは言い切れないと言う事だろう。人の手で組み込まれているからこそ、何かあった時の対策の一つとして、それらがあるのかもしれない。そう考えると、頭の中に広がっていたモヤモヤが晴れていった。「起動しても問題はないようですね。それでは私は失礼します」 支払いの金額がどれくらいなのかを心配していた薫は、慌てて財布を取った。中身のお金を取り出そうとすると、薫の行動に気づいた機械技師は、手で行動を制しするように告げる。「お代は大元から頂きますので、大丈夫ですよ」 一度出したものは下げられない気持ちになっている薫は、それでもと渡そうとするが、受け取ってはくれない。「私は裏で技術を提供している身でして、相場よりもかなりの額になります。それじゃ、足りませんよ」 五万円を突きつけていた手が、カタカタと震え出した
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-15
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52話 過去の匂い

 52話 過去の匂い  食事が終わるとデザートが出てくる。食事をしている時にはお互いが自分の出された食事を楽しむ事に没頭していたせいか、無言を貫いていた。無意識に薫は空気を読んでいるようだった。「テーブルマナー心配しているようだったけど、大丈夫じゃない。誰かに教わったの?」 自分の食事を楽しみながら、相手のテーブルマナーにも目を光らせていた事を知ると、心臓がドキン跳ねた。「教わったと言うよりも父の見様見真似で……」 ここで父と表す人物は他界した父親の事だった。伊月の父親の事は親父と呼び、自分の父親の事を父と呼ぶ。いつも言い間違いをしてしまいそうになるが、今回はきちんと区別し、言葉にする事が出来た。「お父さん……ね。今もご健在なのかしら」「……いいえ。昔に亡くなりました」 その一言で空気がひりついていく。薫を見つめている渚の瞳が微かに揺れると、代わりに暗闇が生まれたのを感じた。伏目がちな彼女の姿を見ていると、自分の父親を知っている人なのかもしれないと感じ始めた。本当は聞きたい。それでも、今は周囲に使用人達がいるから、この話題は避けた方が無難だろう。そう思っていたのに、渚は薫の意図に気づく事なく、話を続けていく。「そう、あの人が……」 一瞬、顔を上げると、そこにはいつも通りの彼女が存在している。聞き間違いだったのだろうか。憂を帯びた言葉からは、父に対しての愛情が隠れているように感じたのだが。 この時の薫は渚と父の関係性を知る事はない。ただ目の前に繰り広げられている物語があるのは確実な真実だった。思い出をそっと心の奥底へ閉まった渚は、悲しそうに微笑むとケーキを掬い上げながら言った。「貴方が生まれた事は奇跡なのよ。それは周囲の人もそう感じているはず……何か困った事があったら、いつでも私を呼んでくれればいいから」「ありがとうございます」 急に身近に感じた渚から距離を取ろうとすると、そんな僕を見て敬語を使わないように、と釘を刺していく。他者に敬語を使うのはいいけど、自分にはフランクに話して欲しいと言われ、頷
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-16
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53話 最終話 それは彼達の物語

53話 最終話 それは彼達の物語 結局ギリギリまで滞在させてもらう事にした。薫に対して何か言いたい事があったように見えた渚は、言葉を飲み込んで受け入れてくれる。一人で伊月の事を考えたかったのかもしれないと思ったようだった。ギリギリまで自分の事を隠し続けてきた薫は、覚悟を決めていく。結婚式にはマスクの彼としでではなく、狭間薫として伊月の側にいたいと考えていた。全てを説明して分かってくれるとは限らない。親父の考えもあるが、薫自身の人生に関わる事だ。誰かのせいにして、どこか責任をなすりつけていた事に気づいた薫は、服を整え、伊月の待つ結婚式場へと向かっていく。 久しぶりに会う伊月に、なんて声を掛ければいいのか分からない。それでも今の自分が一番したい事をしようと思う。自由の中でぴょんぴょんと跳ねるワンコくんは、昔と同じ光を抱いている。その光に飛び込んでいきたいと願いながら、車に揺られていると、時間はあっと言う間に過ぎていく。 「着きましたよ、薫さん」 シキタリはにっこり微笑みながら、告げてくる。薫はその声に後おしされるように、伊月の元へと走り出した。 時間は9時半を回っている。式が始まるまで後30分。受付の用意をしている親父を捕まえると、伊月が来ているのかを確認した。 「遅かったな……伊月なら来ているよ」 「そっか……よかった」 自分が彼の側から離れているのを理由に、逃げ出したんじゃないかと焦っていた。しかし親父はそんな僕とは反対で、落ち着きがある。この時の親父の様子を考えれば、自分だけが蚊帳の外になっていたんだと思い知る事になる。親父と別れ、コツコツと控室に向かっていると、伊月の控室の前にたどり着いていた。少しでもいいから、伊月に会いたい気持ちが強くなってしまい、抑えられない。どこかで迷っていた自分の気持ちを確かめる為に、あえて渚の所でいる事を選んだ薫は、彼に合わせる顔がないなと感じていた。 しかし、今日の挙式が終わると、今までの関係性とは違う、人生のパートナーとして支え合っていく事になる。 右手で拳を作り、軽くノックをする。どんな反応をされるのか不安が押し寄せてくるが、そんなのは杞憂だったと知る事になる。 「どうぞ」 中には鮮やかな着物を着た伊月の姿が存在している。化粧をしている彼は、妖艶さを醸し出しながらも、美しい仕草で薫
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-17
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番外編 天田桐也の物語

