All Chapters of 異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。: Chapter 51 - Chapter 59

59 Chapters

50話 秘めたる技とミリアの優しさ

 ――あー、放っておいたら集まってきたか。でも、誰も見てないし…… ちょっとくらい、やってみてもいいよな?昔から憧れてた、あの技。俺は剣を軽く構え、調子に乗ってクルリと回転。 斬る“真似”をしながら、バリアを展開する。 ――ヒュン、ズバッ!風を切るような音が響いた。次の瞬間、周囲の盗賊たちが―― まるで時間が止まったように、その場で崩れ落ちていった。回転の一振り。 それだけで、残っていた盗賊はほぼ全滅していた。 ……うわっ。これ、めちゃくちゃ格好いいな。ずっと一度やってみたかったんだよな~この技。 ゲームの必殺技みたいな爽快感がある。 風を巻き込んで、敵を一掃する――まさに理想の“あの一撃”。 ……うん、気分が良い。でも、これ誰かに見られてたらちょっと恥ずかしいな……。数人の盗賊が、逃げるように森の中へと消えていった。 でも、俺は深追いしなかった。 ――討伐に来た冒険者じゃないし、兵士でもない。 他の人の“仕事”を奪うのは、ちょっと違うよな。俺は……ただの薬屋だし。ふと視線を感じて振り返ると、御者席にいた王国の兵士と目が合った。彼は、完全に呆然としていた。 口は半開き、目は大きく見開かれたまま、まるで時間が止まったように。 ――うわぁっ。見られてた!でも、まあ……バリアがバレてなければセーフか。 剣を振ってるように見せてたし、あれなら“すごい剣技”ってことで通る……はず。 ……いや、でも恥ずかしいんですけど!
last updateLast Updated : 2025-08-06
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51話 女神の贈り物とミリアの膝枕

水袋を収納から取り出して、頭を濡らす。 それだけでも多少はマシになるけど――せっかくだし、試してみるか。えっと……アイテム作成。 イメージ、イメージ……。「水で濡らすと汚れが浮いて落ちて、拭くだけでサラサラになって、  しかも良い匂いがするアイテム」 ――こんな適当なイメージで、成功するのかな?そう思いながら作成を実行すると、 手の中に、淡く光る小瓶が現れた。使ってみると、髪の汚れがふわっと浮き上がり、 タオルで拭くだけで本当にサラサラに。 しかも、ほんのり甘くて爽やかな香りまで漂ってきた。 ……なにこれ、すごい。っていうか、なんでもありだな。 さすが女神様のスキル。強さも、便利さも、サービス精神も全部込み。 今回も、この力があったから助かったんだよな。 ――ありがと、女神様。 やっぱり、強さって必要だったんだな。 あのとき、心配そうな顔をしてた理由……今なら分かる気がする。髪がすっかりキレイになったところで、 ミリアの膝の上に頭を乗せると、彼女は嬉しそうに微笑んで、そっと撫でてくれた。「わぁ♡ 本当にキレイになって、サラサラですわっ♪ それに……とっても良い匂いですわ」「ミリアが頭を撫でてくれるから、癒やされるよ」「えへへ……♪ わたしも癒やされてますわ」ミリアの手は、優しくて、あたたかくて―― まるで、戦いの疲れも全部溶かしてくれるみたいだった。一騒動あったものの、無事にミリアの屋敷へと到着した。 馬車が停まると、屋敷の使用人たちが整列し、恭しく頭を下げて出迎えてくれる。「はぁ……無事に着いたなぁ……」俺が思
last updateLast Updated : 2025-08-07
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52話 薬屋の夢と皇女の朝

