Semua Bab ゆるきゃん〜俺がハマったのは可愛い幼なじみでした: Bab 11 - Bab 20

68 Bab

支え 新しい関係性

 第19話 支え  「ちょっ……伊月」「黙ってて、僕の番だから」 薫は積極的な伊月に驚きながら、起きようとするが、押さえつけられてしまった。見た目に反して腕力に自信がある伊月をどうやって止めようか考える。体もキツいはずだ。いくら同意があったとしても、それは媚薬の力によるもの。理性を失ってしまった自分を責めながら、申し訳ないように見つめた。「そんな顔しないで。嬉しかったんだから」「痛いだろ? 休んだ方が……」 その提案はことごとく却下されていく。伊月からしたら自分だけが恥ずかしいと思い込んでいるみたいだ。「同じ所につけてあげるね」 ニヤリと笑うと、まずは首筋から始めていく。皮膚を吸ってみるが、中々くっきりと跡がつかない。薫はキスマークが付きにくい体質のようで、伊月は徐々にムキになっていった。 チュと赤ちゃんのように吸うと、さっきよりは跡が残るようになっていた。それでも納得出来ない伊月は軽く歯を食い込ませ、今までより強く歯型がつくように、強く噛んだ。「いっつ……」「キスマーク付きにくいんだね。だったらこれで僕のものだって印、付けてあげる」「おい……大丈夫なのか?」  意識を逸らそうと話をすり替えようとする。薫が何を言いたいのか、理解した伊月は「夏樹に任せてるから」と言うと、おもむろに貪り始めた。薫が深入りしてはいけないようで、話をぶり返そうとしても、聞き入れてくれない。こうなったら、伊月の好きなようにさせるのが、今は得策なのかもしれないと納得する事にした。 首筋から始まり胸上、脇と沢山の噛み跡を増やしていくと、薫も痛みにようやく慣れてきたようで、顔を歪ませながらも拒絶しないように、伊月を支え続ける。 体を動かすと下半身が痛いようで、フラっと体制を崩す伊月を抱きしめると、耳元に息を吹きかけ、低音で囁いた。「無理しなくていい……大丈夫だから」 ここまでムキになるのは、自分の知らない自分の行為を思い出さないように、上書きしたかったのだろう。不安を見せたくない一心
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-02
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トラブルを巻き起こす男の子 サプライズ

 第21話 トラブルを巻き起こす男の子    1人になった薫はさっきの人物の事を思い出す。なんだか嫌な感じがしたからだ。敵意を向けているような、異様な空気感を放っている匂いが漂っていた。何か言いたい事があるのでは、と足を早めるとドンとぶつかってしまった。「すみません」「っつ……」 ぶつかってきた相手は尻もちをついてしまった。焦りながらも薫は手を差し出し、大丈夫?と不安そうに問いかけた。「大丈夫です、僕も前見ていなくて……」「俺はいいんだよ、ほら」 引き上げるとヨロッとよろけてしまい、薫の胸元に倒れ込んだ。支えようとしたが、咄嗟に抱きしめてしまった。ヤバいと感じながらも、どうしたらいいのか分からず、硬直している。「あっ、薫ー、おはよっ」「……伊…月」 後ろからボフッとワンコのようにじゃれてきた伊月は、中々動かない薫を不審に思い、正面に回った。「は?」「いや……これ、は」 さっきまでご主人様にベタ惚れだったはずのワンコは修羅の如く、睨みを効かせ薫の耳を摘んだ。「その手、離してよ。誰その子」「事故だ、事故」「言い訳、無用!」 パッと手を離すと、顔を隠しながらペコリと頭を下げた。伊月はそれ所ではなく、薫を攻めまくっている。その様子を見ていた男の子はプッと吹き出し、ゲラゲラと笑いだした。「なんなの、コイツ」  標的が薫からその子へと変わった瞬間だった。黒髪でメガネをかけている大人しそうな子は、前髪をあげるとニッコリと微笑む。「夏樹ぃぃ? なんで」「誰ですか?それ……僕は伊月です」「「!?」」 雰囲気が全然違うので、まさか夏樹だとは思わなかった2人は、口をあんぐり開けながら、静止している。そんな2人の反応が、心地よかったのだろうか。得意げにウィンクすると「よろしく」と二人の間に入り、肩をポンっと叩いた。「今日から俺が伊月で、お前が夏樹な」 影武者
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-03
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過去のしこり 未来へと 星空の彼方

