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Lahat ng Kabanata ng ガラクタはキラキラ: Kabanata 51 - Kabanata 60

64 Kabanata

Ⅳ-18

「あのね。それも、こっちのも、全部なんだけど」 とても大切なことのように蒼波が言葉を区切りながら話すので、燿は瓶を並べながらも聞き漏らすまいとした。蒼波が指差した木の実にもビー玉にも、なにかのオマケのマスコットにも、ゴミ袋全体にも視線を走らせる。「燿ちゃんみたいだなって思ったものを集めてたんだよ」 燿はもう一度ゴミ袋と自分たちの周りに散らかる蒼波の宝物を見回した。これらが飾られていたとき、燿は確かにきれいでかわいいと思ったことがあったが、己のようだと感じたことはない。「全部、きれいでかわいいでしょ? 燿ちゃんみたい」「な、なに言ってんだよ」  えへへと笑う蒼波を前に、燿は挙動不審になっていた。手にした瓶を床に置いては手に取ってを繰り返す。そんなことを言われたら、次からどうやって蒼波の宝探しに協力すればいいのか。長い時間を費やして集められた蒼波の宝物は、すべて燿に似たもので、燿を好きだったから集めていたと言われているのだ。 戸惑いを隠せない燿へと畳みかけるかのように蒼波が「あ」と声を上げた。「今度はなんだよ!」「本当は昨日したかったんだけど、余裕がなかったから……今してもいい?」 燿の返答を待つことなく、蒼波は段ボール箱から小さなケースを取り出す。中に入っていたのは美しい銀のリボンだった。蒼波は燿の目の前に膝をつくと、燿の左手をそっと取って薬指にリボンを結ぶ。「蒼波、これ」「もしかしたら、もう一回結べるかもって思って」「いつから?」「いつからだろう」 こてんと首を傾げる蒼波は、本当に一体いつからこんなに燿を想っていてくれたのだろうか。記憶をたどろうとしてもやはり蒼波の笑顔ばかりが浮かんできてうまくいかない。同じだけの年月をかけたものは返せないけれど、燿はこれからの蒼波になにかしたいと強く思った。「お前、したいこととか行きたいとことか、ねぇの?」 我ながら安直だと思わなかったわけではないが、燿はまず蒼波の望むことを叶えるべく尋ねる。蒼波は燿の左手を握ったまましばしうなっていたが、ややして思いついたというように声を弾ませた。「
last updateHuling Na-update : 2025-10-26
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ワダツミはドキドキ・Ⅰ

 今ではもうすっかり聞きなれたアラームの音が遠くで鳴っている。燿のスマートフォンのものだ。蒼波は小さな子供がいやいやをするように頭を振って布団に潜り込もうとした。すると、抱えていた温もりが腕から抜け出してしまう。「蒼波、起きろ」「んー」「蒼波!」 燿は蒼波がくるまっている布団ごと容赦なくたたいてきた。昨日遅くまで起きていたのだから、土曜日くらいゆっくりと寝かせてほしい。夜更かしした上、蒼波よりも体に負担のかかる行為をしていたとは思えない燿の寝起きのよさに半ば呆れながら、蒼波は開いていない目をごしごしとこすった。「いま、なんじ?」「五時」「……おやふみ」「おい! 海行くっつったのお前だろ!?」 そのひと言に蒼波はがばりと半身を起こす。燿がぷっと噴き出したのが聞こえたので、今朝も自分のクセのある髪の毛は跳ねているのだろうと頭に手を持っていった。「燿ちゃん、俺の寝ぐせ、直りそう?」「その前に目を開けろ」 笑いながら蒼波の髪の毛を柔らかくすいてくれる燿の手は、いつもと変わらず優しい。蒼波はうなりながらなんとかまぶたを持ち上げた。蒼波の紅茶色の瞳に笑顔の燿が映る。「早く顔洗ってメシにしよーぜ」「うん」 二人は蒼波の部屋を出て洗面所に向かった。ひじでお互いをつつき合いながら顔を洗い、蒼波の茶色くふわふわとした柔らかい髪についた寝ぐせを大騒ぎして直す。そうしてあらかじめ室橋の家から持ってきていたサンドイッチを食べにダイニングルームへと急いだ。「燿ちゃん、コーヒーの方がいい?」「お前と一緒で」「じゃあ紅茶でもいい?」「ん」 冷蔵庫から取り出したサンドイッチをテーブルに並べる燿を振り返りながら、蒼波は新婚家庭のようだなと思う。付き合いそのものは長いものの、恋人としてのそれは最近始まったばかりだから、新婚みたいなものなのかもしれない。口に出すと燿に怒られてしまうので、言ったことはないのだけれど。「いただきまーす」「いただきます」 今日は以前蒼波が行きたいと言った海に二人で出かける予
last updateHuling Na-update : 2025-10-29
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Ⅰ-2