頭の中に浮かんでくるのは――やっぱり、店のことだった。 ……でも、俺の常識が、この世界で通用するかどうかなんて、分からない。薬屋としての知識も、接客の感覚も、 この国の制度や文化に合ってるとは限らない。それでも――やっぱり、あの店に立って、客と話して、 誰かの役に立てる時間が、俺は好きだった。 ――もう一度、あの場所に立てる日は来るのかな。そんなことを考えながら、俺はゆっくりと目を閉じた。考え事をしていたはずが、気づけば眠っていた。 目を覚ますと、まだ外は薄暗く、空気はひんやりとしている。 窓の外には、静寂と淡い朝靄が広がっていた。 ――昨日は夕飯も食べずに寝ちゃったしな。 腹も減ったし、何か軽く食べよう。そう思ってリビングに向かうと、意外な光景が目に入った。ミリアが、すでに起きていた。朝の薄明かりの中、ドレスに着替え、優雅にお茶を飲んでいる。 その姿は、まるで絵画の中の貴婦人のようで――思わず見とれてしまう。「おはよ」俺が声をかけると、ミリアはにこっと微笑んで振り向いた。「おはようございます、ユウヤ様」その笑顔は、朝の光よりも柔らかくて、どこか安心感があった。「朝早いんだね」「ユウヤ様こそ、お早いのですね」「昨日は、夕食も食べずに早く寝ちゃったからね。 ベッドに倒れ込んだら、そのまま……」「わたくしもですわ。 気づいたら、朝になっていましたの」ミリアがカップを置いて、ふわっと笑う。「やっぱり馬車での移動は疲れるね。 あの狭さと揺れ、精神的にも肉体的にもキツいよ」「はい……とても疲れますわね。 でも、ユウヤ様が隣にいてくださったので、わたくしは安心していられましたの」そう言って、ミリアはそっと目を細めた。
last updateLast Updated : 2025-08-08
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53話 新たな従業員と店の状況

 ……ん?ふと、思った。“相手を思いやる心”――それって、メイドさんの方じゃないか?俺が何も言わなくても、察して動いてくれて、 気を配って、空気を読んで、完璧に仕事をこなしてくれる。 ――それ、日本人の美徳そのものじゃん。 ……仲良くなれそうな気がする。 いや、なれ―― ……いや、ダメだな。仲良くしてたら、ミリアに怒られそうだ。あの子、笑顔で「ユウヤ様、最近メイドと仲がよろしいですわね♡」とか言いながら、 内心でバチバチに嫉妬してそうだし。 ――うん、やめとこう。 俺の平穏のためにも。「今日のご予定は?」ミリアが紅茶を一口飲みながら尋ねてきた。「お店に行かないと不味いよね。昨日は休みにしちゃったし」「そうでしたね……」ミリアは少し疲れた表情を浮かべながら、メイドを呼んだ。 王都との往復や、連日の緊張のせいか、少し疲れが出ているようだった。「従業員の方の用意は出来ているのですか?」「はい。勿論でございます」メイドは即座に答えた。「え? もう?」俺は思わず声を上げた。 こんなにも早く手配が完了しているとは思っていなかった。「従業員は、国王陛下のご紹介と、わたくしの使用人の中から選びましたの。 優秀で、信用できる方々ばかりですわ」ミリアは自信満々に微笑んだ。 ――さすが、抜かりないな。でも、ふと思い出した顔があった。 昨日、怪我をした女性護衛――あの人、少し無理してたように見えた。「それなんだけどさ。 女性の護衛の人、店の従業員になりたいと思ってないかな?」俺がそう尋ねると、ミリアは少し意外そうに目を瞬かせた。「さぁ~、どうでしょうか。&he
last updateLast Updated : 2025-08-09
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54話 新たな一日、開店準備

しばしの静寂のあと、ミリアがそっと紅茶を口に運び、 俺も、冷めかけたカップを手に取った。 ――さて。そろそろ、店に向かう時間か。気持ちを切り替えるように、俺はゆっくりと立ち上がった。「じゃあ、俺はそろそろ行ってくるよ。 今日から本格的に動き出すし、準備もあるからね」そう言いかけたところで――「わたくしも、ご一緒いたしますわ」ミリアが、当然のように立ち上がった。「えっ? ミリアも来るの?」「はい。ユウヤ様のお店がどのように始まるのか、 この目で見届けたいのですわ。 それに……わたくしも、少しはお役に立ちたいですもの」そう言って微笑むミリアは、すでに外出用のドレスに着替えていた。 ――完全に、行く気満々だったらしい。「……そっか。じゃあ、一緒に行こうか」「はいっ♪」ミリアは嬉しそうに頷き、俺の隣にぴたりと並んだ。こうして、俺とミリアは並んで屋敷を出た。 新しい一日が、静かに、でも確かに動き出していた。病院との軋轢と貴族の乱入朝食を早めに食べて早めにお店に向かうと……うわぁ……。店の前には、昨日から並んでいたらしい人たちがずらりと列を作っていた。 先頭の方なんて、地面に寝転がって順番を待ってるし。 列は通りの角を曲がって、さらに奥まで続いている。中には、明らかに負傷している人もいた。 足を引きずっている者、顔色の悪い者、包帯を巻いたままの者―― 中には、立っているのがやっとという重傷者までいる。 ――一日だけ休んだだけで、これかよ……。俺は、思わず頭を抱えた。ここは病院じゃないぞ? 薬屋なんだけど……。「ミリア、病院は…
last updateLast Updated : 2025-08-10
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55話 王家の紋章と新たな展開

