「義兄さん!」沙耶も別荘に駆けつけた。景佑が骨壷を抱えて茫然自失としているのを見て、内心、狂喜が込み上げてきた。とりあえず慰めの言葉の一つでもかけてから、自分の正体を景佑に告げようと思ったが、男は彼女の手をぴしゃりと振り払い、冷たい表情を浮かべた。「君の姉さんの件は、言われた通り済ませた。その他のことについては、俺にも非がある。だから君を追及するつもりはない。だが今後は、俺の前に二度と現れないでくれ」沙耶は少し戸惑った。まだ何か言いたげだったが、景佑は既に我慢の限界に達したかのように、目を血走らせて怒鳴った。「出て行け!今すぐ出て行け!」彼にはわかっていた。美穂の死について、最大の過失は自分にあると。だが……まるで無意識の自己弁護でも働くかのように、彼は沙耶に怒りを向けずにはいられなかった。もし、美穂の行き先を尋ねた時、沙耶があいまいな答え方をしなかったら。もし、斎場で、沙耶が美穂の「捨て台詞」を持ち出さなかったら。もし、山の麓で、沙耶が姉の供養をあんなに急かさなければ。たとえ山に登る直前でも、彼が一度でも美穂の様子を確かめに戻っていたら、事態はここまでこじれなかったはずだ。景佑は怒りと悲しみに打ちひしがれ、激情のあまり、またごほりと血を吐いた。そして、そのまま地面に倒れ込んだ。……次に目を覚ました時、既に病院のベッドの上だった。抱えていたはずの骨壷が見当たらない。景佑は勢いよく起き上がり、点滴がつながっているのも構わず立ち上がると、焦燥にかられながら彼の美穂ちゃんを探し始めた。彼は生きた美穂を失ってしまった。もし骨壷さえ守れないのなら、自分が生きている意味などあるだろうか?彼の動きがあまりに激しかったため、血液が輸液チューブに急速に逆流し、目に刺さるほど鮮やかな赤だった。しかし、彼は全く痛みを感じなかった。とうとう、手の甲に刺さっていた針を無理やり引き抜いてしまった。途端に、血が噴き出した。沙耶がちょうどその時、病室に戻ってきた。景佑が魂の抜けたような様子なのを見て、すぐさま彼の前に立ちはだかり、心配そうな素振りを見せた。「義兄さん、大丈夫ですか?あなたが気を失ったので、私の判断で、奥様のご遺骨を埋葬する手配をしました。ところが、その途中で車が川に横転してしまい
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