パチリと目を瞬く。あれ、ここは? 見渡せば、一面の青い空。空に溶けるような青の花が、丘の向こう側までずっと広がっていて、その花畑は足元まで繋がっていた。 足元の可憐な花を見ようとした時、誰かが寝転んでいるのに気づいた。「え? わっ」 びっくりして後ずさろうとして、バランスを崩す。尻餅をついてしまい、花がくしゃっと尻の下で潰れる感触がした。「ふわぁ、いてて……ああ、起きたんだな。おはよう」 足元に寝転んでいた誰かが起き上がる。彼は目の覚めるような深海色の瞳に、花と同じ空色の髪をしていた。 髪、染めたのかな? とてもナチュラルだし全然髪も痛んでいないけれど。キューティクルがつやっつやだ。 でもそれ以上に綺麗なのが顔。あまりに現実味がないくらい綺麗すぎて、CGかホログラム的な何かかと一瞬疑ったくらいだ。 睫毛は風にそよぎそうなほど長いし、パッチリ二重の目は完璧な左右対称で、けれどその目は親しみを込めて僕を見つめていた。生きた人間で間違いなさそうだ。 ここにスケッチブックがあったら絵のモデルにしたいほど、足が長くてスタイルも整っている。 青年はさっさと立ち上がると、尻餅をついたままの僕の手をとり引き上げた。温度の通った腕は力強い。あっさりと立ち上がることができた。 立ち上がった彼は僕よりも背が高く、彼の顎が僕の目線にくる。なぜかとくんと跳ねた心臓に内心戸惑いながらも、彼を見上げた。「あ、ありがとう」 彼は人好きのする笑みをニコッと浮かべ、太陽の位置を確認した。「だいぶ寝過ごしちまったな。そろそろ帰ろう」「帰るってどこに? というか、ここはどこで、君は誰で、僕は……」 あれ? そもそも僕は誰なんだ? なにも思い出せない。彼は僕を見て、起きたんだなって言ったけれど、僕は寝ていた? この花畑で寝ていて、全て忘れてしまったのか? 愕然と立ち尽くしていると、彼は気まずそうに、けれどどこかホッとしたように笑った。ふわふわの水色髪がそよ風になびいている。「あー……もう少ししたらここは風が強く吹いて寒くなるから、とにかく帰ろう。ついてきて、こっちだ」 わけがわからないながらも、彼に手を引かれて緩やかな丘を下る。足元をよく見ると小道があって、そこだけ花は生えておらず土がむきだしだ。 僕はちゃんと靴を履いていた。くったりとした革靴は履き心地がよ
Last Updated : 2025-07-01 Read more