部屋に二人きり。この事実がジゼルの胸を早鐘へと変える。 互いにしばらく黙って見つめあい、先にライナーが動いた。彼はジゼルの元へ歩み寄って片膝をつく。「お騒がせして申し訳ありませんでした、義姉様」「いいのよ、気にしないで。というか、謝るのは私の方なの。何しろたくさんの勘違いをしていたんだから」 ジゼルもライナーと向かい合う形で両膝をつく。 そうして『竜の子』に関する誤解を話すと、目を丸くして聞いていたライナーは最後に小さく吹き出した。「義姉様が僕のことをそんな風に思っていただなんて、ちっとも知りませんでした」「私も自分がこんなに馬鹿だとは思わなかったわ。あなたが最初に来た日に、お父様からきちんと説明をしていただくべきだったと後悔しているの」 ジゼルに事情を話そうとした父を、勝手な思い込みで遮ったのはジゼルだ。「だから、改めて事情を教えてくれる?」「もちろんです。でも、少し長くなりますから」 立ち上がったライナーが手を差し伸べてくれたので、ジゼルはその手を取る。 誘われた先は室内の長椅子だ。ジゼルがいつものように掛けると、ライナーは正面の椅子へまわろうとする。 しかしライナーはぴたりと足を止めたかと思うと、少し悩んでから長椅子の空いた部分、ジゼルの隣に座った。 今までライナーがジゼルの隣に座ったことなどない。彼の初めての行動にジゼルは息をのんだが、ジゼルが驚いているのだと知られたらライナーは長椅子から立ってしまうかもしれない。 そう考えなおしたジゼルは努めて何気ない表情を装うが、顔はきっと赤くなっているだろうし、なにより胸の音がとても大きい。いつもなら誤魔化せるだろうけど、今日はこんなに近いのだから、ライナーに動揺が悟られてしまうだろうか。「では。義姉様にはまず、僕たちの母フラヴィの見た夢の話を聞いていただきましょうか」 隣に座ったライナーの口調はいつも通りで気負った様子がない。自分の方が年上なのに、自分だけがおたおたしているのはなんだか恥ずかしいなとジゼルは思う。 しかし二度ばかり深呼吸をしたところでジゼルは気づいてしまった。正面を見つめるライナーの耳はほんのり赤く染まっている。どうやらライナーも平静を装っているだけのようだ。 それが分かって思わず笑い、おかげで緊張はほぐれた。体から力を抜いたジゼルは背もたれにゆったりと体を預
Terakhir Diperbarui : 2025-07-04 Baca selengkapnya