そんな感じで数日間も移動をし、ついに王都の入り口へとたどり着いた。辺りは賑やかな声に包まれ、石畳の道を行き交う人々の姿が見える。やがて馬車は、堂々とした王城の前に着き、ゆっくりと止まった。長旅の終わりを告げるように、微かな振動が伝わってくる。「はぁ……長かった。」 俺は思わず息を吐いた。ここ数日間の馬車での移動は、快適な膝枕こそあったものの、検問や盗賊の襲撃といった不安要素も多く、常に気が抜けなかった。 ……とはいえ、心臓が一番跳ねたのは、ミリアのふとした仕草や言動だったかもしれない。 馬車が止まったからといって、それが目的地に着いた合図とは限らない。王都に入る時の検問や、ひどい時には盗賊の襲撃などで止められることもあると、窓の外を眺めていたミリアが教えてくれた。「ユウヤ様、王城の前に着きましたよ」 ミリアの声が、耳に心地よく響く。平民の服を着たメイドと護衛が馬車のドアを開けてくれて、ミリアの降りる手伝いをしてくれていた。その優雅な所作に、へぇ~俺もミリアと付き合うなら覚えないとだよなぁ……なんて、ぼんやり考えていた。 馬車から降りると、王城の兵士が恭しく応接室に案内をしてくれた。広々とした応接室で待っていると、すぐに声が掛かり、王の間へと案内をされた。「俺、初めてだから分からないんだけど……」 俺はミリアに小声で尋ねた。格式ばった場所に慣れていない俺は、どう振る舞えばいいか見当もつかない。「平民なのですから分からなくて当たり前ですよ」 ミリアはにこやかに答えた。その笑顔は、俺の不安を少しだけ和らげてくれる。「いや……王様だし。無礼だって言われて牢屋行きになるんじゃない?」 冗談めかして言ってみたが、心のどこかで本当にそうなる可能性も考えていた。前回の逮捕の件もあるし、貴族の常識は俺には理解できない部分が多い。「他の者と同じ様にしてれば良いと思いますよ」 ミリアはそう言って、俺の腕をそっと握りしめた。
Last Updated : 2025-07-01 Read more