All Chapters of 異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。: Chapter 21 - Chapter 30

96 Chapters

20話 国王の無理難題と婚約者の反撃

 そんな感じで数日間も移動をし、ついに王都の入り口へとたどり着いた。辺りは賑やかな声に包まれ、石畳の道を行き交う人々の姿が見える。やがて馬車は、堂々とした王城の前に着き、ゆっくりと止まった。長旅の終わりを告げるように、微かな振動が伝わってくる。「はぁ……長かった。」 俺は思わず息を吐いた。ここ数日間の馬車での移動は、快適な膝枕こそあったものの、検問や盗賊の襲撃といった不安要素も多く、常に気が抜けなかった。 ……とはいえ、心臓が一番跳ねたのは、ミリアのふとした仕草や言動だったかもしれない。 馬車が止まったからといって、それが目的地に着いた合図とは限らない。王都に入る時の検問や、ひどい時には盗賊の襲撃などで止められることもあると、窓の外を眺めていたミリアが教えてくれた。「ユウヤ様、王城の前に着きましたよ」 ミリアの声が、耳に心地よく響く。平民の服を着たメイドと護衛が馬車のドアを開けてくれて、ミリアの降りる手伝いをしてくれていた。その優雅な所作に、へぇ~俺もミリアと付き合うなら覚えないとだよなぁ……なんて、ぼんやり考えていた。 馬車から降りると、王城の兵士が恭しく応接室に案内をしてくれた。広々とした応接室で待っていると、すぐに声が掛かり、王の間へと案内をされた。「俺、初めてだから分からないんだけど……」 俺はミリアに小声で尋ねた。格式ばった場所に慣れていない俺は、どう振る舞えばいいか見当もつかない。「平民なのですから分からなくて当たり前ですよ」 ミリアはにこやかに答えた。その笑顔は、俺の不安を少しだけ和らげてくれる。「いや……王様だし。無礼だって言われて牢屋行きになるんじゃない?」 冗談めかして言ってみたが、心のどこかで本当にそうなる可能性も考えていた。前回の逮捕の件もあるし、貴族の常識は俺には理解できない部分が多い。「他の者と同じ様にしてれば良いと思いますよ」 ミリアはそう言って、俺の腕をそっと握りしめた。
last updateLast Updated : 2025-07-01
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21話 皇女ミリアの絶対的威光

 ♢王の間での激変 王様は苛立ちを隠せない様子だった。 王座に座る彼の顔は紅潮し、わずかに口元が引きつっている。そのとき、跪いていた護衛の二人がすっと立ち上がり、近づいてきた兵士から鮮やかに武器を奪い取った。キンッ、キンッと金属音が響き、兵士たちの顔に驚きと困惑の色が浮かぶ。 ――って、おいおい……国王直属の兵士の武器を奪うなんて、ただじゃ済まないんじゃないのか? 俺の心臓がドクンと大きく跳ね、全身の血の気が引いていくような感覚に襲われる。「貴様ら……そんな真似をして、“冗談でした”や“間違いでした”で済むと思うな! 謀反の罪で死にたいらしいな……よし、全員捕らえて牢屋に入れておけ! 後で、処刑だ!」 王の怒号が広い王の間に響き渡る。その声は激情に震え、まるで雷鳴のようだ。直後、増援の兵士たちがなだれ込むように現れ、俺たちを取り囲んで槍を向けた。その数はあっという間に二十、三十と増えていく。「わたくしに刃を向けて……さて、どちらが“謀反”になるのかしらね? ラウム」 ミリアは一歩も退かず、王をまっすぐに見据えた。その青い瞳は一点の曇りもなく王を射抜き、その声は玉座の間に響き渡る鐘のように、あるいは氷のように冷たく響いた。その静かな、しかし有無を言わせぬ威圧感に、兵士たちの動きが一瞬止まる。「さっきから……何を言っている! 意味が分からん!」 王は明らかに混乱している。最初は怒鳴りつけていたはずの彼が、ミリアの放つ静かな威圧感に押され、声に焦りが滲みはじめている。彼の額には、すでに脂汗がにじみ出していた。 ――大丈夫なのか? ただの貴族のミリアの方が、ずっと余裕そうだけど……なんだろう、今はむしろ王様のほうが気圧されてる気がするんだけど……? この状況は、俺の常識を遥かに超えていた。「本気で、わたしに襲い掛かる気なのかしら? 
last updateLast Updated : 2025-07-02
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22話 皇女の威光と薬師の交渉