一通り、重傷者の治療を終えたあと、 俺は店の奥の部屋に戻って、椅子に深く腰を下ろした。 ――ふぅ……さすがに疲れたな。ようやく一息つけると思った矢先、 店の方から騒がしい声が聞こえてきた。怒鳴り声と、人々のざわめき。 外の空気が、ざわざわと波立っているのが分かる。ん?……またお貴族様か? しつこいなぁ……。面倒な予感しかしない。俺はため息をつきながら店の方へ出てみると、 案の定、貴族風の男が護衛と兵士を引き連れて騒いでいた。顔を真っ赤にして、店を指差して怒鳴っている。「おい! 商業ギルドと薬師ギルドの販売許可は取っているのか!?」 ――は?そこまでの許可は……取ってないけど? ていうか、必要なの? そんなに?俺は一瞬、言葉を失った。 ……なんだか、面倒になってきたな。別に、薬屋をやりたくて仕方なかったわけじゃない。 ただ、誰かの役に立てるならって思って始めただけで――俺は、楽しく暮らしたいだけなんだよ。金なら、もう結構貯まった。 この店ごと、国王――義理の父親に買い取ってもらえば、 現金収入も得られるし、バカ貴族に絡まれることもなくなる。 ――それも、悪くないかもな。こいつのお陰で決心がつきそうだわ。俺は、静かに視線を貴族の男に向けた。その目は、怒りというより―― ただ、うんざりしていた。「あ、許可は取ってないですね」俺が正直に答えると、貴族風の男はニヤリと口元を歪めた。「ほぉ~、取っていないのか。では――違法だな。……コイツを捕らえろ」男が護衛兵に指示を出すと、兵士たちがじりじりと俺に近づいてくる。 ――はぁ、やっ
last updateLast Updated : 2025-08-11
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56話 国王公認の薬屋と新たな決意

 ――許可証だけじゃなく、看板まで……。これがあれば、誰が見ても“王国公認”の店だと分かる。下手に絡んでくる連中も、さすがに手を引くだろう。「そうだ。他にも許可証って取った方がいいの?」俺が念のために尋ねると、デューイは即座に首を振った。「必要ありません。この店は、王国の事業として正式に認可されています。よって、商業ギルド・薬師ギルドの干渉も受けません」「……はぁ~、良かった」思わず、肩の力が抜けた。もう、面倒事は勘弁してほしい。静かに、穏やかに暮らしたいだけなのに――この数日で、俺の日常は完全にひっくり返った。薬屋として、平和に過ごしたかっただけなのに。気づけば王族になり、モンスターや盗賊に襲われ、果ては貴族と揉める始末だ。 ――あはは……辞めるタイミング、逃しちゃったかな。正直、うんざりしてた。でも、看板を手にした今――デューイや、ミリアや、あの店を頼ってくれる人たちの顔が浮かんだ。 ……続けるか。俺は、看板をそっと見つめながら、小さく息を吐いた。「よし。じゃあ、もう少しだけ頑張ってみるか」 ――そうだ。 女性護衛とデューイの話し合いの時間、ちゃんと作ってあげないと。「デューイと、今後の話し合いをしてきて良いよ」俺がそう声をかけると、女性護衛は少し気まずそうに視線を逸らし、デューイは「?」といった顔で首をかしげた。そこで、ミリアがふわりと微笑んで一言。「二人の将来の話をしてきても良いわよ」その言葉に、二人は一瞬固まったあと、顔を赤くしながら少し離れた場所に移動し、向かい合って座った。 ――うん、いい感じだ。「デューイが店に来てくれれば助かるんだけどなぁ~」俺がぽつりと呟くと、ミリアが紅茶を口にしながら首を傾げた。「そう
last updateLast Updated : 2025-08-12
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57話 店を従業員に任せて他の町へ行ってみたい

