岩槻駅からの道を歩きながら、瀬田直桜はスマホの地図を開いた。バイトの面接場所が、いまいちよくわからない。 アプリには真面に表示されないし、近隣を知る大学のゼミ仲間に聞いても、「そんな場所にマンションはない」と言われるばかりだ。 仕方なく行けるところまで、と来てみた訳だが、案の定、道に迷った。「やっぱり、やめとくべきだったよな」 普段の直桜なら、こんな如何にも怪しいバイトには絶対に手を出さない。だが、今回ばかりは何故か、ずるずるとここまで来てしまった。(条件が良かったってのもあるけど) 国委託の非常勤勤務だが、三カ月続けは準公務員、半年続けば国家公務員扱いになるらしい。 今時、国家公務員というのも、正直良い職業とも言えないが、故郷の親類は喜ぶことだろう。集落を説得できれば、大学卒業後も関東に残れる。(あんな地獄みたいな場所、二度と戻りたくない。説得できる強い材料、何でもいいから探さないと) 地元に戻らずに済む口実が得られるのなら、仕事の内容など何でもよかった。(上手くいきそうだったら今の内定蹴って、こっちに鞍替えしてもいいよな) 今、内定を貰っている企業も悪くはないが、説得のためには些か弱い。国家公務員くらいわかり易ければ、きっと納得してくれるだろう。確証はないのだが。 正直、何だったら納得してくれるのかもわからない。考えれば考えるほど面倒だ。 面倒くさすぎて、頭痛がしてくる。 思い出したら苛立たしくなり、ガリガリと頭を掻きむしった。「ん? あれ……?」 全体的に黒い建物が視界に入り込んだ。 さっきまで、こんな建物は無かったはずだ。 直桜は小さく息を吐いた。「やっぱ、《《そっち系》》の仕事かな。だとしたら、一発採用だろうなぁ」 躊躇うことなく、直桜は突然現れたマンションに足を踏み入れた。 自動ドアを潜り、面接に指定された部屋の部屋番号を押そうとパネルの前に立つ。 押す前に、エントランスの自動ドアが開いた。 奥に進み、エレベーターに乗ってみる。やはりボタンを押す前に3階のボタンが点滅した。 エレベーターを降り、303号室の前に立つ。 インターホンを鳴らす前に、扉が開いた。「本日、面接予定の瀬田直桜さんですね。怪異には慣れたご様子ですね。時間通りの到着も好ましいです」 眼鏡にスーツ姿の、如何にも公務員といった格好の
Terakhir Diperbarui : 2025-05-29 Baca selengkapnya