 ミリアは、王女様にも矛先を向けた。王女様は、あまりの恐怖で震えて跪くと言うより、そのままへにゃへにゃと座り込んでしまっていた。彼女の顔は、血の気が失せている。「なぁ……王女様は何の発言もしてないぞ」「ユウヤ様を狙う者は全て敵ですわっ」 ミリアは頑として譲らない。その表情には、一切の妥協が見られない。「許してあげれば?」「ダメですわ! 国王の行いとは思えません。まったく王族の恥ですわねっ」 ミリアが王様を睨みつけると、王様は目を逸らして更に頭を下げた。彼の額には、脂汗が滲んでいる。 どんな状況なんだよ? 俺達5人が玉座を占領して……王様達が跪き頭を下げてるし。まるで、子供の遊びの王様ゲームが現実になったような、そんな非現実感があった。「えっと……そこの兵士の人、大扉を開けないように伝えてくれるか?」 俺は周囲の兵士に指示した。この状況が外部に漏れるのはまずいだろう。「は、はい! かしこまりました!」 兵士はすぐに王の間の大扉を閉めた。重厚な扉がドンッと音を立てて閉まり、外部との音を遮断する。「兵士の人、全員ここに集まってくれるか?」 俺が声をかけると、20人の兵士が俺の周りに集り、全員が俺の前で跪いた。 うわ~俺が偉くなった気がする……。権力って、こんなにも簡単に手に入るものなのか、と呆然とした。「ここで見た事は話さないようにな! 話すと家族が危険に晒される事になるから気を付けろよ」 俺は兵士たちに念を押した。彼らの顔は、恐怖と困惑、そして忠誠心のない交ぜになった表情だった。「はい。絶対に話しません!」 兵士たちは口々に答えた。その声には、本物の恐怖が宿っている。「ユウヤ様……なにを勝手に終わろうとしてるのですか! この王の謀反は許しませんわ」 ミリアは、不満そうに俺を見上げた。その瞳には、まだ怒りの炎が燃え
last updateLast Updated : 2025-07-03
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23話 王族への道、平民ユウヤと皇女ミリアの婚約騒動

「それもそうですわね」 ミリアも納得したようだ。「まぁ……ミリアがいてくれれば、問題ないと思うけどさ」 俺がそう言うと、ミリアはぷくっと頬を膨らませた。「か弱いわたくしに、いったい何をさせようというのですか……?」「いやいや、か弱い女の子が王様をイジメたりしないでしょ」「イジメてませんわ……」 ミリアは膨らませた頬のまま、ぷいっとそっぽを向いてしまったけれど、からかわれてるだけだと分かってくれてるようで良かった……。「じゃあ治癒の薬と美容薬を作って帰りますか」「はぁい♪ ユウヤ様」 ミリアは楽しそうに返事をした。「ユウヤ様、本当にご婚約を?」 王様が、恐る恐る尋ねてきた。その声には、まだ不安が残っているようだ。「え? あ……はい」 俺は曖昧に答えてしまった。「ユウヤ様……なんですの、その間は?」 ミリアが不満そうに俺を見上げた。「えっと……俺で本当に良いのかなと……ミリアはお姫様だったし」 王様より地位のあるミリアが平民の俺と結婚して良いのか? 結婚して俺はどうなるんだ? 不安なんですけど。その心配を王様がしてくれてるのか……? 俺の内心は、期待と戸惑いが入り混じっていた。「ユウヤ様じゃなきゃダメなのです!」 ミリアはきっぱりと言い放った。その声には、一切の迷いがなく、強い意志が込められていた。「だそうです」 俺は王様の方を見た。「そうですか……ご婚約おめでとう御座います」 王様は、安堵したように言った。その顔には、重い荷を下ろしたかのような清々しさが見える。「有難う御座います」「ミリア皇女殿下。ユウヤ様を、うちの養子に致しますか?」 王様が、ミリアに提案した。ん?王様の養子?俺が王族になるの?意味が分からないんだけど?「そうね……お願いできるかしら」 ん? ミリアさん? 何を言ってるの? 勝手にお願いしないで! 俺はミリアの言葉に、思わず目を見開いた。「はい。喜んで協力させて頂きます」 王様は、深々と頭を下げた。「え? 養子?」 俺は混乱して尋ねた。頭の中で、これまでの常識がガラガラと音を立てて崩れていく。「はい。平民と皇女殿下は結婚は出来ないので……王族の養子となってから結婚をするのです。とは言っても王族の養子にも平民はなれないので貴族の養子にもなって頂きますが」 王様は丁寧に説明してくれた。
last updateLast Updated : 2025-07-04
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24話 王都の裏側平民ユウヤ、人身売買の現場へ