 食事を済ませて着替えると、既に用意しておいた荷物を手に家を出る。丁度日の出を迎えたのか朝焼けが美しく、蒼波は思わず声を上げた。 「きれい。見て、燿ちゃん」 「お前、もう一枚羽織らなくて大丈夫か?」 「大丈夫。それより空、見てよ」 「ああ、朝焼けか」  燿は毎朝のようにランニングをするので、朝焼けを見るのは珍しいことではないのだろう。デニムパンツに長袖のTシャツ、パーカーを着ただけの蒼波の服装を心配していた。それでも今日一緒に朝焼けを見たことが嬉しくて、蒼波は空を指差す。駅までの道を歩きながら、高い山の上では空は濃い色をしているのだとか、朝焼けと夕焼けのどちらが好きかとか、二人は空について話をした。  やがて駅に着いた燿と蒼波は、通学のときとは逆の方面へ向かう電車へと乗り込む。土曜の早朝ということもあって、電車にはほとんど人は乗っておらず、ゆったりと座ることができた。  燿はバックパックを網棚にのせると、蒼波の持っていたボストンバッグを受け取ろうと手を伸ばしてくる。 「いいよいいよ。燿ちゃん、小さいんだし」 「お前がでかいんだよ」  脇腹をぽすんと殴られた蒼波は、あははとごまかすように笑った。燿は身長の話になるとすぐ怒り出す。それが蒼波には不思議だった。百八十を少し超えた身長の自分より十センチほど背の低い燿は、とてもかわいらしいのにどうしてこんなに嫌がるのだろうか。前に一度尋ねたときには「お前には一生解らねぇ!」と怒鳴られてしまった。 「小さいの、かわいいのに」 「だから、俺は別に、小さいわけじゃ、ねーし」  ぽつぽつと区切りながら言葉を返す燿の、短めの黒髪から覗く耳が真っ赤になっている。きっとかわいいと言ったので照れているに違いない。両想いになってからというもの、燿はこうしてよく赤くなる。  蒼波にとっては長い長い間抱えてきた初恋が叶ったのだから、壊さないように大切に宝箱にしまっておきたい気持ちがある。今の燿の照れた様子も、昨夜の乱れた姿も、すべて大事に取っておきたい。そう思うと蒼波まで赤面してしまいそうだった。 「こっちの方に来るの久々だな」  二人の間に流れる淡い色をまとった雰囲気を断ち切るように
last updateHuling Na-update : 2025-10-31
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Ⅰ-3

 タタン、タタンと音を立てて走る電車の、小さな振動が心地よかったのだろう。蒼波の肩に燿の頭がこてんと寄せられた。「燿ちゃん? もう、寝たらダメって自分で言ってたのに」 言葉とはうらはらに、蒼波は燿を自分にもたれかけさせたままにする。昨夜「明日は出かけるからいやだ」と言っていた燿を押し切る形で抱いてしまったので、疲れさせている自覚はあった。自分がしっかり起きてさえいればよい話だ。蒼波はいつ燿が起きても気づけるように、イヤフォンを片耳だけにはめて、スマートフォンでお気に入りの動画を見ることにした。短い動画を二、三本見たところで、燿が「んん」とむずがるような声を出す。「起きた?」「あれ? 寝ちまってたか。悪い」「まだ寝ててもいいよ。燿ちゃん疲れてるでしょ?」 動画を一時停止させてそう声をかけると、なにを思い出したのか燿の顔がぼんっと赤く染まった。「だから! 俺はいやだって……!」「燿ちゃん、声大きいよ」 人はまばらとは言えいないわけではないので、蒼波は口の前に人差し指を立てて「しーっ」っと合図を送る。燿がぐっと言葉に詰まっている姿すらかわいいと思うのだから我ながら重症だ。 燿はよくも悪くも言葉がまっすぐだけれど、それが出てこなくなると代わりに手が出る。本気で殴られたことはないものの、やはり今回もぽかすかと二の腕をたたかれた。 そうこうしている内に、海が近くなってきたようだ。車窓からも海が見えるようになってきたので、燿も蒼波も感嘆の声を漏らす。海を見たのは本当に久しぶりのことだった。「蒼波、シーグラス見つかるといいな」「あのね。俺、青いのがほしいんだ」 シーグラスは瓶などの欠片でできているため、色も形も様々だ。蒼波は晴天の中を全力で走る燿のような青いシーグラスがほしかった。エメラルドグリーンや白のシーグラスも美しいとは思うけれど、蒼波の中での燿のイメージは青や水色といった空の色がどうしても強い。 そう思って希望を伝えると、燿は驚いたような表情を浮かべた。「どうしたの?」「いや、なんでもねぇ」「でも」「あ、ほら。次、降
last updateHuling Na-update : 2025-11-02
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Ⅰ-4

