ことはは翔真の手を払いのけ、歯切れよく言った。「触らないで」翔真の腕は2秒ほど宙に浮いた後、最終的にハンドルの上に置かれた。車内は再び静寂に包まれた。ことははポケットを確かめなかったわけじゃない。けれど、携帯はなかった。ことはの心はどんどん沈んでいった。翔真が簡単にことはを連れ去れたということは、十分な準備をしていたに違いない。今は逃げられないから、後で方法を考えよう。午前1時40分、翔真たちはサービスエリアに到着した。ことはは淡々と言った。「お手洗いに行きたい」「わかった、一緒に行こう」翔真はシートベルトを外し、ことはは無表情に両手を上げた。「外して」翔真は苦笑した。「外したら、君はきっと逃げるだろう」ことはは翔真をじっと見つめた。「サービスエリアには人がいっぱいいる。私を手錠で拘束してみなさいよ。『助けて!』って私が叫べば、そっちの方がよっぽど手っ取り早いんじゃない?」翔真は黙り込んだ。ことははイライラして翔真を急かした。「早く、もう我慢できない」翔真は最終的に折れ、ことはの手錠を外した。ことはが車から降りようとした時、翔真は突然ことはの手首を掴み、冷たい目で言った。「お手洗いの前で待ってる」「ご自由にどうぞ」ことはは翔真の手を振り払い、車を降りた。翔真はすぐにことはのそばに来て、手を握った。ことはは抵抗し、何度も振りほどこうとしたが、うまくいかなかった。翔真は相変わらず笑顔を浮かべていた。「俺たちは夫婦だよ、手を繋ぐくらいいいだろう」「うん、気持ち悪いけどね」「……」そう言われても、翔真は手を離さなかった。お手洗いの前まで来て、翔真はようやく名残惜しそうに手を離した。ことはは足早に中に入り、素早く視線を走らせると、高い位置にある窓に目を留めた。ことはは諦めのため息をついた。またこんなに高い所にあるとは。最近、ことははこの手の窓と何か縁ができたみたいだ。ことはは誓った。絶対に三度目はないと。幸いお手洗いには椅子があり、この時間帯は人も少なかった。ことはは素早く椅子の上に立ち、窓をこじ開けた。一度経験があるせいか、今回はスムーズに登れた。頭を窓の外に突き出し、下を見下ろすと……大きな黒い犬が2匹いる……ちくしょう!誰だ!こんなサービスエリアの裏で黒い
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