第23話 過去のしこり 自分の手から離れていくのは寂しいが、そうやって徐々に大人になっていくのだろうなと郁人は思いながら、車の窓を少し開けた。いつもなら下の者達が運転しているのだが、今日は違う。久しぶりに運転をすると伊月と夏樹で旅行に行った事を思い出した。 「時間が経つのは早いな」 助手席に座っている凪にそう言うと、伊月と同じ顔で微笑みながら「ああ」とだけ返答する。 こうやって二人で会うのは久しぶりの事だった。親友であり、元恋人の二人は大人になり、違う人生を歩んでいる。 「伊月の事、ありがとうな」 凪は申し訳なさそうに伝えたが、郁人は全く気にしていない様子だ。2人の間に起こった事は、他の人には言うつもりもないし、伊月と夏樹も知らないままでいてほしい。そう願いながらも、こうやって交わり出す運命には戸惑うばかり。 「お前の最後の頼みだからな。断る訳ないだろう」 「……ははっ、そうだな」 「戸籍が変わっても、父親はお前だけだからな」 郁人は笑顔で繕いながら語ると、じんわりと目が熱くなっていた。泣いてはいけないと分かっているのに、今は笑顔で居てやりたいと思っているのに、人間はふいに感情的になってしまう。 「俺らが歩いた道をあの子達も、選ぶのだろうか」 いつかは別れがくる、それが分かっている2人は若かったあの頃の自分と重ねながら子供達を見守っていくのだろう。 「伊月に恋人が出来たな、根性がある」 「知ってるよ、まさか狭間先輩の息子とは思わなかったけどな」 青春時代を共にし、互いの大切なものを奪う事で立場を守ろうとした祖父達のようにはならないように、見守ってきたはずだった。 その中で1番犠牲を背負
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-04
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第二章 1話 オセロ

 第二章 1話 オセロ   青春の匂いは瞬く間に、過去の産物となっていた。あれから俺達は別々の道を選択しながら、また再開出来る日を待ち侘びている。「薫。最近付き合い悪くないか?」「天田先輩。仕事忙しいんですよ。俺も、もう社会人ですからね」 あの夜を境に伊月の消息は掴めていない。薫は勿論、天田にも知らされる事はなかった。あの時は、大人の事情というものを、本当の意味で理解出来ていなかった薫達は、遊び感覚で立ち向かってくる強者を叩き切る主人公のようだと錯覚していたのかもしれない。今なら当時よりも冷静に事を運べたはずだ。「伊月が何を抱えているのか、俺らは分からない。だからきっと……」 薫達に危険が及ぶ前に、姿を消す選択をしたのだと安易な推測だけど、それしか思いつけない薫は、悲しそうに過ぎていく電車の影を追いかけた。 側にいたはずなのに、簡単に溢れていく本当の幸せを取り戻すように、手を伸ばすが、届かない。 仕事帰りの二人は、ため息をつきながら、あの時とのギャップの差に苦しむしかなかった。 太陽のように、輝いて、その中心にいた伊月の笑顔を胸に抱きながら──「また会いたいか?」「願いが叶うなら会いたいですよ」 口に出すと急に現実味が増した。きゅっと胸の辺りが苦しくなっていく。自分の気持ちを誤魔化す事の出来ない不器用な薫は、そうやってやるせなさ、歯痒さを外へと排出していく。 どんな言葉を書ければいいのか決め切れない天田は、締めていたネクタイを緩ますと、想いを願いに変え、この言葉が伊月へと届くように、と心の中で呟いた。「そうだな」 大丈夫だと言いたいが、七年も行方不明だと、変な期待を向けるのは、薫が今以上に、苦しんでしまう事だと知っている天田は、本心を飲み込むと、背中を優しく撫でた。  空は繋がっている、あの時見た景色の残影が彼らの瞳の裏に映って離れる事はなかった。  ◻︎◻︎◻︎◻︎  暗闇の中でワイン
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-05
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2話 日常から非日常への始まり

