Semua Bab 異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。: Bab 81 - Bab 90

　そのやり取りを見ていた下級貴族の娘は、まるで時間が止まったかのように呆然と立ち尽くしていた。――王女様が……カーテシーを……？　目の前で、王族の象徴とも言える少女が、敬意を込めて挨拶をしている。しかも、その相手は――（……ミリア様……？）　娘の中で、確信が形を取り始めていた。　一方、ユウヤはというと、（うん？　背格好も同じくらいじゃん？）ミリアが“お姉様”として振る舞っている姿を見て、思わず口元が緩んだ。（お姉様ぶってるミリア、可愛いな……）　シャルロッテの服装は、どこか素朴で、いかにも“貴族の末娘”といった雰囲気だった。けれど、ミリアの反応を見る限り、親しさも、立場も、ただの友人ではない。（……ミリアムの妹ってことは……やっぱり王女様か）「ミリアの友達のユウヤです」　ユウヤがさらりとした調子でそう言うと、ミリアはぷくっと頬を膨らませて抗議してきた。「もぉ！　いい加減に許してくださいっ！」　その青く透き通った瞳には、うっすらと涙の膜が浮かんでいて、潤んだ視線でじっとユウヤを見つめている。（……あ、ちょっとやりすぎたか）　普段はどんな場面でも冷静で、気品を崩さないミリアが、ここまで感情をあらわにしているのは珍しい。その姿を見ていたシャルロッテ王女も、驚いたように目を丸くしていた。――お姉様が、こんなに感情をあらわにするなんて。「悪かったって。じゃあ、ミリアが紹介してよ……」　ユウヤが苦笑しながら促すと、ミリアはふぅっと息を吐いて、気を取り直した。「……ありがとうございます」　そして、姿勢を正し、誇らしげに言った。「こちらは、わたくしの大切な婚約者で――ユウヤ様ですわっ♡」

　ミリアは、その様子を見て、ふっと微笑んだ。「ええ、それでこそ王女ですわね」　シャルロッテは、少し照れくさそうに笑いながらも、胸を張って頷いた。その言葉に、ユウヤは少しだけ眉をひそめた。――物の問題じゃないんだよな。けれど、ミリアはすぐにシャルロッテに向き直った。「シャルロッテ。ちゃんと見て差し上げなさい。せっかくユウヤ様がお助けになられた方なのですから、お願いしますよ」「わ、私がですか～？」　シャルロッテは、目を丸くして驚いた。「当然ですわ。貴女も王女なのですよ」　ミリアの声は、優しいけれど、どこか凛としていた。「はぁい……」　シャルロッテは、しゅんと肩を落としながらも、小さく頷いた。（……なんだか頼りない返事だなぁ）　ユウヤは、苦笑しながらも、そのやり取りをどこか微笑ましく見守っていた。　扉が静かに開き、着替えを終えた下級貴族の娘が、そっと部屋に戻ってきた。その姿を見た瞬間、空気がふわりと変わった。エメラルドグリーンと白を基調にした、繊細なレースと刺繍が施された豪華なドレス。光の加減で淡く輝くその衣装は、まるで“春の湖面”のように清らかで美しかった。髪も丁寧に整えられ、控えめな飾りが彼女の表情を引き立てている。――まるで、お姫様のようだった。　後ろからついてきた使用人も、シンプルながら品のある制服に着替えており、さっきまでの“下級貴族”という印象は、すっかり消えていた。「サイズもピッタリですわね」　ミリアが、優しく微笑む。「よく似合っていますわっ♪」　シャルロッテも、ぱちぱちと拍手をしながら嬉しそうに言った。「うん。似合ってるね」　ユウヤも、素直にそう言って頷いた。　娘は、顔を赤らめながら、そっとスカートの裾をつまんだ。「このようなドレスを……下級貴族が着て……大丈夫な

　会場は、静まり返っていた。誰もが息を呑んで、その光景を見つめていた。「刃を回収してくれる？」　ユウヤは、近くにいた兵士に静かに声をかけた。「は、はい！ただちに！！」　兵士は慌てて駆け寄り、床に落ちたナイフの刃を丁寧に拾い上げた。これで、ひとまずの安全は確保された。だが、まだ終わりではない。（残りは……一緒にいたあの二人だな）　ユウヤは、子爵家と男爵家の娘たちに視線を向けた。（ナイフを持ってる可能性もあるし、共犯の線は濃厚）「ミリア、そこの二人も女性の護衛に捕らえさせてくれるかー」「はい。ユウヤ様」　ミリアは即座に頷き、控えていた女性の護衛に目配せをした。護衛たちは無言で動き、あっけなく二人を拘束する。「な、何よ！私たちは何もしていないわよ！」「そうよ！ただ食事とお話をしていただけですの！」　必死に言い訳をする二人だったが、その声には焦りと動揺が滲んでいた。そして、我に返った伯爵家の娘が、突然叫び始めた。「……この、平民の男！皇女殿下様の前で剣を抜きましたよ！やはりこの者は、皇女様を暗殺しに来たのです！」　その目は、もはや正気ではなかった。「私は事前に情報を得て……暗殺の阻止をしようと……！」――なるほど、そう来たか。　ユウヤは、呆れたようにミリアの方を見た。「だってさ……ミリア」　そう言って、鞘に収めた剣を軽く叩いて見せる。その仕草は、どこまでも冷静だった。　そのとき、騒ぎの中心が自分たちの娘だと気づいた貴族たちが、慌てて駆け寄ってきた。「なにかの間違いです！うちの娘が、このような馬鹿なことをするわけがありません！」「そうです！きっと脅されてやったに違いありません！」「そうだ！その男の暗殺の計画に気づき、勇敢にも立ち向かおうとしたのではないのか

