瑛斗side「はい、一条です。……えっ、例の調査の件で決定的なデータが手に入った? それは本当ですか!」静まり返った社長室に、俺の興奮した声が響く。電話主は、俺の動揺を見透かしたかのように、淡々と言葉を続ける。「ええ、ありがとうございます。それさえあれば、次の役員会で決定的な証拠として突きつけられる。……すぐにでも受け取りたいのですが今からのご予定はどうですか? はい、場所は……。できれば、人目を避けた方法がいいですね」都合が悪いのか、暫くの沈黙が続いたあとに出た言葉は意外なものだった。「えっ、コインロッカーでの受け取りですか? ……分かりました。場所は渋谷駅の改札近くの緑色のロッカーですね。……ダイヤルは、わが社の証券コード四桁。本日の十八時ちょうど。中身はUSBメモリ一つ。……ええ、確実に受け取ります。ありがとうございます、助かりました」メモを取りながら通話を終え、素早く腕時計に目を落とすと時刻は十六時を指していた。今から準備して向かえば、夕方の渋滞や駅の混雑を考慮しても十分に間に合う時間だ。デスクに広げていた書類をデスクの引き出しにしまい施錠をし、コートを手に取り、部屋を出ようとしたその時だった。
آخر تحديث : 2026-03-01 اقرأ المزيد