私と佳典のことは、もう隠し切れないだろう。いっそのこと、公にしてしまおう。【うん、別れた。私から言い出したの】想美のSNSに返信する。携帯に表示された他のメッセージにも目を通す。大勢の友人が、私と佳典の間に何があったのかを尋ねてきている。普段あまり連絡を取らない人たちも少なくない。あれこれ迷った末、思い切ってSNSに投稿することにした。【過去は風と共に、未来に幸あれ】南国での仕事風景の写真を添えて、位置情報も敢えて追加した。南国と桜国には時差がある。この時間だと、向こうは真夜中のはずだ。想美はいつも朝寝坊なのに、今日に限って意外にも早い返信が来た。「あなたから別れを切り出したって?そんなの信じない。久我さんのことあんなに好きだったじゃない。あの時どんなに止めても聞かなかったのに、今さら恋愛脳が治ったわけ?」私は苦笑いを浮かべた。返事をする気にもなれない。もうこの件は終わったものと思っていた。ところが昼近くになって、心遥からメッセージが届いた。LINEで、一見すると慰めの言葉のように装っている。【別れて正解だったと思うわ。佳典って性格的に付き合いにくいもの。私たち幼馴染以外とは滅多に親しくならないし、この数年間あなたも辛い思いをしたでしょう。お仕事頑張って】この皮肉たっぷりのメッセージに、どう返せばいいのか一瞬戸惑った。ただ一言だけタイプして、彼女からの通知をオフにし、同時にSNSの更新も非表示に設定した。私と佳典はもう何の関係もない。それと同じで、彼がいなければ心遥と知り合うこともなかった。同じ女性同士、お互いを傷つけ合う必要なんてあるだろうか?数日後、アパートの入口で見覚えのある人影を目にした。最初は見間違いだと思った。長い間佳典に会わずにいたから、想いが募って幻覚でも見ているのかと。けれど近づいてみると、紛れもなく本人だった。髪はぼさぼさに乱れ、全体的にひと回りも痩せて見える。私を見つめる瞳は赤く縁取られていた。彼の前に立つ私は、まるで旧友を見つめているような気分だった。一瞬、胸の奥から込み上げてくる感情があった。愛情の余韻のようなものは確かに残っている。ただ、十年間見続けてきたこの顔が、なぜかひどく見知らぬ人のように思えた。佳
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