瑛斗side「長谷川の職歴について調べたが、就労先での彼女の業務について知っているだろうか? 例えば、彼女が過去にどこかで秘書をやっていたという事実は……」「秘書? そんな話、聞いたこともありませんわ。そもそも彼女は派遣社員ですし転職歴も多い。会社の最重要情報を扱う役職者の秘書なんて、まともな企業なら任せないと思います」「やっぱりそうか……。実は、一条玲は彼女のことを『熟練の秘書業務経験者』だと言って呼び寄せたんだ」「え? なんですって?」彩菜の声に初めて困惑の色が混じった。俺は冷静に事実を並べる。「玲は元々いた秘書を無理やり異動させ、社内の人間ではなく長谷川を中途採用して、いきなり自分の秘書に抜擢した。異例中の異例だ。しかし、こちらが調べる限り、彼女の過去の経歴に秘書業務の経験などどこにもない。彩菜さんの見立てと同じだ。本来、派遣社員にそこまでの権限は与えないはずだ」「一条玲と長谷川は、入社する前から繋がっていたということですか?」「その可能性は極めて高い。履歴書などの書面上では、彼女がいつ秘書業務を従事していたのかさえ不明だ。面談で聞いたのかもしれないが、そもそも最初から秘書を探しているのなら経歴に書いてある人間を選ぶはずだ。そこにも疑問を感じている」「一条社長……。そこまでお考えなら、真実を掴みたいとは思わないのですか? このまま彼女たちの行方が分からないまま、過去に蓋をして終わらせるおつもり?」彩菜の鋭い問いかけが俺の胸に深く突き刺さる。俺は小さく歯を食いしばり、画面を真っ直ぐに見据えた。「真実を掴みたいという気持ちは、あなたと同じだ。だが、ゴシップ記事で周囲を巻き込み誤解を与えるようなやり方は望んでいない。俺には……守るべき元妻がいる。彼女たちに危害が及ぶ可能性があることは徹底的に排除したいんだ」「先日お会いした、神宮寺華さんですね。一条社長、あなたは彼女のことをまだ想っていらっしゃるのですか?」「ああ。出来ればもう一度やり直したいと思っている。そのためには、副社長だった一条玲の問題をすべて片付ける必要があるんだ。情報は欲しい。だが、やり方を変えてくれないか? こちらも手に入れた情報は包み隠さず共有すると約束する」彩菜はじっと俺の顔を見つめて、どう判断するか吟味しているようだった。
Terakhir Diperbarui : 2025-12-29 Baca selengkapnya