そして、視線の先には、三十人の兵士たちが、静かに木剣を構えて待っていた。「格好良いところ、見ててくれる?」 ユウヤが軽く笑ってそう言うと、ミリアは、ふるふると首を振った。「そのようなことをなさらなくても……ユウヤ様は、もう十分に格好良いですわ……」 その声は、かすかに震えていた。青く透き通った瞳が、うっすらと潤んでいる。それでも、ミリアはしっかりと頷いた。 その姿に、ユウヤは小さく息を吐いた。(……俺の、自己満足なんだけどね) けれど、彼女のその言葉が、胸の奥にじんわりと染み込んでいく。 そして、視線を前に向ける。そこには、整然と並ぶ三十人の兵士たち。全員が木剣を構え、無言でユウヤを見据えていた。(うわぁ……実際に対峙すると、結構な迫力だな) 木剣の列が、まるで壁のように立ちはだかる。その圧力は、数の暴力そのものだった。だが、ユウヤは、静かに剣を構えた。その動きに、無駄は一切なかった。観客席が静まり返る。誰もが、息を呑んで見守っていた。 そして、試合が、始まった。 木剣を構えた三十人の兵士たちが、一斉にユウヤに向かって殺到する。その動きは、まるで訓練された獣の群れのようだった。だが、ユウヤは動かない。その静けさが、かえって周囲の緊張感を高めていく。 ――シュッ! ドスッ! ドスッ! ドスッ! 木剣が交錯する音が、運動場に鋭く響く。ユウヤは、地を蹴った。彼の身体が、一瞬で空へと舞い上がる。宙を舞い、降り注ぐ剣の雨を避けながら空中で一回転。その回転の勢いを利用し、木剣を水平に一閃させる。風を切り裂き、最初に飛び込んできた兵士の胴体を一撃で叩き伏せた。 着地と同時に、しなやかなバク宙。背後にいた兵士たちの死角に滑り込み、木剣の柄で脇腹を正確に打ち抜く。一撃。次の瞬間には、別の兵士の懐に入り、剣を弾き、足を払って倒す。その動きは、もはや剣術ではなかった。 まるで舞踏。 剣を振るうというより
Last Updated : 2025-09-21 Read more