8話 忠告と憎しみ 和田との1日が終わろうとしている。短時間で終わらすつもりが、和田が離れようとしなくて、この時間まで一緒にいる事になってしまった。告白されて悪い気はしないが、引き下がる気のない和田に対して、ため息が出そうになる。 「こんな時間まで付き合ってくれてありがとう。凄く嬉しかった」 最初は敬語で話していた和田も、徐々に慣れてきたのだろう。いつの間にか敬語がなくなってきている気がする。フランクに話すように努めているが、もしかして変な期待をさせてしまったのだろうか。 「もうこんな時間だし、明日仕事だから、そろそろ帰ろう」 仕事を理由に切り上げようとしている薫の様子を観察しながら、何やら企みを感じる表情へと変化していく。和田は顔に出るタイプのようで、隠すのが苦手みたいだった。嫌な予感のした薫は、逃げようとする。 「先輩、そんなに僕といるの、そんなに嫌なんですか?」 キュルリンとどこからか効果音が聞こえてくるような背景を見せられ、固まってしまう。本人はわざとあざとく見せているようで、体制のない薫はどうしたらいいのか分からずに、硬直するしかなかった。 その表情をされると、どうも断りづらい。ある意味、天性の才能だ。 「あざとくするな。そんな顔されても、無理だから」 勇気を出して、本心を伝える。泣かしてしまうかもしれあいが、こんな事を何回も繰り返されては困る。その表情に弱いのは認めるしかない。それでも、時間は永遠にある訳ではないのだから── ◻︎◻︎◻︎◻︎ ドット疲れが出た薫は、やっと落ち着けた現実を噛み締めながら、肩の荷を下ろすと、缶コーヒーをゆっくり味わっていく。和田から逃げるように、切り上げてきたが、無理矢理だったので、明日から職場に行くのが憂鬱だ。 「今日、行けなかったなぁ」
Terakhir Diperbarui : 2025-06-12 Baca selengkapnya