――あー、放っておいたら集まってきたか。でも、誰も見てないし…… ちょっとくらい、やってみてもいいよな?昔から憧れてた、あの技。俺は剣を軽く構え、調子に乗ってクルリと回転。 斬る“真似”をしながら、バリアを展開する。 ――ヒュン、ズバッ!風を切るような音が響いた。次の瞬間、周囲の盗賊たちが―― まるで時間が止まったように、その場で崩れ落ちていった。回転の一振り。 それだけで、残っていた盗賊はほぼ全滅していた。 ……うわっ。これ、めちゃくちゃ格好いいな。ずっと一度やってみたかったんだよな~この技。 ゲームの必殺技みたいな爽快感がある。 風を巻き込んで、敵を一掃する――まさに理想の“あの一撃”。 ……うん、気分が良い。でも、これ誰かに見られてたらちょっと恥ずかしいな……。数人の盗賊が、逃げるように森の中へと消えていった。 でも、俺は深追いしなかった。 ――討伐に来た冒険者じゃないし、兵士でもない。 他の人の“仕事”を奪うのは、ちょっと違うよな。俺は……ただの薬屋だし。ふと視線を感じて振り返ると、御者席にいた王国の兵士と目が合った。彼は、完全に呆然としていた。 口は半開き、目は大きく見開かれたまま、まるで時間が止まったように。 ――うわぁっ。見られてた!でも、まあ……バリアがバレてなければセーフか。 剣を振ってるように見せてたし、あれなら“すごい剣技”ってことで通る……はず。 ……いや、でも恥ずかしいんですけど!
Last Updated : 2025-08-06 Read more