Semua Bab ゆるきゃん〜俺がハマったのは可愛い幼なじみでした: Bab 41 - Bab 50

68 Bab

28話 軽やかになっていく

 28話 軽やかになっていく  何時間そうしていたのか分からない。時間の感覚がない二人は息を整えるように、呼吸を繰り返す。抱き合うだけじゃ物足りない薫は、様子を見て、落ち着くと、再び覆い被さった。「薫、どうしちゃったの?」「ん?」 いつもと変わりない笑顔を見せると、台所から水滴の音がした。まるで今まで塞ぎ込んでいた想いが漏れていくような感覚の中で、伊月を強く抱きしめる。「なんか変だよ」「俺はいつもと変わらないよ。伊月が可愛いから」 伊月は自分を信用してくれている。あれから一段落した事を聞いて、自分の思い通りの土台が出来た事で、肩の荷が降りたのかもしれない。「もうどこにも行かないで」 願いを口に出すと、まっすぐな瞳の薫を見て、動揺を隠せない。なるべく違和感を持たれないように視線を合わし、頷くと腕を回した。薫はそんな伊月を受け止めると、心の中で呟いた。言葉は何度も薫の内部で響きながら、決して離すものかと、力を込めていく。  何度も体を重ね合った二人の体力はとうに限界を超えていた。疲労感が全身を駆け巡ると、だらんとベッドに体を預けていく。「僕達、獣みたい」 腕枕をしながら、伊月が布団から顔を出し、耳元で囁いてくる。そんな姿が可愛くて愛らしくて、発狂してしまいそうな勢いだ。「少し休憩したらご飯でも食べようか」「そうだね。今日何も食べてないから、お腹空いちゃった」 ふふふと笑い合いお互いの体を堪能していく。するりとした滑らかな肌は女性にも負けないくらいだ。ケアをしているようにも思えないのだけど、薫が見ていない所で維持する為の努力をしているのだろう。何度、抱きしめても吸い付いてくる肌が、理性を壊そうとする。伊月の体力が持つなら、二日でも三日でも絡みあっていたい。 仕事の事なんて忘れて、自分にもっと溺れてくれたらどれだえ幸せだろうと願わずにはいられなかった。  ◻︎◻︎◻︎◻︎  ゆっくりしていた伊月はいつの間
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-28
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29話 出し抜かれる奴

 29話 出し抜かれる奴  電話が切れるとパソコンの前で険しい表情をしている人物がいる。トントンと右指で机を叩くと、考えを絞り出そうとしている。全ては偽りで真実を覆い隠す為にある。標的に気づかれないように、後処理をしていかなくてはならなかった。「名東さん、あいつらの好き放題させて良かったんですか?」 すっと影と重なっていたノビラは問いかけると、客用のソファーに胡座をつきながら、笑っている。「何の用だ」「僕の知らない所で、動きがあるみたいだなと思って、貴方なら何か知っているんじゃないかと思いましてね」 名東の前ではなるべく敬語を使うようにしている。ノビラは薫の計画に乗っかった形で、騙されているのも承知で、利用しただけだった。元々オークファンが主導だったのは幾億も昔の事だ。現代にそんなシステムを作ってしまえば、足がつくのは明白。「お前の力を試してみないか」 名東にそう唆されて、事実かどうか調べ上げたが、表面的には何の不備も見当たらなかった。しかし天田が持つ情報の中に、その事実を否定する答えが隠れていた。「俺をこんな扱いするなんて、どんな奴だろうと思いましたが……名東さんが絡んでいるんじゃあ、こっちも手が出せないじゃないですか」 その笑顔は笑っているようで一切感情は見えない。全てがハリボテで作られた紛い物だった。突き詰めていく、追い詰めているようで、名東からしたらそんなのは痛くもなかった。「お前は運がなかったんだ。あいつの為に犠牲になるようにシステムに組まれて端だよ、最初から」 全ての物事は伊月を中心に回っている。ただの代役でしかいないノビラはアクセントとして選ばれただけだった。全ては伊月の身代わりを作る為の演劇が開幕されていただけだった。その事に気づいた時には、伊月が背負った闇の仕事もノビラがしたように細工され、全ての警察に目をつけられている状況に陥っている。「名東さんがそんな事をする人だなんて、」知らなかった……ショック受けているんですからね、僕」 ノビラの言葉は全てが薄っぺらく、どこにでも飛んで
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30話 ボロを出した天田

