瑛斗side三村ジョニーへの疑惑が深まる中、一条グループの内部では別の場所で新たな火種が音を立てて燃え上がっていた。この日、俺は朝から溜まっていたメールと書類のチェックをこなし、午前十時の取引先へのアポイントに向けて支度を整えていた。秘書が淹れたコーヒーに口をつけようとした、その時だった。ドンドンッ――。少し乱暴な音で社長室の扉がノックされ、返事をする間もなく勢いよく開かれた。そこには空が、血相を変えてタブレットを握りしめ息を切らして立っていた。「空? そんなに慌ててどうした」 「瑛斗、大変だ! 今朝からコールセンターに、顧客から『身に覚えのない葉書が届いた』という問い合わせが殺到しているんだ。葉書に書かれた連絡先に電話をした客は、一条グループからの正式な情報提供だと案内されたと言っている。だが、社内のどの部門に確認しても、そんなダイレクトメールの送付依頼など出していないんだ」空の言葉に、手にしていたカップが微かに震えた。「……何者かが、個人情報データベースを抜き取ったということか?」 「その可能性が高い。もし一条全体の顧客データにアクセスされていたとしたら、被害件数は優に百万件を超えるぞ」
Last Updated : 2026-01-16 Read more