*** 天気がよいので海岸には散歩をしている人などがちらほらと見受けられる。ただ波が穏やかで凪いでいるためサーフィンをしている人は少なく、この季節ともなれば当然泳いでいる人はいない。  燿と蒼波はしばらく海を見ていたが、やがて波打ち際を歩くことにした。早速シーグラスの捜索に取りかかろうという魂胆だ。そうすぐに見つかるものではないと解っていたので、燿も蒼波も足元に視線を落としたまま、のんびりと話をする。 「そういや辻山がまた変なこと言ってたぜ」 「なんて?」  クラスメイトの辻山は、まだ付き合う前の燿と蒼波の距離感がおかしいと指摘してきた人物だ。その辻山が燿になにかを言ったらしい。蒼波は話の続きをうながした。 「『花が見える』とか『ピンクのオーラ』がどうとか」 「あー……」 「あいつ変わってるよな」  蒼波はあいまいに笑うことしかできない。二人の関係が変わったことを、辻山はなんとなく察知しているのかもしれない。気をつけなくてはならないが、燿に自覚がないので難しい気がする。現に燿は言われたことをあまり理解できていないようだ。 「春でもねぇのに花って咲くのか?」 「それはたくさんあるよ」  燿が言っているのは恐らく植物の方だろう。蒼波が園芸委員をしているので質問してきたのだと予想して、冬にも咲くクリスマスローズやシクラメン、ハボタンなどの名前を挙げてみる。 「ハボタンは知ってる。あれ花なのか」 「燿ちゃんずっとキャベツって呼んでるよね」 「キャベツだろ。あれは……あ! あったぞ、蒼波!」  突然大きな声を出して、燿は海へ豪快に手を突っ込んだ。腕まくりをしていなかったものだから、袖口はびしょびしょだ。しかし、蒼波には燿がそれほど一生懸命になってくれたことの方が嬉しかった。 「こりゃ白だ。残念。どうする?」  燿は手のひらに白いシーグラスをのせてこちらへと差し出す。蒼波はそれを受け取って丁寧にハンドタオルで水気を拭きとった。 「これもいる。燿ちゃんが見つけてくれたものだから」 「そ、そうかよ。じゃあ次。青いやつだよな?」
last updateHuling Na-update : 2025-11-05
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Ⅰ-5

「午後には一度ホテルにチェックインする?」 「もう夜でよくねーか?」  燿の口元に米粒がついている。いつもそういうことになるのは自分の方なので、珍しいなと思いつつ手を伸ばした。燿が大げさに身をよじったので蒼波はきょとんとしてしまう。 「なに?」 「ごはん、ついてるから」 「あ、ああ。そう」  ぺたぺたと自分の口元に手を当てて米粒を取り除こうとする燿を見て、蒼波はここのところずっと気になっていたことを思い出した。燿は最近蒼波が触れるのをいやがる。いわゆるそういう雰囲気になったときは受け入れてくれるけれど、それ以外で蒼波が不用意に触れようものなら飛び上がらんばかりの反応をするのだ。蒼波はそれが理解できず、少し淋しいと思っていた。  セックスについても同様の悩みがある。触れれば「いや」「だめ」「待て」と制止の声しか上がらない。達しはするので燿が感じていないわけではないのは解る。だけど心まで満たせているのかと問われたら、蒼波にはまったく自信がなかった。 「蒼波?」  名を呼ばれてはっとなる。このことは今日は考えないようにと思っていたのに、つい気を取られてしまった。 「どうした?」 「なんでもないよ。シーグラス見つかるかなって」 「どんだけほしいんだよ」  笑い出した燿につられるように蒼波も口元に笑みを浮かべる。今度、話をしよう。今まで燿が話をしようと言ってくれて解決しなかったことはない。蒼波はそう自分に言い聞かせて、弁当のはしに盛られていたポテトサラダを口にした。  午後の日差しは穏やかだったが遮るものがない海岸で探し物をしている燿と蒼波には少し暑く感じられてきた。シーグラスはもうひとつ見つかったが、こちらは茶色でとても小さく、蒼波よりも燿の方が落胆していた。茶色のシーグラスを手にした蒼波は、これはこれでコーラのようできれいだなと思ったのだが燿はそうではなかったらしい。  自分よりも必死になってシーグラスを探している燿の姿に嬉しくなると同時に違和感を覚えた。 「燿ちゃん、シーグラスがなかったら、それはそれでいいんだよ」 「そうはいかねぇ。こんなとこまで来たんだし」 「もう白いのも茶色いのも見
last updateHuling Na-update : 2025-11-07
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Ⅰ-6

