***「ん、ん……っ」 甘さを含んだ燿の声が合わせた唇の隙間からこぼれ落ちる。吐息混じりのそれは簡単に蒼波に火をつけた。唇をついばむようにしたり、こじ開けて舌を差し入れたりしながら、蒼波はキスを続ける。 最初にキスをしたときから、燿は上あごの辺りを舌先でくすぐられるのにとても弱いと解っていた。今夜はわざと上あごには触れずに舌を絡ませて遊ぶ。それが気に入らなかったのか、燿が蒼波の胸をどんっとたたいて口を離した。 「どうしたの?」 「するならちゃんとしろ」 「ちゃんとって、どこをどうする?」 蒼波の言葉を受けて、燿がぽかんと口を開ける。蒼波は燿のしてほしいことだけをしたいと考えた末に、全部言ってもらうことにした。だが、それが一歩間違うとプレイの一環になってしまうことには気づかないままだ。燿は瞬間湯沸かし器にでもなったかのように怒鳴った。 「そういうことは、いちいち言わなくていいだろ!」 「言ってくれなきゃ、いやなことしちゃうかもしれない」 「大丈夫だから、好きなようにしろよ!」 「絶対やだ。言って」 燿の反論ごと食べるようにくちづける。すると、燿は器用に蒼波の舌を自分の口へ招き入れて、上あごの辺りに押しつけるようにした。言葉にはしてもらえなかったが、その辺りを舐めろということだとは蒼波にも解る。舌先で軽くつついたり、なぞったりすると、燿がしがみついてきた。 「んん、んっ」 「燿ちゃん、次は?」 「お前、最悪」 ナイトウエアの胸元のボタンに片手を、もう片方の手を裾の方へと持っていった蒼波に、燿が毒づく。 「最悪じゃないよ。最高にするから、どっち?」 「お前の好きな方」 燿の答えはまた明確のものではなかった。蒼波は仕方なくいつも通りの手順でボタンを外す作業に取りかかろうとしたが、ふと思いとどまる。いつも通りではない方がよいのかもしれないと考え、ナイトウエアの裾に手を突っ込んだ。 「う、わっ。あ!」 「声大きいよ、燿ちゃん」 ビジネスホテルの壁はそれほど厚くはない。大騒ぎしてしまうとなにをして
Huling Na-update : 2025-11-19 Magbasa pa