 2話 日常から非日常への始まり  事務作業を終えると、疲労を誤魔化すように、肩を回した。薫はある程度、自由を与えられている。この会社は一定の作業量を終えると、自由に帰宅してもいい。出勤も、自由出勤という好条件。それが終わると、自分独自の企画資料を製作出来るようになっている。色々な業界に精通しているからこそ、複数の方面の企画を求められている。「今日の作業は終わりっと」 小さい会社だが、自分に合ったスタイルで仕事が出来るのは有り難い。主婦の方や、学生も、臨時でアルバイト採用している。「今日はもう終わりか?」 この会社のトップは天田だ。事業を展開していく計画を見せられ、薫は引き抜かれた形になっている。「社長。終わりました」「その呼び方はやめろって」「ここは会社ですからね。ちゃんと区別しとかないと」 いつまで経っても、敬語の抜けない薫に、もっとフランクで、と言うと、それ以上は言ってこない。「終わったなら、付き合え」 ニヤリと何かを企む笑みを見せられながらも、それ以上は、何も考えず、職場を後にした。  ◻︎◻︎◻︎◻︎  ドアを開けるとカランと鐘の音が最初に迎えてくれた。音はまるでドミノが倒れていくように連鎖しながら、周囲の視線がこちらに集まってくる。「いらっしゃいませ」 喫茶店の雰囲気に包まれながら、案内された席に座ると、ついキョロキョロと周りを確認してしまう。初めて入る店は、知らない空間に迷い込んできた薫を不思議そうに、観察していた。「喫茶店みたいですね。でもここ」「そう。昼は喫茶店だが、夜はスナックやってるんだ。俺の知り合いの店」 沢山のボトルがショーケースに置かれている。ここの常連客のキープしているお酒だろう。「いいだろ? 俺のオススメ」 得意気に語る天田を見ていると、悩みを忘れてしまいそうになる。薫は今抱え込んでいる物事を、一旦忘れる事にした。 返事はいらなかった。ただ頷いて
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-06
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3話 動き出す君達

3話 動き出す君達 「ねぇ気付いてよ、薫」 毎日毎日、伊月が出てくる。夢を見ているはずなのに、妙にリアル感が否めない。薫の頬にキスを落とす伊月は微かに泣いている。 「い…つ」 側にいられたら、どれだけ幸せだったのか噛みしめながら、二人は違う空間で想いを呟く。 「こういうふうにしか……」 夢の中に沈んでいく。二人でいたはずなのに、一人で遠くに沈んでいく。魘されながら伊月の名前を呼ぼうとする薫を阻止するように、唇を落とした。 「おやすみ、薫」 誰にも聞こえない。誰にも届かない。伊月は側にいる薫に名残を感じながら、闇の中へと溶けていった。 切なくて苦しい夢を見ていた気がする。最近は得に同じ夢を繰り返し、見ている。全ての内容を覚えている訳ではない薫は、思い出そうとするが、自分に語りかけてくれていた人物の顔を認識出来ない。もしかして伊月なのだろうか、と考えてみたりもするが、そんな訳ないとフルフル首を横に振った。 都合のいい夢を見て、伊月を失った現実から逃れようとしているのかもしれない。人間は夢の中にも心理を散りばめている。それは全て無意識の領海。 「寝不足ですかぁ? 狭間先輩」 「ははは。昨日ちょっと遅くまで起きていてね」 嘘ではない。意識が落ちる瞬間までドラマを見ながら、微睡んでいた。そのドラマを見て、切なくなってしまった薫は、俳優を伊月と重ね、見ていた。どことなく雰囲気の似ている俳優だったからだろうか。それが影響して現在がある。 「考えすぎはよくないですよ。お肌の敵だし」 ぷくっと頬を膨らますのは、最近入った和田だ。見るからに可愛い男子と言った感じ。かなりの童顔だが、今年で二十二歳になったばかりだ。可愛らしい、美容に力を入れる和田のキャラが雰囲気が伊月と似ていて、甘くし
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-07
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4話 二人の獣