「さて――二人とも、今から働いてもらいますからねっ」「「はいっ!」」 元気よく返事をする二人に、俺は異次元収納の使い方を教えた。空間が歪み、吸い込まれるように物が消えていく様子に、二人は目を見張っている。売上金もその中に入れてもらうようにして、必要なときに俺が補充や確認ができるようにする。 そして――給金の話。「給料は月に一回。初めに聞いた通り、金貨一枚ずつで」 そう言った瞬間、二人はぴたりと動きを止めた。 ……ん?なんで固まってるの?安すぎた?それとも高すぎた?俺が困っていると、デューイがそっと耳元に顔を寄せてきた。「……払いすぎです。店の店員の給金ではありませんよ。それ、王国の役職持ちの給金レベルです」「……あ、そうなんだ」 でも、まあ――「役職付きだった大隊長を雇うんだから、二人はそれで良いんじゃない? その分、しっかり働いてもらうよ。店の護衛や品出しとかね」 俺はニヤッと笑ってみせた。特に理由はないけど、なんとなく言ってみたかっただけだ。女性護衛は顔を赤くしながら「……はいっ」と答え、デューイは苦笑しながら「……了解しました」と頭を下げた。 ――うん、いい感じだ。「では……有り難く頂いておきます。出来ることなら何でもやりますので、何でも言ってください」「……有難う御座います」 真剣な表情で頭を下げる女性護衛に、俺も思わず頭を下げ返した。 ――いや、でもさ。 メイドさん……話が違うんですけど……?金貨一枚って、そんなに高かったのか?こっそりミリアに聞いてみると、どうやら帝国と王国では、貨幣価値に多少の差があるらしい。 ――それ、先に説明しておいてよ。 まあ、今さら言っても仕方ないか。お金を扱う以上、信用してい
last updateLast Updated : 2025-08-13
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58話 嫉妬心

 ……いやいや、待ってくれ。俺、薬屋やってただけなんだけど?モンスターを倒したのも、盗賊を撃退したのも、たまたま運が良かっただけで――……って、誰に言っても信じてもらえないんだよなぁ。 どうやら、俺がSSS級冒険者になってしまったのは――国王が認め、ミリアが認めたかららしい。その後、王都の冒険者ギルドのギルマスと国王が、「一応、皇帝にも報告しておこう」と連名で書状を送ったらしいんだけど――返ってきた返事は、こうだった。『娘の命の恩人で、冒険者。王国軍が数年かけて討伐できなかったモンスターを、単独で、しかも複数体討伐したんだろう?何が問題なんだ?』 ――逆に聞かれたらしい。 ということで、皇帝にも正式に認められて、俺は“SSS級冒険者”になってしまった。 ……いや、俺、薬屋なんだけど。 冒険者カードも一応持ってるけど、使う予定はまったくない。何とも呆気ない話だ。ちなみに、俺が取得したクラスより上があるらしい。“SSSS級”――四つ星の称号。ただ、これはほとんど話題にすら上がらない。実現があまりにも難しいからだという。条件は――皇帝、そして各国の王が、その者の功績を“相応しい”と認めた場合にのみ与えられる称号。 ……うん、必要ないでしょ。 名誉だけで、特に何か得られるわけでもなさそうだし。入国税?ミリアと一緒にいれば免除されるし。税金?そもそも、そこまでお金に困ってない。俺には、もうこれ以上、何かを求めるものは――たぶん、ない気がしていた。静かに暮らして、たまに誰かの役に立てて、それで十分だ。♢ミリアの提案と募る嫉妬心 リビングにいたミリアに、ふと思いついたように話しかけた。「他の町というか……国も、見てみたいんだけど」 ミリアは優雅にカップを傾けながら、静かに頷いた。「そうですわね……わたくしも、この町には少し
last updateLast Updated : 2025-08-14
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