「浮気なんかするわけないじゃん。自慢の彼氏がいるのに」「俺もくるみにいつまでもそう言ってもらえるよう努力する」 柔らかな微笑み。いつまでもって、一年じゃないの? 一年後にはさよならの関係でしょ。 あれ……。未来のことを考えると心が痛くなった。 割り切らなきゃいけないのに、海斗の優しさに惹かれ始めているのかもしれない。 海斗がいなくなる、考えると嫌な気持ちになったのは間違いなかった。 それから二週間後――。「ねえ、なんだかくるみ、綺麗になった?大人の雰囲気になったっていうか。女の私から見ても、色気とかあるし……」 社食でのランチタイム、親友の由紀がそんなことを伝えてきた。「そうかな。でもそうでありたい。やっぱりメイクとか髪型とか気を遣うようになった。彼氏が……。海斗みたいな人だから。大和と付き合っていた時よりも精神的に余裕ができたし、その時間を美容の勉強に使えるというか……」 海斗の隣を歩いても恥じないように、できる限りの努力をしている。 朝も以前より早く起きて、髪の毛を巻いてみたり、メイクも変えたり。 服装もフォーマルだけど、カラーを考えてみたり、海斗が<可愛い、綺麗>そんな風に思ってくれるように、自分なりに頑張っているつもりだ。「社内でも良い意味で噂になっているよ。同期の男とか、可愛いとか会話しているの聞こえてくるし……。ワンチャン狙いたいって、話している奴もいたよ」 由紀が言葉途中で発言を止めたかと思ったら「それは困りますね」 後ろを振り向くと、海斗が立っていた。「かい……!龍ヶ崎部長!?」「部長、お疲れ様です。どうぞ、座ってください」 彼の登場に驚いている私を全く気にせず、由紀はニコッと笑い、海斗に席を譲った。「いえ、大丈夫です。これから外出しなければならないので。彼女が見えたので、声だけでもかけたくて」 海斗とは連絡は毎日取り合ってはいるが、お互いの帰宅時間も変わり、ゆっくり会えていない。「僕の彼女に言い寄る男がいたら、すぐに教えてください。潰しますので」 ハハっと笑い、彼はすぐにその場から去って行った。「びっくり!龍ヶ崎部長ってクールで有名なのに、あんなこと言うんだね。女性社員なんて全く相手にされないのに。くるみ、めっちゃ愛されているね!」 目を輝かせながら、由紀は海斗の後ろ姿を見ていた。 私だっ
Last Updated : 2025-08-02 Read more