遊園地での穏やかな時間は、長くは続かなかった。翌日、文翔は再び己の戦場へと舞い戻った。長沢グループ最上階の執務室は、その真の支配者を再び迎え入れたのだ。文翔が、帰ってきた。わずか一日のうちに、日和見を決め込んでいた役員たちはことごとく締め上げられ、不穏な動きを見せていた株主たちは圧倒的な持ち株比率によってねじ伏せられた。数々の流言飛語に揺れていた株価も、彼が投じた巨額資金によって、強引に回復へと引き戻された。彼は、以前と変わらぬ冷徹かつ果断な社長――長沢文翔だ。だが、真の嵐はここからだった。蒼也が遺していったのは、単なる抜け殻となった会社ではなかった。山積みの書類を精査し始めた文翔は、あの男の真の狡猾さを思い知ることになる。正常に見える無数の投資契約や買収合意書の中に、極めて陰湿な罠が仕掛けられていたのだ。条文の言い回しは巧妙に改ざんされ、句読点一つ誤れば、グループは巨額の違約金を背負わされ、合法的に食い尽くされる。これはもはや商戦などではない。周到に計画された「包囲網」だった。丸3日間、社長室の灯が消えることはなかった。文翔は疲れを知らぬ彫像のごとく巨大なデスクの後ろに座り、深い眼差しで次から次へと書類を捲り続けた。彼の周囲には、カフェインとニコチンの匂いが重苦しく漂っていた。そして紗夜は、常に彼の傍らにいた。彼女は他の女のように「体に気をつけて」と口にするだけではなかった。文字通り彼の右腕となり、数万枚にも及ぶ書類を分類し、リスクの度合いに応じて色分けされた付箋を貼っていった。彼が眉間に皺を寄せれば、絶妙な温度のコーヒーを差し出し、彼が沈黙を必要とすれば、傍らのソファで静かに本を読み、彼の心を安らげる風景となった。......その日の午後、紗夜は資料室の隅で見つかった古い書類の箱を整理していた。箱からは紙のカビた匂いが漂っている。積み重なった書類の間を指先が滑っていったその時、ふと、一枚の黄ばんだA4用紙が彼女の目に留まった。彼女はそれを引き抜いた。ヘッダーに印字された太字のフォントを目にした瞬間、彼女の動き、そして呼吸さえもが凍りついた。――【離婚協議書】。文翔は、すぐさま彼女の異変に気づいた。彼が顔を上げ、彼女の視線を追うと、その刺すような書類
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