♢最強の冒険者との試合へ「さすがユウヤ様でした。剣筋が見えませんでしたよ」　ミリアム王子が、穏やかな笑みを浮かべながら声をかけてきた。その表情には、先ほどの騒動を見事に収めたユウヤへの、率直な敬意がにじんでいた。「あ、ミリアム王子……」　ユウヤは少しばかり気まずそうに頭をかいた。（ごめん、全然気づかなかった……いつの間に隣に？）　気配をまったく感じさせずに立っていたミリアムに、思わず内心で舌を巻く。「どちらで剣術を習ったのですか？」「え？あぁ……独学ですね。完全に自己流ですよ」「独学で、そこまで……すごいですね。ぜひ、王国軍の指導をしてもらいたいですね」　その言葉に、すかさず――「ダメですわよ！わたしと居る時間が無くなってしまいますッ！」　ミリアが、まるで風のような速さで会話に割り込んできた。その勢いに、ミリアム王子も思わず苦笑する。「……すごいな。さっきまで別の人と話してたのに……」　ユウヤは、内心で感心しつつも、ミリアの“全方位レーダー”に助けられたことに少し安堵していた。「この王国に、すごい冒険者や剣の達人っていないの？」「王国軍に、剣の指導をしてくれている冒険者はいますよ。腕は確かです」「おおぉ。戦ってみたいですね」「良いですね！ぜひお願いします」　ミリアム王子が嬉しそうに頷いたそのとき――「ユウヤ様、また試合ですかぁ～？」　シャルロッテが、どこからともなく現れて、ぱちぱちと手を叩きながら目を輝かせていた。その無邪気な声に、ミリアが再びむぅっと頬を膨らませる。「……また、ですの？」　ユウヤは、肩をすくめて笑った。「いや、まだ“やる”とは

　そのとき、遠くからミリアの怒声が響いた。「卑怯です！負けたからといって、大勢で襲うのですか！？貴方はっ！」　その声には、怒りと焦りが混じっていた。金色の淡いセミロングヘアが、彼女の動揺に合わせてふわりと揺れる。そして、その隣で、王様がチラチラとミリアに睨まれていた。（……王様、完全にとばっちりだな）　王様は、困ったように視線を泳がせながら、「え？何？俺？」という顔をしていた。「練習を頼んだんだって！心配しないで見てて」　ユウヤが手を振って説明すると、ミリアは一瞬むぅっとした顔をしたが、徐々に心配そうな顔に変わっていった。「……そうなのですかぁ……」　王様も、ようやく誤解が解けたことに気づき、ほっとしたように胸を撫で下ろしていた。　そして、観客たちは再びざわめき始める。次なる試合は、五対一。王国の精鋭たちが、ひとりの“薬屋王子”に挑む。　試合が始まると、当然のように五人の兵士たちがユウヤを囲んだ。全員が木剣を構え、息を合わせて一斉に踏み込んでくる。だが、ユウヤは防がなかった。最初から“防ぐ”という選択肢を捨てていた。　五本の剣が同時にユウヤの頭上から振り下ろされるその瞬間――ユウヤの身体がふっと沈み、まるで水面を滑るように回り込んだ。相手の剣が振り上げられ、両腕が上がった、わずか一瞬の隙。そこに、迷いなく彼の木剣が打ち込まれる。――シュッ！　鋭い風切り音が響き渡る。――ドスッ！　ドスッ！　ドスッ！　ドスッ！　ドスッ！　まるで雷鳴が轟くかのような鈍い衝撃音が連続して鳴り響き、五人の兵士たちの身体が次々とコマのように吹き飛ばされていく。誰も、ユウヤの動きを正確に捉えられなかった。その動きは、まるで舞踏のような流麗な回転。剣を振るうというより、そこに存在する“流れ”そのものを操っているかのようだった。　地面に倒れ伏す兵士たちの間を、ユウヤは一歩も乱さずに立ち尽く