「これなあに?」「やる。シーグラス見つかりそうもねぇし」 小さな箱には燿がよく行くゲームセンターの名前がプリントしてあった。薄ぼんやりとした夕暮れの浜辺では、これを開けても中身を確認するのは難しい。蒼波は一番近い外灯の下まで移動して箱を開けることにした。「燿ちゃん! 開けるからこっち来てよ!」 燿が波打ち際から動こうとしないので、蒼波は一度引き返し燿の腕をつかんで外灯の下へと向かう。一緒に箱を開けるのがよほどいやなのか、燿の足取りは重かった。箱を開けるのには両手を使わなければならないが、燿を離しても逃げないだろうか。そんな疑問にとらわれていると、流石に観念したのか燿がぶっきらぼうに言う。「逃げねーから、開ければ?」「うん! ありがとう」 ゲームセンターの景品だとは解ったけれど、こんなに小さなものは初めてだった。いつも燿はかわいらしいマスコットやきれいなキーホルダーを持ってきてくれるけれど、これはなんだろう。蒼波の胸は高鳴った。 箱の中にはさらに黒っぽいケースがあったので、蒼波は丁寧にそれを開く。外灯に照らされて小さく光るものが箱の中央に見えた。形はいびつだけれど、これは天然石のたぐいだ。「燿ちゃん、これ」 驚きすぎて言葉が出てこなくなった蒼波に対して、燿は後頭部をがしがしと掻きながら早口でまくし立てた。「クレーンゲームでたまたま見つけてちょっとやってみたら、すぐ獲れたから。それなら絶対きれいだって俺も思ったし、もしもシーグラスが見つからなかったらやろうと思って。たまたま! たまたまだからな!」 前にも同じようなこと言って、燿は蒼波のために一日中走り回って宝物を集めてきてくれた。負けず嫌いの燿のことだから、きっとこれが獲れるまで小遣いをつぎ込んだに違いない。蒼波がシーグラスを見つけられずに落ち込まないようにと考えてくれたのだろう。「あれ? この石の色……」 暗くて見えにくかったが、石は水色をしている気がする。ケースをよく見ると『アクアマリン』と印刷された小さなテープが貼りつけてあるので間違いない。「た、たまたまだって言ってるだろ!」「嬉しい」
last updateHuling Na-update : 2025-11-09
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ワダツミはドキドキ・Ⅱ

 旅行の計画を立てた段階では、もう少し高級そうなレストランでの食事も視野に入れていた。しかし食べ盛りの高校生の二人旅ということもあり、質より量を取った結果がファミリーレストランだ。 「あー食った食った!」 「美味しかったね。もうなにも入らないや」  燿と蒼波は駅まで戻りコインロッカーに立ち寄って荷物を取り出し、これまたリーズナブルだからという理由で選んだビジネスホテルへと向かった。料金の面を考えてツインルームを選択したのも燿である。しかしツインルームに宿泊することがなにを意味するのか、燿がどこまで意識的に行っているのか、蒼波には解りかねた。同じ部屋に泊まったりすれば、蒼波はそれだけであおられてしまう。  そこまで考えて、昼間海にいたときに脳裏によぎったことを思い出してしまい、蒼波はまた淋しい気持ちになった。  チェックインの手続きをしている燿の後ろ姿を見つめながら、どうして蒼波が触れることをそんなにいやがるのかと考える。蒼波と燿の関係は、ほとんど蒼波の勢いに任せて始まったようなものだ。実は燿の方はそんなに気持ちがよくないのかもしれない。本来受け入れるべきではないところに受け入れさせているのだし。  蒼波はどうにかしてこの問題をはっきりさせたいと思った。話し合いをすることはもちろんだが、燿は素直に自分の思っていることを打ち明けてくれないところがある。蒼波との関係においてはことさらそれが目立つように感じられた。長い間幼馴染みという枠に収まっており、蒼波の面倒を見るばかりだった燿は、蒼波には滅多に弱ったところを見せない。 「どうしたらいいんだろう」 「なにを?」 「わ! なんでもないよ。独り言」  いつの間にか目の前に来ていた燿に声をかけられて、蒼波は声を上ずらせた。燿はいぶかしげに蒼波を見上げてきたが、バックパックを背負い直すとルームキーをひらひらさせながらエレベーターの方へ歩いていく。 「行くぞ」 「うん」  二人はコンビニエンスストアで飲み物や夜食を買い込んできていたので、部屋に着くとまず冷蔵庫にそれらを入れた。それからバスルームを覗いてみたり、窓の外を眺めたり、アメニティをチェックしたりとひと通り部屋を堪能する。 「安い
last updateHuling Na-update : 2025-11-12
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Ⅱ-2

