28話 軽やかになっていく 何時間そうしていたのか分からない。時間の感覚がない二人は息を整えるように、呼吸を繰り返す。抱き合うだけじゃ物足りない薫は、様子を見て、落ち着くと、再び覆い被さった。「薫、どうしちゃったの?」「ん?」 いつもと変わりない笑顔を見せると、台所から水滴の音がした。まるで今まで塞ぎ込んでいた想いが漏れていくような感覚の中で、伊月を強く抱きしめる。「なんか変だよ」「俺はいつもと変わらないよ。伊月が可愛いから」 伊月は自分を信用してくれている。あれから一段落した事を聞いて、自分の思い通りの土台が出来た事で、肩の荷が降りたのかもしれない。「もうどこにも行かないで」 願いを口に出すと、まっすぐな瞳の薫を見て、動揺を隠せない。なるべく違和感を持たれないように視線を合わし、頷くと腕を回した。薫はそんな伊月を受け止めると、心の中で呟いた。言葉は何度も薫の内部で響きながら、決して離すものかと、力を込めていく。 何度も体を重ね合った二人の体力はとうに限界を超えていた。疲労感が全身を駆け巡ると、だらんとベッドに体を預けていく。「僕達、獣みたい」 腕枕をしながら、伊月が布団から顔を出し、耳元で囁いてくる。そんな姿が可愛くて愛らしくて、発狂してしまいそうな勢いだ。「少し休憩したらご飯でも食べようか」「そうだね。今日何も食べてないから、お腹空いちゃった」 ふふふと笑い合いお互いの体を堪能していく。するりとした滑らかな肌は女性にも負けないくらいだ。ケアをしているようにも思えないのだけど、薫が見ていない所で維持する為の努力をしているのだろう。何度、抱きしめても吸い付いてくる肌が、理性を壊そうとする。伊月の体力が持つなら、二日でも三日でも絡みあっていたい。 仕事の事なんて忘れて、自分にもっと溺れてくれたらどれだえ幸せだろうと願わずにはいられなかった。 ◻︎◻︎◻︎◻︎ ゆっくりしていた伊月はいつの間
Terakhir Diperbarui : 2025-06-28 Baca selengkapnya