 前回は店の価格交渉が目的だったから、護衛や使用人を連れていると“金持ち”に見られて不利だと思って断っただけで――別に護衛や使用人が嫌いってわけじゃない。むしろ、今回はお願いしておいたほうが安心だ。 王都に詳しい兵士がいれば、道案内もしてもらえるだろうし、ミリアの護衛も手薄だ。何かあった時のためにも、念のため備えておいたほうがいい。「ミリアの護衛が少ないので、護衛は助かります」「お役に立てそうで良かったです」 王様は嬉しそうに答えた。完全に王様が友達感覚というか、明らかに接待をする側になってるな……まあミリアを怒らせたのは王様なので仕方ないか。♢王都散策 王城から王都へ出てきた。 王城から出ると、活気があって賑やかで苦手だけど、たまには賑やかな場所も良いかな……。喧騒が耳に届き、様々な匂いが鼻をくすぐる。焼き立てのパンの香ばしい匂い、色とりどりの布地が風になびく音、大道芸人の軽快な音楽。五感が刺激され、少しずつ気分が高揚していく。  この賑わいの裏には、見えない影が潜んでいるような気がした。こんなに活気があるのに、どこか底知れない不穏さを感じるのは、俺が異世界から来たせいだろうか。 ミリアに腕を組まれて、商店を回って買い物を楽しんだ。通りには様々な露店が並び、活気ある声が飛び交っている。「へぇ……こんなのもあるんだ?」 俺は興味深そうに、ある店の店頭に並べられた武器を見つめた。手裏剣に似たような武器があった。へぇ~投げる武器もあるんだ……注意をしておかないとだな。この世界では、思いがけない場所から脅威が飛んでくるかもしれない。「投げて使う武器かしら?」 ミリアは俺の視線を追って、同じものを見た。彼女の好奇心旺盛な瞳が、武器をじっと見つめている。「はい。買ってすぐには使用は難しいですが……訓練して使えるようになれば、とても便利でございます」 店主
last updateLast Updated : 2025-07-05
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25話 行方不明の婚約者・王国を揺るがす捜索作戦

「……それにしても、ずいぶん長くないですか? 少し様子を見てきますわ」 ミリアは不安げに眉をひそめながら立ち上がった。言葉には出さなかったものの、心の奥に、かすかな胸騒ぎが広がり始めていた。 ――変なことになっていなければいいけれど。まさか、置いていかれたなんて思ってませんわよね……? そんな心配を抱えながら、ミリアは武器屋へと向かう。昼間の今は、冒険者たちが依頼に出ている時間帯。店内には他の客の姿はなかった。「先ほど、こちらにいらした方は?」 ミリアが店主に声をかける。微かに焦りを帯びた声色だった。「ええ、だいぶ前に出て行かれましたよ。かなり慌てた様子で、キョロキョロしながらこの先の方へ走って行かれました。もしかしたら、置いていかれたと勘違いされたんじゃないですかね?」 店主の説明に、ミリアの胸がきゅっと締めつけられる。 ――やっぱり……! 誤解させてしまったんですのね……っ!「ユウヤ様の護衛は、どうなっているのです?」 ミリアは鋭い視線で護衛たちを睨みつけた。問い詰められた護衛たちは、言い訳すらできず、沈黙するしかなかった。「な、何をしていたのですか!? ユウヤ様は、わたくしにとって大切な婚約者なのですよ!  護衛をつけないだなんて……本当に、使えない護衛ですわねっ! いますぐ探し出しなさい。もし何かあったら――絶対に許しませんから!」 ミリアの怒声が店中に響き渡る。その叫びには、ユウヤを失ってしまうかもしれないという焦燥と、護衛たちへの激しい苛立ちがにじんでいた。 護衛たちは顔を青ざめさせたまま、慌てて捜索に向かっていく。  王国の兵士も事の重大さを察し、応援を呼びに走り、同時に国王への報告へと向かった。「こんなに護衛がいるのに……誰ひとり、ユウヤ様について行っていないなんて……」 ミリアは不安と苛立ちに胸を締めつけられ、自らの無力さを噛みしめた。  数時間が経ってもユウヤの行方は知れず、焦りはさらに募っていく。彼女は王国兵を呼びつけ、ユウヤの捜索を最優先事項として命じた。もはやその命令は、王国の法律に等しい絶対的なも
last updateLast Updated : 2025-07-06
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26話 王都封鎖・王家の紋章が招いた誤解