「……燿ちゃん、無防備すぎ」  このホテルのナイトウエアは男女兼用のワンピースタイプだ。つまり一般的なパジャマとは異なりズボンがついていない。蒼波は頭を抱える思いだった。それでもそもそも蒼波はその気ではいるため、自分のベッドの枕の下にローションとコンドームを忍ばせてしまう。  いやがられているのは解っていても、こんなシチュエーションでは我慢などできない。ただ、今夜はちゃんとなにがそんなにいやなのかを燿に訊こうとは思っていた。  しばらくするとシャワーを浴び終えた燿が戻ってくる。濡れた黒髪をタオルで拭きながら蒼波にも入るようにとバスルームを指差した。 「泳いでなくても潮風のせいでベタベタだったぜ」 「ずっと海にいたから仕方ないよね」  ワンピースタイプのナイトウエアを着た燿はとてもかわいらしい。蒼波は身長の関係で恐らくサイズが合わないだろうと思ってスウェットを持ってきていたので、それを持ってバスルームに向かった。  今日は念願の海に来られただけでなく、燿と一緒に一泊することができて蒼波は満足している。シーグラスは見つからなかったけれど、その代わり燿からきれいな石をプレゼントしてもらえた。あとは蒼波の疑問が解消さえすれば言うことはない。  髪と体を洗って、少しの間気持ちを落ち着かせようとシャワーに打たれる。 「よし。ちゃんと燿ちゃんに訊こう」  両の頬をぱしんと叩き気合を入れて、蒼波はバスルームから燿のいる部屋へ行った。  そこにはベッドにうつ伏せて足をぱたぱたとさせながらテレビを見ている燿がいる。ナイトウエアの裾が膝の上までめくれていて、蒼波はたまらずうなった。 「おー、遅かったな」 「燿ちゃん、わざと?」 「なにが?」 「こういうの、わざとしてるんでしょ?」  燿のそばまで行った蒼波はベッドに腰かけると、むき出しになっている燿のふくらはぎをなでる。とたんに「うひゃあ」と色気のない声を上げて、燿が逃げようとした。蒼波はとっさに燿の足首をつかんで阻止する。 「は、放せ」 「いや? 燿ちゃんがいやならしない」 「……蒼波?」  う
last updateHuling Na-update : 2025-11-14
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Ⅱ-3

「今のはびっくりしただけだぞ?」 「でも燿ちゃん、俺が触るのいやがるし」 「それは」 「えっちのときだって『いや』とか『だめ』ばっかりで、俺……」  もう少し順序立てて話すつもりだったのに、結局蒼波は思いつくままを言葉にしてしまった。燿が大きくため息を吐き出して起き上がる。それすら蒼波は怖かった。 「あのなあ、蒼波」 「うん?」  燿の手が伸びてきて、蒼波のまだ湿った色の濃い茶色の髪の毛をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。 「幼馴染みとそんな簡単に、さらっとエロいことできるわけねーだろ!?」 「え? それでなんでいやがるの?」  蒼波の言葉を聞いた燿ががっくりとうなだれた。 「燿ちゃん?」 「前も言ったけど! 恥ずかしいんだよ!」 「それだと『いや』とか『だめ』になるの?」 「あーもう! それは気持ちよすぎるから……って、なに言わせんだ!」  白状した燿の姿を見て、蒼波は安堵のあまり脱力してしまう。体中の力が抜けたついでに涙腺も緩んでしまったようだ。視界がぼやけていくのを止められなかった。 「え、ちょっ、なに泣いてんだよ」 「だって、燿ちゃん本当にいやなのかと思ってたから」 「本当にいやだったら最後までするか、バカ」 「よかった」  慌てふためいてなだめようとしてくる燿を、ぎゅっと抱きしめる。燿が伸び上がるようにして蒼波の頭をなでてくれるのが心地よかった。 「今日は今までで一番気持ちよくするね」 「は? お前、まさか」  泣きながら笑う蒼波を見た燿が距離を取ろうとじたばたともがき始める。そんな燿をしっかりと抱いたまま、蒼波はベッドへ転がった。
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