「海斗、すごいね。はっきり言えるなんて」「本当のことだから。くるみと二人だけでご飯食べたいし」 小声でそう話す彼は、対応に慣れているようだったけれど。 海斗、モテそうだもんね。 そう、女の人避けのために私が偽装の彼女を演じるわけだ。 海斗は今はまだ恋愛に興味がないのかな。 私が「彼女」だって、公表した時、私が考えているよりも大きな反響になりそう。 でも彼にはこんなにも助けてもらったわけだから、約束はちゃんと果たしたい。「そう、雨宮さん。急なんですが、今日の夜、お時間ありますか?先日の件、弁護士へ相談したいと言っていたので、知り合いの弁護士でしたら紹介できるのですが。話だけでもしてみますか?」 婚約破棄についての慰謝料について、海斗にも伝えたんだ。「はい、ぜひお願いします」 私が返事をすると、彼はなぜか悲しそうにコクンと頷いただけだった。 その日の終業後、私は海斗と一緒に、近くのカフェで海斗の知り合いの弁護士さんと会うことになった。 大和のことについて相談をすると――。「お気持ちはわかりますが、不貞行為を行っていたという証拠が少なすぎます。写真とか何か具体的にわかるようなものがなければ、難しいと思います。そして今はもう別れてしまったという状態となると、別れてからその彼女と付き合ったと彼が言えば、責めることはできません」 大和が浮気をしていたことは事実だ。 だけど、吉田さんと写っている写真とか動画を持っていない。 気付いた時には<別れよう>と言われて。 彼のモラハラ的発言だって、録音をしていない。 私が甘かった。 弁護士さんへの相談が終わり、肩を落として歩く私に「力になれなくてごめん」 そう海斗が声をかけてくれた。「どうして海斗が謝るの?ここまでしてくれて、本当に感謝しているよ。私が甘かったの。証拠とか、もっと揃ってから戦わなきゃいけなかった。悔しいけど、私が悪いから。あー。もっと我慢して証拠を集めてから別れれば良かったー!」 自分の愚かさに腹が立った。 大和に復讐してやりたいという気持ちすら叶わないのか。「俺、個人的な意見だけど。もっと傷つく前に別れて良かったと思う。証拠集めってかなり精神的に負担がかかると思うよ」「それに……。くるみには今、俺がいるから。俺だけじゃダメ?」 小首を傾げながら問いかけられた。
Terakhir Diperbarui : 2025-07-13 Baca selengkapnya