 俺は頷きながら、彼女の手をそっと握り返した。「それに、俺も黙ってさらわれるつもりはないしね」 そう言った瞬間、子どもたちの表情が少しだけ和らいだ。「え……? な、何をするの……?」 不安げに尋ねてくる声に、俺は小さく笑って答える。「別に暴れたりはしないよ。だから安心して」「……はぁい」 女の子は小さく頷き、俺の隣にぴたりと寄り添った。  その小さな体の震えが、俺の腕を通して伝わってくる。 ――絶対に、守る。  俺はそっと目を閉じ、気配を研ぎ澄ませた。  馬車の外の音、風の流れ、足音の数……すべてを感じ取る。  ミリア、頼む。早く気づいてくれ――。 王都を出るための検問が行われており、馬車はその列に並んでいた。 堂々と馬車に人を乗せて運び出そうとしている――つまり、この国には奴隷制度が存在するということか。 あるいは、兵士の中に協力者がいるのかもしれない。 どちらにせよ、この王国の裏側は、俺が思っていた以上に深く、そして黒い。 やがて、兵士たちが荷物検査にやってきた。「荷物は何だ?」 兵士の一人が馬車の幌に手をかけ、鋭い視線を向けてくる。「はい。奴隷の運搬でございます」 盗賊の一人が、慣れた口調で答えた。「中を見せろ」「はい……ただの奴隷ですよ」 幌がめくられ、兵士が中を覗き込む。  その瞬間、俺と兵士の視線がぶつかった。 ――今だ。「あの~……俺、拐われたんですけど~」 できるだけ軽く、しかしはっきりと告げながら、懐から王族の紋章が刻まれたナイフを取り出して見せた。  国王から直接渡された、正真正銘の王家の証。 兵士の目が見開かれ、呼吸が一瞬止まったように動きが固まる。  だが、すぐにその表情は鋭く引き締まり、彼は幌を勢いよく閉じると、外に向かって怒鳴った。「おい! こっちだ!」 その声は、空気を切り裂くように鋭く、周囲の兵士たちが一斉に動き出す気配がした。 ――さて、ここからが本
last updateLast Updated : 2025-07-07
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27話 王都での騒動・ユウヤの拘束とミリアの怒り

 ――この空気……誰か来たな。  王様か、ミリアか……。  どちらにせよ、ただ事じゃない気配だ。 そう、俺は今――王都の出入り口にある警備兵の詰め所、その牢屋の中にいた。  当然ながら、盗賊と“同じ扱い”で、しかも“同じ牢屋”に入れられているというオマケ付きだ。 ……いや、ほんと、どうしてこうなる。 そんな中、見慣れた顔――王様が詰め所に入ってきた。  目が合った瞬間、その表情が驚きと焦りに染まる。「ユウヤ様……っ! 申し訳ない! このお方を、早くお出ししろ!」 王様が声を荒げて兵士に命じると、周囲の兵たちも慌てて動き出した。  王の言葉に倣い、全員がその場に跪き、頭を垂れる。 だがその顔には、驚愕と困惑が入り混じっていた。  ――平民の男に、王が頭を下げている。  その異様な光景に、兵士たちは内心の動揺を隠しきれていなかった。「いやぁ……王様からもらったナイフ、ちゃんと役に立ったよ」 俺は苦笑いを浮かべながら、皮肉まじりに言った。「はぁ……役に立ったとは到底思えませんが……渡しておいて良かったです」 王様は深いため息をつきながらも、どこか安堵したような表情を浮かべていた。「でも、当然ながら信じてもらえませんでしたけどね」 俺が肩をすくめて言うと、王様は申し訳なさそうに目を伏せた。「……本当に、申し訳ありません……」 その声には、心からの謝罪がにじんでいた。「いや、王様が悪いわけじゃないですから。気にしないでください」 そう言って笑ってみせると、王様はふるふると手を震わせながら、横目で兵士たちを睨みつけた。  その目には、明らかに怒りの色が宿っている。 ――ああ、これは…&hellip
last updateLast Updated : 2025-07-08
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28話 皇女の権威・ミリアの命令と王の困惑