 30話 ボロを出した天田  自分がミスを犯していた事を名東から知らされると薫は矛先をノビラから天田へと移した。伊月を自由にさせる計画を思いついたのは天田の裏ぎりがきっかけだった。学生時代から友好関係のあった人物だったから余計に、許せなかった。薫の事も伊月の事も、昔巻き込まれた事件の内容も全て天田から筒抜けになっていた。 その全てが気づかれているとは思いもしない天田は久しぶりに薫を誘い出した。自分から誘うつもりだった薫は、巡ってきたタイミングを自分のものへと消化していく。 いつの間にか喫茶飲み屋は姿を消していた。ここの経営費を出していたノビラが飛んだから、これ以上続けていく事が難しかったのだろう。あの店のママには多額の借金があるのも把握していたのだから、あの計画を立てた時点で、こうなるのは見えていた。「あの店、閉店したんだよ。ノビラがな無くなってから経営悪化したらしくてさ」「そうなんだ」 敬語を使っていた過去の自分はいない。いい後輩として、社員として繕ってきた表面の顔を作る必要は無くなった。どう転んでも、親父との約束がある限り、元に戻る事は出来ないからだった。「居酒屋でも行くか」「任せるよ」 別人のような態度に言葉を詰まらせながらも、平静を装う天田。何が彼を変えたのかを少しずつ言葉で読み解こうとしていた。そんな事をしても、自分の分が悪くなる事に気づかずに—— 飲屋街を歩いていると路地の奥から提灯の光が見えてくる。天田はその光に呼ばれるまま、吸い寄せられていく。「おでん屋じゃん、あそこにしよう」「ああ」 ガラガラと引き戸を開けると、昔ながらのおでん屋がそこにあった。ふんわりと風が店中の匂いと混ざると、薫達の鼻を刺激していく。いい匂いが立ち込める中で店の中をぼんやりと見ていると、店主らしき人に声をかけられ、入った。「いらっしゃい」 ぐつぐつに混んでいるおでんの具材達は、出汁を吸い込んで抹茶色になっていた。ざっと見ると小さい店だが、客がちらほらと入っている。空いている所はカウンターとテーブル席が一つあった。四人
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31話 寒い夜

 31話 寒い夜  地獄の食事とはこういうのを言うのだろう。少しは和らいできたが、あれから淡々と食べる事しか出来ない状況になっている。これ以上会話を続けていると、余計な事まで口にしてしまいそうだ。薫はこの空気に慣れてきているようで、透明人間を相手にしているように、はんぺんを平らげていく。言い訳を聞くハメになるのは分かっていたが、本人を前にすると自分を裏切った事実を再確認してしまう。信頼していた人間に裏切られるのが一番、辛く、腹立つ。 薫の顔色を確認するように、大根を齧りながらチラチラとこちらを見ている。視線を感じたが、薫は全く折れる気はない。「なぁ……」 勇気を出して声をかける天田。声を出した事を確認するように一瞬止まると、ギロリと睨みつけてくる薫がいる。 そんな時だった。二人の様子を見ていた店主がおでんの入った皿を持ってくる。注文した品は全てきている。「頼んでいませんよ」 薫は天田の視線を横切ると、店主にそう伝えた。「これはサービスだよ。食事を楽しんでほしいからね」 言い合っていた内容は周囲に聞かれていた事に気づくと、頭を下げ謝罪をした。こちらを見ていた人達にも頭を下げると、ゾロゾロと寄ってくる。「気にせんでええ。喧嘩は仲のいい証拠や」 ここは関西の人の集まりになっているようだ。皆ざっくばらんで語りかけてくれる。重い空気を取り除くように、その輪に二人も入り込んでいく。「すみません」「ははは。食事は楽しむもんやで」 少しずつ、感情が安定してきた薫は、深呼吸すると、満面の笑みを振り撒きながら感謝を述べていく。自分本位になっていた自分に気づかされたのだ。正直言えば、天田の事は許せるかどうかは難しい。それでも周囲の人がいるのに、雰囲気を潰してしまったのだ。食事は楽しむものと言われ、田舎に住む祖父母を思い出した。「薫はどうしたい?」 そう問いかけられている気分になってしまう。酒が入ったのも原因の一つだろう。あまり酔わないのだが、今日に限って悪酔いをしてしまっている
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32話 黒猫が紡ぐ縁

