「此度の演習には隣国バネージ王国の第二王子も視察に来る。くれぐれもご無礼のないようにな」 「第二王子が?」 朝の食事後にお父様から執務室に呼ばれ、驚きの情報を告げられる。 今回の軍事演習には第二騎士団と第三騎士団が行く事になっているので、私の隣りには第三騎士団隊長のラザロフ・バネス隊長が立っていた。 彼とは幼い頃から切磋琢磨してきた間柄だけれど、その甘いマスクで女性が寄ってくるからなのかどうにも女性関係が軽く、トラブルが絶えない。 今回の演習では女性騎士は少ないとは言え……毎回私が仲裁に入らなくてはならないので、今回もそのような事がなければいいのだけれど。 しかもバネージ王国の第二王子が来るというのだから醜態を晒さないようにラザロフを見張っておかなくては……! 私が決意を新たにしている横で、ラザロフがお父様に質問をし始めた。 「しかし団長、なぜ第二王子がいらっしゃるんです?今回はオーランドルフ辺境伯軍との軍事演習ではないですか。国と国との軍事演習ではないのに」 確かにそうだ。 バネージ王国からは正規の王国軍がやってはくるものの小隊で、それほど大きな規模ではない。 王国の王族が顔を出すほどのものとは思えないのだけれど……まさか——。 「バネージ王国は我が辺境伯軍を取り込みたいのですか?」 私の言葉に執務室には瞬時に緊張が走る。 お父様の横にいるバックバーグ副騎士団長も厳しい表情をしているので、私の言葉の通りなのだろう。 「我が辺境伯軍は国の大事な国境を守っている要でもある。そこと近付きたい国が多々あるのは確かだ……今回のように王族を送り込み、明確に意思表示してくる国はなかなかないがな」 お父様の言葉にゴクリと喉が鳴る。 恐らくお父様のもとへは多方面から様々な話が来ているのだろう。 お父様としても私が我が国の公爵に嫁ぎ、しっかりと国内で繋がりを持ってもらいたかったに違いない——。 それなのに私の意思を尊重してくれていたのだから、両親の気持ちにじんわりと胸が温かくなる。 他国に付け入られないように気を付けなくては。 「私としても自国以外に忠義を尽くす気はない。そういう意思も込めて軍事演習には私は同行せず、副騎士団長のバックバーグに行ってもらう……トップ同士が相まみえるとあらぬ疑いがかかるからな」 「団長の代理、しかと努め
Last Updated : 2026-07-01 Read more