とうとう卒業まであと二日となり、学園内はムーン・ナイトの時と同じように慌ただしく、全生徒がそわそわしている。そんな中、ノアとベルティアは学園を休み、半日かけてベルティアの実家へと足を運んでいた。「お、王太子殿下……!?」「どどどうして王太子殿下が!?」「ベルティア、どういうことなの!」 帰省するという手紙を送る暇もなく急いで移動してきたものだから、ベルティアの両親や祖母はノアの突然の訪問に卒倒寸前だった。王宮の馬車だとは分からないもので、従者もレオナルドと他数名しか連れてきていないけれど、小さい村なのですぐに噂は広まるだろう。「レイク家の“呪い”について、殿下と一緒に終わらせに来ました」「え……?」「ベルティアを思い悩ませる前に、話し合うべきだったと反省しています。実は、俺の手元にはルーファス王子の日記があり……オメガの魔女の存在を知っていました」「な、なんてこと……!」 ノアが懐から古びた日記帳を取り出すと、レイク家の屋敷の中に『第三者』の重い空気が流れた気がした。ノアのアルファとしての威圧感とは全く違う、上から圧し潰されそうな圧迫感に呼吸が苦しくなる。それはベルティアだけではなく、この場にいる全員がそれを感じているようだった。「ルーファス王子の日記には、アウラへの謝罪や後悔、そして愛が綴られています。どうやら彼は生涯、アウラだけを愛して永遠の眠りについたようです」「アウラから妊娠を告げられたあと、本当はローズウッド公爵令嬢とは婚約を破棄しようとしていたらしいんです」「ただ、ローズウッド公爵令嬢が聖なる瞳の力を開花させ、その頃の王家は保守派だったこともありアウラとの未来は断念したと」「……今でもそうだけれど、片方の話だけを聞いたらいけませんね」「人は口があるのだから、きちんと話し合うべきだと思いました。……俺が言えることでもありませんが」
Dernière mise à jour : 2025-07-16 Read More