瑛斗side「長谷川智花……。すべてを奪ったとは?」俺の脳裏に、かつて玲の傍らに常に影のように寄り添っていた、無表情で事務的な女性の姿が浮かんだ。玲が身勝手に振る舞う裏で、玲をフォローし実務のすべてを完璧にこなしていた彼女が、なぜ今、彩菜の口から語られるのか。「彼女はただの秘書ではありませんでしたわ。一条社長は、神宮寺玲が色んな人間を動かしたとお考えかもしれませんが私は違うと思っています」「どういうことでしょうか?」「神宮寺玲は、長谷川智花の操り人形でしかないということです。彼女は、頭脳明晰で計算高い女でした。現に、私の実家である芦屋グループの基幹事業を……そして私の夫を計画的に破滅へ追い込んだ張本人です」彩菜の言葉に、隣にいた空が小さく息を呑むのが分かった。「破滅に追い込んだ?」「四年前、私の夫は、芦屋の新規プロジェクトの責任者でした。そこに投資家を装った長谷川が現れた。彼女は巧妙な手口で彼を懐柔し、インサイダー取引にて巨額の資金を手に入れた。その罪に耐えられなくなり夫は自ら命を絶った……。その後、長谷川は姿をくらましていましたが、ある日突然、神宮寺玲の秘書として表舞台に復活を果たした」彩菜の瞳には、燃えるような復讐の炎が宿っていた。「一条グループの不正も、玲の指示ではなく、長谷川の独断、あるいは彼女が主導した犯行だったのではないかと思っています。神宮寺玲が失脚した今、彼女は玲と共に姿をくらまし、どこかに潜伏している……」「……それが今回のリークとどう繋がるんだ?」「長谷川は執着心の強い女です。自分が選び育てた『神宮寺玲』というブランド価値を奪われることは許せない。ましてや自分が過去に陥れた男の妻が、自分の操り人形の座を脅かしているとなれば、面白いわけがなく闘争心が強い彼女が黙っていないでしょう」「それに、もし私とあなたが結婚したら神宮寺家の地位は完全に失われる。彼女にとって最大の『屈辱』であり、反撃のための『引き金』になるはずですわ」彩菜は、冷徹なまでに計算された微笑を浮かべた。「私は長谷川が行動を起こすために今回の記事を大いに利用しようと思っています」(長谷川を誘き出すための、捨て身の餌か……)彩菜の凄まじい執念に俺たちは言葉を失った。しかし、その戦略の犠牲になっているのは華だ。「彩菜さん、あなたの事情は分かりました。しかし
Terakhir Diperbarui : 2025-12-24 Baca selengkapnya