32話 黒猫が紡ぐ縁 時間潰しにコンビニを選んだ伊月は、白い息を吐きながら、寒さから逃げるように店の中へと入っていく。昔は立ち読みも出来ていたのに、いつの間にか封をされている雑誌類を見ていると、自分も年齢を重ねたんだな、と実感した。昔薫と一緒に買い物をしていた時の事を思い出しながら、一人の時間を噛み締めている。そんな伊月に誰も気づかないように中年のサラリーマンとすれ違っていく。沢山の人々が自由に時間を使いながら、生きていくこの世界に一人ぼっちになっていく。 ぐるりと店内を一周すると、沢山の商品で埋め尽くされていた。店員は商品の補充をしているようで、夜中なのに慌ただしい。綺麗に並べられているカップラーメンを見ていると、ぐうとお腹の音が鳴る。誰かに聞こえてはいないかと軽くお腹を抑えると、辺りを確認する。 「ほっ……」 店内には二、三人いるだけだが、それでも聞こえていたらと思うと恥ずかしくて仕方がない。気にしすぎなのかもしれないけど、再確認してみると、誰も気づいていないようだった。お腹の音を止める為に、売れ残りのしゃけのおにぎりと緑茶を手に取り、レジへと向かった。時間潰しに来たのに、すぐに買い物をしようとしている腹の虫に心の中で文句をつけると、会計を済ます。 「ありがとうございました」 夜中だと言うのに、元気いっぱいな店員。きっと彼は夜行性なのだろう。そう思いながらも、かけられた声かけに心が温かくなっていく。 自転車が置かれている間を通り抜け、食事を済ませていく。時間をかけてじっくり味わいたいが、何も食べてなかったことに気づくと、貪るように食していく。例え見られていても、止める様子はなかった。 もぐもぐしながら、ペットボトルのキャップを開けると、ゴクゴクと喉を潤していく。 「うま」 急に流し込んだ事で、喉に詰まりかけていた状態が緩和し、円滑になっていく。お腹の虫は雪の欠片と共にどこかに旅に出ると、伊月の音は治っていた。
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33話 再会

33話 再会 車の中でレイと遊んでいると気が紛れて、落ち着いていく。この男と二人きりの状況だったら発狂しそうになっただろう。知らない男の車に乗った事が薫にバレたら、きっと怒られるに違いない。 「みゃぉー」 目の前にレイがいるのに、遠くを見ていた伊月を心配するように膝の上に乗ってくると、大きなあくびをした。その姿が状況とアンマッチしていてくすりと笑ってしまう自分がいる。 「レイに気に入られたようだね。仲良くしてあげてくれると嬉しい」 機嫌がいいのだろうか、テンションが上がっている気がする。最初は新手のナンパかと思ったけど、どうも話を聞いていると違うようだった。 猫で釣り上げられてしまった自分がどれだけ世間知らずで、動かしやすいかを理解してしまう。こんなんだから、いざと言う時に失敗するのかもしれない。余計な事を考えていると、どうしてもミスを犯してしまう。完璧じゃないからこそ面白く、美しいのが人の形なのかもしれないが、もっと冷酷さを持たないといけないと感じている。 「もう少しで着くから、君に会わせたい人がいるんだ。あの方もきっと喜ぶ」 「あの方?」 伊月が聞き返すとそれ以上の説明はない。どうして自分の名前を知っているのか、和田の姿でいるのに、どうして気づかれたかは謎のままだ。 右に曲がると、見覚えのある建物が目に入る。あそこは昔、薫を巻き込んでしまった事件が起きた場所だった。まさか、あそこに行くのかとかた唾を飲むと、予想は的中してしまう。 あの時の関係者の可能性が高いと感じ、とりあえず様子を見る事に専念する。ここで叫んでも、暴れても、どうにもならないと思ったからだった。 キィと車が停車すると、運転席から降りた男は、後部座席のドアを開け、レイを抱きしめた。試すような視線が上から降り注いでくる。その視線をどこかで見た事がある。記憶のどこかで眠っているピースの一つが、そこに隠れていた。
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34話 黒猫が呼び込んだもの

