カエンに手を繋がれて、花畑を歩いた。今までで一番穏やかな風が吹いている。鼻歌でも歌いたくなるような心地よさだ。 「拓海、本当にもう、海に飛びこんだりしないよな?」「やらないって。現実世界には……未練がないとは言わないけれど、帰ったって消えるだけなんだろう? それよりも時間の許す限り、カエンと一緒に楽しいこととか、気持ちいいこととか、いろいろしたいんだ」 カエンは感極まったようで、またしても僕をギュギュッと抱きしめた。踵が宙に浮く。 「ああもう、拓海……! かわいすぎる!!」「力を緩めて、ちょっと痛いよ」「あ、ごめん!」 カエンはパッと僕を解放する。勢いがよすぎて花畑に尻餅をついた。 「あいたっ」「っいて!」「……なんでカエンまで痛がってるの」「ああ、だってこの花畑は俺
Terakhir Diperbarui : 2025-07-07 Baca selengkapnya