結局、マンションに帰ってきたのは0時過ぎだった。 失恋記念と称して飲みに付き合った結果だが、その割には早く帰ってこれたと思う。楓の強メンタルに驚くばかりだ。 (きっと俺に気を遣ってくれたんだ。これからも友達でいたい、なんて言ったから) とても傷付いたはずなのに、直桜に気を遣える楓は強いと思うし、これからも良い友達でいたいと思う。 なんとなく沈んだ気持ちを引き摺ったまま、直桜はキッチンに向かった。お土産に買ってきたプリンを冷蔵庫に入れておきたかった。 (化野がプリン好きか知らないけど。そういえば、化野の好みって知らないな) 夕飯も別の時が多いし、何が好きかなんて知らない。 私服も見たことがない。いつもスーツで髪を綺麗に後ろに流して、眼鏡をしている。そんな姿しか、見たことがない。 (一緒に住んでるはずなのに、化野のこと、何も知らないんだな) 部屋からキッチンへ続く廊下に出る。 キッチンと向かいの風呂の扉が開いて、誰かが出てきた。 濡れた髪を拭きながら上半身裸の男が目を細めて、こちらを見ている。 細い割に引き締まった体と高い身長、整った顔立ちは、まるで有名人のようだ。 (誰⁉ このモデルみたいな男、誰だ⁉ ここには俺と化野しか住んでいないはず) あまりに驚いて、声が出ない。 凝視していると、男が声を発した。 「瀬田くん、おかえりなさい」 その声は、まぎれもなく化野だった。 「……え? 化野、なの?」 思わず呆けた声が出てしまった。 化野らしきイケメンが目を擦って、再度直桜を凝視
Terakhir Diperbarui : 2025-06-04 Baca selengkapnya