冬馬の声は、涙でぐしゃぐしゃになっていた。 でも、誰も彼に応えてくれない。病室には、ただ機械の無機質な音だけが響いていた。 冬馬はそのまま病室の前に座り込み、夜を明かした。 朝になり、電話が鳴る。助理からだ。 マナーモードにして、廊下の端でこっそり出る。 「一ノ瀬様、今朝の最新ニュースです。篠原泰典(しのはら たいすけ)の会社、ついに倒産しました!計画は大成功です。ここまで仕込んだ甲斐がありましたし、一ノ瀬様も……」 「分かった」 本来なら喜ぶべき報せだった。だけど、冬馬の反応はどこまでも冷めていた。 「それで……天音はどうしますか?」 「連れてこい。病院だ。夕凪の病室まで。俺が直接、ケリをつける」 そう言い捨てて、すぐに電話を切った。 スマホをポケットにしまい、もう一度だけ、ガラス越しに病室の夕凪を見つめる。 胸の奥が痛む。 …… 天音は、冬馬の側近に連れられて病室に入ってきた。 ドアが開くと、ベッドのそばに立つ冬馬と目が合う。 その視線に、一瞬だけ驚きが走った。 冬馬は、まるで何かに取り憑かれたように、ずっとベッドの夕凪を見つめている。 まるで本当に彼女を大事に思っているかのように―― だけど、この男が妻を気にかけるなんて、ありえないはずなのに。 天音は涙声で冬馬に駆け寄ろうとした。 「冬馬さん……!」 けれど、あと一メートルというところで、ボディーガードにあっさりと押さえつけられた。 「放してよ!冬馬さんの前で何してるの、許さないから!」 けれど、昨日まで甘やかしてくれていた冬馬の目は、氷のように冷たい。 「彼女の口を塞げ」 冬馬が低い声で命じると、ボディーガードはすぐさま天音の口をガムテープでふさいだ。 天音は低く呻くだけしかできない。 冬馬の目は、冷たい矢のように天音を射抜いた。 「天音――牛乳をわざとこぼして、夕凪の母親の骨壺をダメにしたのも、わざとだったな」 「夕凪の父親の人工呼吸器を抜いて、彼女をからかったのも、全部お前の仕業だろ」 天音は目を大きく見開き、呻き声すら出なくなった。 冬馬の目には、皮肉な笑みが浮かんでいる。 「驚いたか?全部知ってるさ。 お前みたいに間抜けじゃなきゃ、ここまで会社を大きくできない。天音
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