大広間は静まり返り、彼のかすかな祈りの声だけが響いていた。 一時間。 三時間。 五時間。 夜が明けていくにつれ、彫刻のような木の窓から朝日が差し込み、影が長く伸びていく。 一人の沙弥が香を足しに入ると、男が氷のような床に身を伏せ、額から血がにじみそうなほど頭を下げているのを見つけた。 「ご施主様、そんなことをなさらず……どうかお立ちください」 「…構わないでください」 男は顔を上げなかった。 沙弥は困ったように頭を振り、手を合わせて「南無阿弥陀仏」と唱える。 この寺では、執着を抱えて訪れる者を何人も見てきたが、ここまで必死な者は初めてだった。 冬馬は、夜明けから正午まで、膝が焼けるような痛みにも動かず、太陽が背中を炙っても、決して立ち上がろうとはしなかった。 「すべての罪は…この身が償います。仏様、どうか……どうか彼女だけはお救いください」 日が傾き、遠くの鐘楼から暮れの鐘が響き始める。 冬馬のシャツは汗でびっしょりと濡れ、背中に張り付いている。 「お願いいたします……夕凪を……どうかお助けください……」 この言葉を、もう何千回も繰り返していた。 一陣の風が殿に吹き込み、長明灯が一斉に揺らぎ、一瞬だけ暗くなる。 幻のような中で、冬馬は仏像の目が微かに瞬いた気がした。 その慈悲のまなざしが、自分に向けられている気がした。 「仏様!お願いいたします、夕凪を――」 その瞬間、視界が暗転し、冬馬の体はその場に倒れこんだ。 殿の外の古い柏の木の上で、一羽の夜鶯が美しい歌を奏でている。 通りすがりの老僧が顔を上げ、目を細めてつぶやいた。 「南無阿弥陀仏。因果応報、輪廻は必ず巡る――」 …… 冬馬は夢を見た。 夢の中、彼は雲の上に立ち、足元には白い霧がうねり、遠くには黄金の光があふれていた。 そして―― 一人の子どもが見える。 それは、三歳か四歳くらいの女の子。 顔立ちは彼に似ていて、どこか夕凪にも似ている。 子どもはぴょんぴょんと跳ね回り、はじけるように笑いながら、ひらひらと落ちてくる花びらを追いかけていた。 …… あれは……夕凪との子どもだ。 この世に生まれることができなかった、あの子―― 冬馬の身体が激しく震え、溢れる涙が止まらない
Baca selengkapnya