4話 二人の獣 姿を変える事は出来ない。今の自分が出来る事に尽力を尽くす為に、過去の自分が生きてきた奇跡を改竄する必要があった。有能な覆面を作る職人から特注で仕上げてもらったマスクを被ると、鏡に映る自分の原型が消えていく。彼の顔の形にピッタリと張り付くと、二度と脱げない呪いの仮面に見えてしまう。 「今はまだ会えないんだ。時が来たら、きっと会えるから」 彼はそう言うと、咳払いをする。余計な思考をかき消そうとするように、何度も何度も── 「覚悟は出来たかな。伊月」 「うん。でも今の僕の名前は……」 唯一、伊月の素性を知る人物は、これから起こる事を全て把握している立場の人間だった。阻止しようとする伊月とノビラ側にいる彼。二人は互いの目的の為に、協力関係を継続している。二人の繋がりを深めたのは、前にした仕事に関係している。 「ノビラは次のターゲットを決めたようだよ」 欲しいものは全て手に入れる。伊月が親の手駒になり、裏組織の解体に手を入れている事を知ってしまったノビラは、邪魔な伊月を裏切り者に仕立て上げ、罪人とて、信用も何もかも奪おうとした。確証が得られない情報だと周囲は主張し、伊月を守る為に、一つの組織が分断され、二つに切り分かれている。 「ふうん」 ノビラは伊月に異様な執着心を持っている。その事を知っている伊月は、無言を貫きながら、一つの考えを編み出したんだ。 「僕が出来るのはここまで。これ以上、動くとノビラに勘付かれる」 「大変だね、ゼロ」 伊月とゼロは互いの内情を確認するように、見つめ合うと、苦笑いをする。目的が違う二人は自分達の自由と希望の為に、ノビラの前へと立ちはだかろうとしている。ゼロは情報収集に長けている。その情報を手にする伊月はノビラ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-08
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5 話 進展

5 話 進展 いつの間にか天田に誘われなくても、ノビラの店に行く頻度が増えている。仕事が終わった後に行くのが日常になりつつあった。早上がりの時はコーヒーを飲みに行ったりしている。どこかの店に通う経験は、初めてだ。伊月がいた時は、二人の空間を優先していたし、この店を知る前は、仕事をして帰宅して寝るのが習慣になっていた。 いくら自由出勤と言っても、酒を残したママのはまずいので、なるべく十二時には帰宅するようにしている。 「薫くん。今日もお疲れさま」 「お疲れ、ノビラくん」 最初は客と言う事もあって適度な距離感だった。話していくうちに、何が好きとか、個人的な話をする事が多くなり、昔から知っている親友のように思い始めている。薫は薄暗かった日常に色を取り戻し、失った青春を、擬似体験しているような感覚に浸りながら、ビールを飲み干した。 「最初さ、薫くんを見た時、緊張してたんだよ」 「そうなの?」 照れながら白状するノビラは、酒が少し入っているのか、いつもよりも顔が赤い。大人びた雰囲気のいつもの彼とは違った側面を見る事が出来て、少し嬉しくなってしまう。 好印象に思えるが、それ以上の感情は見当たらない。伊月に対しての想いとは別の形をしている。どちらかと言うと弟的存在に考えている。その事を知らないノビラは、別の客に勧められたお酒をちびりと呑みながら、仕事へと戻って言った。 「にいちゃん、呑んでるか?」 この店の常連客の一人に声をかけられた。やたらスキンシップが激しい。どう対応したらいいのか分からない薫は、本音を隠しながら、愛想笑いを振りまいた。 「ノビラも可愛いけど、にいちゃんも可愛いね」 この人は男女関係なく口説く癖があるらしい。前にノビラに気をつけてと忠告された事を思い出す。いやらしい手つきで背中をさすってくる。徐々に下にいっているのは、気のせいだろうか。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-09
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6話 偽れない気持ち

