俺は木剣を抜くように動かし―― そして、すぐに収める動作をした。 その瞬間、目に見えない“斬撃”が走る。 バリアを斬り飛ばすように放ち、相手に叩きつける。 男の体が、衝撃とともに吹き飛んだ。 ――一撃。 今度は、間を置かずに歓声が爆発した。「きゃ~っ♡ ユウヤ様~っ! また勝っちゃいましたねっ♡」 ミリアが両手を振りながら、王族席でぴょんぴょん跳ねている。 頬を真っ赤に染めて、目をキラキラと輝かせながら、まるで恋する乙女そのもの。 ――うん、君が一番うるさいよ。「……もう終わりですよね?」 俺は木剣を肩に担ぎながら、相手に声をかけた。「ああ。完敗だ……降参だ。剣が全く見えなかった……。 流石、あのモンスターを倒しただけのことはあるな……」 男は潔く膝をつき、深く頭を下げた。 ――ようやく、終わった。 俺は心の底から、そう思った。 だが……。吹き飛ばされた男は、驚くほど早く起き上がってきた。 ――え、もう立つの!? ていうか、近い近い! しかも、額から血が流れていて、顔が真っ赤に染まっている。 そのままズカズカと俺に近づいてくる。 ――ちょ、待って。怖いって。 さっきより迫力あるんだけど!? お願いだから近寄らないで!「ちょっと待って、これ使って」 俺は慌ててポーチから治癒薬を取り出し、男に手渡した。「飲めばすぐ治るから。……たぶん」 男は一瞬きょとんとしたが、すぐに豪快に瓶を開けて一気に飲み干した。 ごくっ、ごくっ、ごくっ――「おおぉっ!? これは……すごい!!」 男の声が闘技場に響き渡る。「美味いし、出血も止まったし、痛みも
Last Updated : 2025-07-21 Read more