  桐也は久しぶりに二人の姿を見ていた。そこには幸せそうに微笑んでいる薫と伊月がいた。その姿を見ていると、ズキンと心の奥底に痛みが走っていく。二人は白い着物に包まれて、支え合って歩いている。薫の伊月を見つめる目線は、今まで感じた事のない柔らかさと甘さが漂っている。側から見ても、分かるくらいに溺愛している。「……何してんだ、俺は」 諦めるはずなのに、どうしてもこの気持ちを手放せない自分がいる。グッと涙を堪えながら、嬉しそうに表情を作るのは至難の技だった。そんな桐也を遠くから見つめている人がいる事に、気付けないまま、式は進んでいく。 小さい声で前の席に座っている人達が、何かを話している。気になった桐也は、耳を澄ませ、聞き耳を立てた。「どうにか挙式が出来てよかったよな」「ああ。正体を偽っていた時は、胆が冷えたぜ」 他の参列者達は二人を見つめているのに、その二人だけは、違う空間にいる。まるで日常の中で雑談をしているかのように、フランクだった。「薫さんも親父の言う事、聞き過ぎな」「それな」「いくら坊ちゃんの事を考えてでも、別人の姿で婚約とかありえないだろう」 二人の声はヒートアップしていく。この内容を他の人に聞かれたらマズイのではないだろうか。桐也はゴホンと空咳を溢すと、二人の背中に視線を注がせていく。殺意を感じた二人は、何もなかったように、会話を中断させ、今日の主役の二人の姿を見始めた。 話の内容からして、薫が別人になりすまして婚約した事を知った桐也は、ため息が出そうになっている。ここで自分だけが不幸せオーラーを出しても、よくない。 自分の中で消化出来るかどうかは不明だ。それでも出したい感情を、堪えると、全てを飲み込むように、空気を吸っていく。 無事、挙式が終わると用意された別室へと案内された。ゾロゾロと移動していく人の群れは、大名行列のように、きっちり列を作っている。裏組織の集まりの中に、自分が埋もれている事を思い知ると、疲れが増していく。その時だった、後ろの方から聞いた事のある声が響いたんだ。「僕は関係者だから、どいてどいて」 ガツガツと人の波をかき分けて、どんどん前にのめり込んでいく人がいる。その声は明るくて、力を感じる。「……何だよ」 独り言を口に出すと、その人物が自分の後ろにいる事に気付けないまま、歩いて行こうとする。その時だ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-17
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始まりを告げる鐘

 2   夏樹がどんなふうに過ぎしていたのかを知らない桐也は、たくましくなった彼の体を見て、ゴクリと唾を飲み込んだ。性格はあの時のままなのだが、肉体はかなり磨かれていた。急に恥ずかしくなった桐也は、目線を逸らせると、何もなかったように演技をする。「元気にしてた?」「ああ。夏樹は?」「元気だよ。桐也も元気そうで安心した」 急に出て行ったのに、そんな事を感じさせない夏樹の態度に度肝を抜かれた。あの時よりも自信を感じさせる彼の姿は、どこか薫と似ていると思い始めていた。自分の気持ちを隠して、彼と付き合っていたのに、今更こんな気持ちを抱くなんて、と目眩を感じてしまう。 横並びになって、歩く二人は、側から見ると恋人同士に見える。和気藹々と会話を楽しむ二人から視線が逸れた周囲は、興味をなくしたようだ。 歩いていくと、一つの大きら扉が待ち構えた。用意が出来たとの事でゆっくりと開かれていく。そこには沢山のテーブルに包まれた宴会場が現れた。ゆっくり入っていくと、指定された席に座っていく。自分の席に着くと、夏樹は納得がいっていないようで、司会者に話をつけに言った。 桐也のテーブルには夏樹はいない。しかし、話をつけてきた夏樹は自分の席のように、横に座ると、満面の笑みで桐也にウィンクした。「ここ、お前の席じゃないだろう」「ん? 今から僕の席になったから。大丈夫だよ」 当たり前のように断言すると、隣の席らしき人がこちらを見ている。急に変更された席順に納得がいかないようだった。じっとりと突き刺さる視線が痛くて堪らない。「気にしないで、楽しもう」 今までの夏樹ならガンを飛ばしてきた瞬間に立ち上がっていただろう。それなのに、今、目の前にいる彼は余裕を持って楽しんでいる様子。性格は全く、変わっていないと思っていたのに、大人になっていた事実を目の当たりにすると、何だか遠い存在に見えてくる。知らない夏樹が目の前にいる。 司会者がマイクを持ち、二人の名前を口に出すと、引き寄せられたかのように薫と伊月が登場した。二人を祝うように、沢山の風船が宙に浮いている。 一人だったなら、辛い気持ちが多くなっていただろう。二人がテーブル席を回るたびに、どんな顔をして祝えばいいのか、考え込んでいたのかもしれない。それでも、隣には夏樹がいる。彼の存在が救世主のように思えてならない。「辛いよね
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-17
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