6話 偽れない気持ち 久しぶりに電話がかかってきた。何やら相談があるらしく、近くのファミレスで待ち合わせをした。後輩の和田は、何かしら薫に接触をしてくる。いつもメガネをかけ、前髪で表情が読めないが、ちらっと見える瞬間、ドキリとしてしまう。 もしかして伊月なんじゃないかと思ってしまうくらいに似ている。全部を見た訳じゃないけど、人を惹きつける瞳が彼と合わさっていく。確認したい衝動に駆られるが、なかなか言えない。他人のそら似の可能性もあるからだ。 「どうしたんですか。考え事してました?」 数分前の薫の思考が蘇っていく。目の前に和田がいるのに、話が入ってこなかった。大切な相談なのに、こんな先輩で申し訳ない気持ちが増殖すると、切り替える為に、水を飲み干した。 「ごめん、あまり寝れなくて」 「そうだったんですか。体調悪いのかと心配しちゃいましたよ」 ヘラヘラしている薫の様子を伺っていた和田は、安心したようで雰囲気が明るくなっていく。職場で見る和田とプライベートが違って見える。 「相談だっけ。俺でよければ聞くよ」 「助かります」 柔らかな空間が作られていく。小腹の空いた二人は各々、食べたいものを注文し、話を続けていく。 「僕の兄が経営しているクラブがあるんですけど、一人で行くのが抵抗あって。先輩がご迷惑じゃないなら、一緒に行きたいなぁって……」 突然の誘いに、驚いた。ゴホッとむせてしまう醜態を晒しながら、落ち着こうと自分に言い聞かせていく。仕事の事で悩んでいると考えていた薫は、まさか和田からクラブの話が出てくるとは、考えもしなかったようだ。 「一緒に?」 「はい。迷惑ですかね?」 この年齢になって、クラブに足を踏み入れた事などない。そんな事、口が裂けても言えない空気に、たじろいながら、詳しく話を聞いてみる事にした。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-10
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7話 彼しか知らない裏側

7話 彼しか知らない裏側 どんな姿でもいい、君を見守っていたい。その気持ちが膨れてしまった伊月は、行動に出てしまった。 「ハクトさん。僕に新しいマスクを作ってください」 ハクトは伊月が仕事に使う仮面を修復しながら、耳をぴくりと動かした。伊月から依頼を聞くとは思わず、作業に集中していた手を止めた。 「何に使うつもりだ?」 簡単に依頼を受ける訳にはいかない。簡単に別人になれてしまうこの技術を利用されては困るからだ。ゼロを通しての依頼は、倍近くの金と人脈が動く。昔、助けられた恩義も含めて提供しているのが現状だ。 「金なら出すよ。ハクトさんに迷惑はかからないから」 ハクトの問いかけをはぐらかしながら、目線を逸らしていく。昔の恋人の側にいる為に、なんて組織的に許すはずがない。だからこそ、これ以上、伝える事が出来なかったんだ。 「仕事はちゃんとする。足もつけない。ただ、人を守る為に必要なんだ。今はそれしか言えない」 真っ直ぐな瞳を向けてくる伊月からは、嘘をついているようには見えなかった。本当はゼロの承諾がいるが、今回だけだと受ける事にした。ハクトも気分屋な所がある。組織に管理されている以上、派手な行動は出来ないが、誤魔化すくらいなら出来る。 「今回だけだぞ。基本、ゼロからの依頼しか受けないんだからな」 説得する事が出来た喜びを全身で表現している伊月を見ていると、自分の息子と重ねてしまうハクト。遠い日に追いてきてしまった記憶を掘り出しながら、懐かしそうに微笑んだ。 「ありがとう」 感謝の気持ちを大袈裟に表現する伊月は、昔と変わらない。過去の姿を知っている人は、ここにはいない。今いるのは、現在を生き抜いていこうとしている伊月の姿だった。 ◻︎◻︎◻︎◻︎ どんな連絡をして呼び出そうかと考えていると、同僚が話をしていた内容を思い出して、勝手なストーリーを作っていく。別人として薫と関わろうとして
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-11
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