34話 黒猫が呼び込んだもの 誰が自分の尻拭いをしたのかを知る由もない伊月は、どう反応すればいいのか分からなくなっていた。そんな姿を見ていると、笑い転げている親父がいる。 「お前はもう仕事をしなくていい。組織もそいつに任せる。お前が作ったもの全て、もうそいつの所有物になってるしな」 事後報告をすると、わなわな震え出した。急に車に乗せられて連れてこられた。そして親父との再会を果たした所に、爆弾発言が用意されていたのだから。 「ちょっと待てよ。それはやりすぎだろ」 「もう遅い、お前はただピエロにされてただけだ。全ての情報は筒抜けだったよ。面白い寸劇を見させてもらった」 全てが残酷に思えた伊月からは罵詈雑言が出てくる。何を叫んでも戻る事のない現実を受け止める事が出来なかったのだろう。 「そいつは誰なんだよ」 「まぁまぁ話を急ぐな。お前と彼との婚約が決まったんだ。お前では冷静さに欠けるからな。彼ならお前を守ってくれるだろう」 婚約と言われ、むせてしまう伊月がいる。自分はずっと薫の側でいられたら幸せだと感じていたのに、その全てを裂こうとする存在が現れたのだから、気が気じゃない。 「婚約なんて勝手に決めるなよ。僕には薫がいるんだ」 「ほう。その薫を七年放置していた奴に言える事なのか?」 図星を突かれると、何も言えなくなってしまう。自分にも自由はあるはずなのに、最初から最後まで親父の思い通りに進んでいく。それが気に入らなくて仕方なかった。 「ノビラの事はこちらで対応するから、お前は何も心配せず日常を満喫すればいい。やっとお前は自由になるんだよ」 今までしてきた事さえも否定された気がした。親父は自分の息子よりポッと出てきた他人に伊月の役割を全て渡してしまう。そう考えると、今までの我慢も、苦労も何の為にしてきたのか分からなくなってくる。
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35話 決められた選択

35話 決められた選択 諦めたくない気持ちが膨れ上がっていく。親父の言う事を聞いた方が、二人の為なのかもしれない。それでも諦めきれない伊月がいた。この願いが届くようにと祈りながら、待ち続ける事しか出来ない。自分の生きてきた証を全て取られてしまった今の彼には、薫を守る力は持ち合わせていなかった。奪われ、搾取されていく現実から逃げる事は出来ない。悔しさを抱えながら、顔を見られないように俯くと、低い足音が聞こえてきた。 「やっと来たようだな。お前も覚悟をするんだ伊月」 今までのツケが押し寄せてくる。選択肢を選ぶ事も、見つける事も出来ない自分を無力だと思うしかなかった。親父の元で足音は止まると、視線を感じる。自分のこれからを考えると、どうしても直視出来なかった。 「現実を見なくてはいけない。君は俺に負けたんだ」 影は人間の声を捨て、機械音声で語り出した。耳障りな音を拒絶するように顔を顰めると、止まっていたはずの足音がこちらへと向けられた。 コツコツと音が大きくなっていく度に、伊月の心臓も加速していく。黒い影の住人は彼が落胆しているのをじっと見つめている。 何も見たくないと隠している顔を、影はゆっくりと自分の顔を見せつけるように、あげていく。そこには見覚えのある表情が広がっていく。驚きに声を出せない伊月は、呼吸が止まりそうだった。 「君は俺の気持ちを理解出来ていない。だからこそ自由でいて輝いている。それでも俺はもう一度、本当の意味で君を手に入れたいんだ」 瞳の奥川に伊月の茫然とした顔が映り込んでいく。ポツリポツリと自分の気持ちを正直に述べていく彼の姿を、初めて見たのだろう。 「傍にいたのに、君はとても遠い」 憂を帯びた瞳からは、悲しみが隠れている。感情が瞳から放たれると、伊月の心を抉っていく。自分の思う通りに生きてきた事が、自由になりたい欲望が、こんなにも人を傷つけ、人生を変えてしまった現実を直視してしまう。
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36話 親父が伊月を試す理由

