幼稚園からの帰り道で、冬雪は無意識に美波とのトーク画面を開いた。十年前から知り合ったとはいえ、彼女とのやり取りはそれほど多くはなかった。大半のメッセージは美波からに対して、冬雪からの返事はいつも数日後だった。それに、どれもただの意味のないスタンプだった。昔はただしつこいと思っていたが、今はその永遠に「既読」に変わらない「未読」を見て、美波がもうそのようにしつこくメッセージを送ってくることはないと実感した。何故か、冬雪はまたイラッとした。その時、電話が急に鳴った。出た瞬間、冬雪の母のすぐに怒鳴りそうな声が向こうから届いてきた。「すぐに実家に帰りなさい!」どういう状況なのかさっぱりわからない冬雪は、実家に戻ったら、いきなり乱暴に大量の書類を投げられた。「ちゃんと見てみなさい!」それを聞いて、冬雪は床に落ちている書類を拾ってきて、捲りながらじっくり読んでいた。そこに書いてあったのは、全部財務諸表の計上漏れだった。彼は驚きながら聞いた。「誰がこんなミスを...... ?」怒りが爆発して、冬雪の母は台パンした。「緒方梨乃に決まってるでしょ。あんた、正気?あの女が帰国したばっかりで考えもせず会社に入れて、しかも一番大事な経理部長に務めさせるなんて、平野グループを潰すつもりなの!?」そのような厳しい口調に叱られて、冬雪はしばらく返す言葉が見つからなかった。こんなことになるとは思わなかった。「梨乃はただまだこの仕事に慣れてないかもしれないから、もう少し時間をあげられないかな?」その話を聞いて、冬雪の母は更に怒り出して、手にあったカップもそのまま床に落ちて、バラバラになった。「あんたもいい大人だし、浮気はいつも大目に見てやってるけど、会社の利益に関わったら、もう放っておけないわ!」言い終わって、彼女は胸元を抑えて、息を整えながら続けた。「時光ちゃんはあんなにいい子だったのに、一体何を考えてるの?そんなクズ女を選ぶなんて」冬雪はその口調を聞いて、突然何かに気づいたように口を開いた。「お母さん、もしかして何か知ってるのか?」冬雪の母は顔を逸らして、何も言わなかった。冬雪は更に焦りだして、問い詰めた。「美波がどこにいるのか知ってるのか?まさかお母さんにも家出の手伝いを頼んだとか....
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