「いや、ここでは初めてだし。俺は気にしてないよ」 俺は肩をすくめて笑ってみせたが、ミリアの怒りは収まりそうにない。「ユウヤ様が気にしていなくても――わたくしが、許せませんわ。不愉快です!」 その言葉に、兵士たちは顔を青ざめさせ、王様は額に手を当てて小さくため息をついた。 ――はぁ……面倒だなぁ。でも、俺のことを本気で心配してくれてるのは、やっぱり嬉しい。 ミリアの怒りの矛先が誰かに向かう前に、なんとか場をなだめないと……。「詰め所の方、少し借りてもいいかな? 王様」 俺は王様に向かってそう尋ねた。「は、はい。ご自由に……お使いください……」 凍りついたような表情の王様が、必死に声を絞り出す。  まあ……欲を出して俺を呼び出した結果がこれなんだから、自業自得ってことで我慢してもらおう。  俺も一応“王様の友人”という立場になったわけだし、ミリアのご機嫌取りくらいは頑張ってみるけどさ。 ご立腹中のミリアの腕をそっと取って詰め所の中へと連れていき、王様に声をかけた。「人払いをお願いします」「はい。かしこまりました……」 王様はすぐに兵士たちに命じた。  詰め所の中に残っていた数人の兵士たちは、ミリアの気配に気圧されたのか、慌てて外へと出ていき、扉を静かに閉めた。 静まり返った室内に、ミリアの声が響く。「ユウヤ様……?」 不思議そうに、けれどどこか期待を含んだ目で俺を見つめてくる。「……目を閉じてくれる?」 俺がそう言うと、ミリアは一瞬きょとんとしたあと、はっと何かに気づいたように頬を染め、そっと目を閉じた。「あっ……はいっ♡」 その声は、どこか甘く震えていた。  ミリアは嬉しそうに
last updateLast Updated : 2025-07-09
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29話 皇女の溺愛、ユウヤの困惑とミリアの覚悟

 国王に深々と頭を下げられて――正直、気まずい。  ミリアが先に歩いて行ったのを見計らって、俺はこっそりと王様に小声で話しかけた。「……あの、王様。そんなに簡単に、国民や兵士の前で平民に頭を下げちゃって大丈夫なんですか?」 俺の問いに、王様は少しだけ肩をすくめて、呆れたように答えた。「いえ……ユウヤ様のことを、平民だと思っている者などおりませんよ。  ミリア皇女殿下を宥め、名前で呼び、キスをし、頭を撫でる――そんなこと、普通の平民どころか、貴族や王族でも到底できません。  むしろ、皆が知っているのです。ユウヤ様は“特別な存在”だと」 ……いやいや、そんな大げさな。 褒めたり慰めたりする時に、頭を撫でるくらい普通じゃないの?  可愛いからつい撫でたくなるし、別に悪気があるわけでもないし。「え? 王族の人でも、頭を撫でたりできないの?」「はい。できませんね」 王様は真顔で即答した。「ミリア皇女殿下がまだ幼い頃、宮殿の廊下で遊んでいた際のことです。  ある国の王が、通りかかった際に“邪魔だ”と腕を軽く掴んで廊下の端に寄せたのですが……  その瞬間、ミリア殿下は大泣きされましてね」 王様はそこで一度、言葉を切った。「……それを聞いた皇帝陛下が激怒なされ、即座にその国に攻め込み、王を討ち取りました。  以来、誰もが恐れてミリア皇女殿下に触れることはなくなりました。  これは噂話ではなく、れっきとした実話です」 ……俺は、凍りついた。 は? 娘を泣かせただけで、国王の首が飛んだの?  いやいや、確かに腕を掴んで退けるのはどうかと思うけど……避けて通ればよかったんじゃないの?  ていうか俺、泣かせてはいないけど――キスとか、抱きしめたりとか、普通にしてるけど……? …&he
last updateLast Updated : 2025-07-10
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