36話 親父が伊月を試す理由 全ての話を確認すると、胸を撫で下ろした。親父は内心ヒヤヒヤしていたが、彼は事をうまく運ばせていく。絶対的な存在の風貌を見せるようになったのは、伊月が姿を消してからだ。 自分の配下の人間を間に入れ、ずっと彼がここまで育つのを待っていた。最初会った時は、純粋すぎて、この世界では生きていけないように感じたからだ。自分が動く事で、彼にとっても、伊月にとっても冷却期間が必要と感じ、伊月を自由に出来ないように裏で手をまわしていたのだ。 「彼は思ったよりも、成長した」 「そうですね。七年も期間を設ければ人は変わるものですから」 直接会う事はしなかった。自分の影に気づかれては困るからだ。伊月に任せるのは危ういと感じていた親父は、全くタイプの違う存在を求めていた。 「今はいい。しかしいつか伊月はミスを犯す」 「試練を与えてどう対処するか次第ですよね」 「そうだが、無理だろうな」 罠を張った網に簡単に引っかかる自分の息子を見つめながら、ため息を吐いた。大胆な行動力も、自信家な所も危うさを感じていた親父は、自分が思っていた通りの結果になった時に、方向を修正していく。伊月の持っている力を全て彼に与える為だった。正体を明かさないように、忠告を送ると、二つの顔を完璧に使い分けながら、全てを進めていく彼が昔の自分と重なって見えていたのかもしれない。 「正体を隠す為に、このマスクを渡せ」 一つのマスクを渡すと、彼の元へと届けるように指示する。右側にキズが入った、本来の彼とは違うタイプの人間に化けてもらわないといけないと感じていたようだ。 「このマスクは……」 それはかつて子供だった伊月を可愛がっていたNo.2の顔に似せて作ったものだった。過去のケジメとして、違う課題を伊月は乗り越えなくてはいけない。その為に、必要なものだったんだ。
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37話 新しい関係性

 37話 新しい関係性  目の前に迫る選択の時は、近い。五分間しか与えられなかった伊月は、短い時間でも、自分にとっての最善を尽くそうとする。周囲の事を考えるのなら、ここは何事もなかったように受け入れた方がいいのかもしれない。それでも、どうしても諦める事が出来ない彼は、自分の素直な気持ちを言葉にしようと覚悟を決めた。「貴方とは婚約出来ません。僕には大切な人がいるから」 長い説明は必要ない。自分の為に時間を割いてくれている人達がいるのだから、簡潔に表現していく。ポツリポツリと言葉にすればする程、鼓動が早くなっていく。「もう決められた事だ。お前の気持ちは大切にしたいが、仕方ないんだよ」 二人の間に、親父が介入すると、全ての言葉を否定していく。自分の気持ちを大切に、と言っていた過去の親父はもういない。やっと言葉に出来たのに、こうも簡単に、拒否されるなんて思わなかった伊月は、唇を噛み締め、言葉を消化しようとしていく。助け舟を出してくれたのに、それを自分のものに出来ない彼は、自分自身を呪う事しか出来ない。「……なんで」「何か言ったか?」「いいえ」 顔を俯きながら、黙ると、その姿を見て、楽しそうに微笑んでいる。そんな親父の態度に気づく事なく、自分の世界に逃げ込もうとしている伊月は、彼の一言で一気に現実に引き戻されていく。「嫌いなら嫌いで構わない。最後にその大切な人、との別れの時間を作ろう。それが君にとって前に進む事になるのなら」 言葉の節々から、彼とは別人のような物言いに戸惑いながら、彼に視線を向ける。どうしてだか分からない、その言い方をしている人間を知っているような気がした。伊月の目の前にいるのは薫ではない。その現実を見ていると、ぐらりと宙が揺れ始めた。「それはいい。伊月、お前もそろそろ彼から卒業しないとな」「……」 親父の言葉に返事が出来ない。その一言で、自分の人生を変えてしまうから余計に。言いたくないし、言えない。無言で突っ立っている伊月を複数の視線が貫いていく。空間は彼にとって地獄のように砕け散った。
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